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胃カメラで『胃が荒れてる』と言われたあなたへ|原因別・胃炎の種類と治療法

[2025.06.02]

はじめに

胃カメラの検査で「胃が荒れていますね」と言われたことはありませんか?
これは胃粘膜に炎症が起きている状態、すなわち「胃炎」である可能性があります。
この記事では、胃炎の種類や原因、治療法、セルフケア、再発予防まで、専門的かつわかりやすく解説していきます。

胃カメラで「胃が荒れています」と言われたら|その意味とリスクとは?

胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を受けた際に「胃が荒れている」と言われた方へ——これは単なる一時的な不調ではないかもしれません。では、「胃が荒れている」とは具体的にどのような状態を指すのでしょうか?

「胃が荒れている」の医学的な意味

医師が『胃が荒れている』と説明する場合、以下のような内視鏡所見がみられることが多いです:

所見の種類 説明
胃粘膜の発赤 胃の表面が赤く炎症を起こしている状態
びらん 胃の粘膜がただれている軽度の損傷
点状出血 粘膜に小さな出血点が見られる状態
粘液の過剰分泌 胃の自衛反応として粘液が増えている
粘膜の萎縮 長期炎症による粘膜の薄化(慢性胃炎の兆候)

これらの症状は総じて「胃炎」と分類され、急性、慢性、びらん性、萎縮性など、さまざまなタイプがあります。

自覚症状がなくても安心は禁物

自覚症状がない場合でも、胃の荒れを放置することで以下のようなリスクが高まります:

  • 胃潰瘍・十二指腸潰瘍

  • 萎縮性胃炎 → 胃がんリスクの上昇

  • ピロリ菌感染による持続的な炎症

特にピロリ菌が検出された場合は、ガイドラインに基づく除菌治療が推奨されます(日本ヘリコバクター学会ガイドライン 2023)。

胃の荒れは“結果”であり、その“原因”を突き止めることが今後の健康に直結します。

 

胃炎にはどんな種類がある?|急性・慢性・薬剤性などの違いを解説

「胃が荒れている」と言われたとき、その正体は多くの場合「胃炎」です。しかし、胃炎にはいくつかのタイプがあり、原因や治療法も異なります。ここでは、主な胃炎の種類とそれぞれの特徴を解説します。

1. 急性胃炎:突然あらわれる強い炎症

特徴 内容
発症の速さ 数時間〜数日で発症
主な原因 ストレス、飲酒、暴飲暴食、薬剤(NSAIDs)、細菌感染など
主な症状 みぞおちの痛み、吐き気、食欲不振、時に嘔吐や出血
治療法 原因の除去、胃薬(制酸薬や粘膜保護薬)などによる対症療法

ポイント: 短期間で回復することが多いですが、原因が継続すれば慢性化する可能性があります。

2. 慢性胃炎:長期的に続く胃粘膜のダメージ

特徴 内容
発症の仕方 数ヶ月〜数年かけて進行
主な原因 ピロリ菌感染、長期服用薬(NSAIDs、アスピリンなど)、加齢
症状 軽度の胃もたれ、食欲低下、無症状のことも多い
治療法 ピロリ菌除菌療法、胃粘膜保護剤の服用、定期検査による経過観察

注意点: 慢性胃炎が進行すると「萎縮性胃炎」になり、胃がんのリスクが高くなります。

3. その他の胃炎タイプ

胃炎の種類 特徴と原因
逆流性胃炎 胃酸が食道から逆流して胃上部に炎症を起こす。胸焼けを伴うことが多い。
薬剤性胃炎 解熱鎮痛薬(NSAIDs)や抗生物質などが原因。粘膜保護剤の併用が必要。
ストレス性胃炎 精神的・身体的ストレスが原因。重症化すると出血や潰瘍に発展することも。
アルコール性胃炎 過度な飲酒が胃粘膜を刺激。飲酒習慣の見直しが治療の第一歩。

胃炎のタイプによって治療法も異なる

胃炎は“症状”ではなく“状態”です。原因によって急性か慢性か、薬剤や感染によるものかが分かれ、治療方針も異なります。まずは胃カメラやピロリ菌検査などで、正確な診断を受けることが重要です。

 

なぜ胃が荒れるのか?|主な原因とリスク要因を徹底解説

胃カメラで「胃が荒れている」と言われたとき、まず確認すべきは原因です。胃粘膜はデリケートで、さまざまな要因によって簡単に炎症を起こします。以下では、代表的な原因とその背景を解説します。

1. ピロリ菌感染:日本人に多い最大の胃炎リスク

ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)は、胃に生息する細菌で、長年にわたり慢性的な炎症を引き起こします。特に40代以降の日本人では感染率が高く、慢性胃炎、胃潰瘍、胃がんのリスク因子として知られています。

内容 詳細
感染経路 口からの経口感染(幼少期の家庭内感染が主)
診断方法 呼気テスト、血液検査、便検査、胃粘膜生検など
治療法 抗生剤+胃酸抑制剤による除菌療法(保険適用)

日本ヘリコバクター学会ガイドライン(2023年版)では、ピロリ菌陽性者に除菌治療を強く推奨しています。

2. 生活習慣の乱れ:現代人に多い胃への負担

日常生活の中にも、胃に悪影響を与える習慣が数多く存在します。

習慣・要因 胃への影響
暴飲暴食 胃酸分泌の増加、粘膜の刺激
アルコール 粘膜を直接刺激し炎症を引き起こす
喫煙 血流悪化による粘膜の修復能力低下
睡眠不足・ストレス 自律神経の乱れ→胃酸分泌異常
不規則な食事時間 胃の働きを混乱させる原因に

生活習慣の見直しは、胃炎の再発防止にも効果的です。

3. 薬の副作用:市販薬でも注意が必要

胃の粘膜は、薬の影響にも敏感です。特に以下の薬剤には注意が必要です。

薬の種類 胃への影響
NSAIDs(解熱鎮痛薬) 胃の粘膜を守るプロスタグランジンの働きを阻害
アスピリン 胃酸と相互作用してびらん・潰瘍の原因に
一部の抗生物質 胃腸のバランスを崩し、吐き気や胃痛を招くことも

医師から処方される際には胃薬との併用を相談するのが安心です。

原因に合った対処が胃の健康を守るカギ

胃炎の原因は一つではありません。ピロリ菌・薬・ストレスなど、複数の要因が重なることもあります。原因を見極め、生活習慣の見直しと医療的ケアの両輪で対処していくことが大切です。

 

胃炎の治療とセルフケア|医療と生活改善の両輪で胃を守る

「胃が荒れている」と診断された場合、原因に応じた治療が必要です。同時に、再発防止や日常的な胃のケアも重要なポイントです。この章では、医療機関での治療と自宅でできるセルフケアの両方について解説します。

1. 医療機関で行う治療法

胃炎のタイプや原因により、以下のような治療が行われます。

治療法 内容
ピロリ菌除菌療法 抗生物質+プロトンポンプ阻害薬の組み合わせ(7日間の服薬)
成功率は約80〜90%(再検査が必要)
制酸薬の服用 胃酸の分泌を抑えることで、びらんや炎症の悪化を防ぐ
粘膜保護薬の使用 アルギン酸系・スクラルファートなどで胃粘膜を保護
生活指導 食事・喫煙・飲酒・ストレス管理の指導を受けることも多い

特にピロリ菌感染がある場合、除菌療法を行うことで胃がんリスクを有意に低下させることが報告されています(Uemura et al., 2001)。

2. セルフケアでできる胃の守り方

胃炎の症状が軽度でも、日常的なケアを怠ると再発のリスクがあります。以下の点を意識しましょう。

セルフケア習慣 効果
規則正しい食事 胃酸分泌のリズムを整える
暴飲暴食の回避 胃への物理的負担を減らす
刺激物の制限 香辛料・コーヒー・アルコールなどの摂取を控える
ストレス管理 自律神経の安定 → 胃の血流・働きを正常化
適切な睡眠 胃の修復時間を確保する

3. 市販薬は使っていいの?

一時的な胃の不快感に対して、市販の胃薬(制酸薬や粘膜保護薬)を使用することは可能です。ただし、

  • 症状が続く場合

  • 便に黒色(出血のサイン)が見られる

  • 食欲不振や体重減少がある

などの症状がある場合は、市販薬での自己判断は避け、必ず医師の診断を受けましょう

医師の診断+生活改善で再発予防を

胃炎の治療は「一度治れば終わり」ではありません。生活習慣を改善し、胃を守る行動を継続することが、再発を防ぎ、将来的なリスクを軽減するカギになります。

 

胃炎の再発を防ぐには?|胃を守るために知っておきたい6つのポイント

胃が荒れている、つまり胃炎の状態と診断された後は、再発予防が重要です。一時的に症状が改善しても、原因を取り除かなければ何度も繰り返す可能性があります。ここでは、再発を防ぐために日常生活で気をつけたいポイントを整理します。

1. ピロリ菌の再検査と除菌確認

ピロリ菌を除菌した後は、必ず再検査(尿素呼気テストなど)で除菌成功を確認することが必要です。

  • 除菌後でも再感染することは極めて稀ですが、失敗しているケースもあり得ます。

  • 除菌成功で、萎縮性胃炎や胃がんのリスクが大幅に低下します。

2. 年1回の胃カメラ検査を習慣に

慢性胃炎や萎縮性胃炎と診断された方は、**定期的な内視鏡検査(胃カメラ)**をおすすめします。

状態 推奨される検査頻度
ピロリ菌陽性の慢性胃炎 年1回
除菌後の萎縮性胃炎 年1回または医師の指示に従う

3. 禁煙・節酒の徹底

喫煙や過度な飲酒は、胃粘膜に慢性的なダメージを与えます。

  • 禁煙により胃潰瘍の再発率が下がることが研究で示されています。

  • アルコールは少量でも胃の炎症を悪化させることがあるため、休肝日を設ける習慣も大切です。

4. ストレスマネジメント

ストレスは自律神経に作用し、胃酸過多や消化不良を引き起こします。以下のような方法で心身のバランスを整えましょう。

  • 規則正しい睡眠

  • 適度な運動(ウォーキング・ストレッチなど)

  • 瞑想や深呼吸

  • カウンセリングの活用

5. 食事内容の見直し

胃にやさしい食事を続けることが、胃粘膜の回復と再発予防に直結します。

食べるべきもの 控えたいもの
白粥、うどん、豆腐、キャベツ 揚げ物、辛い物、炭酸飲料、濃いコーヒー

6. 薬の服用に注意を

  • NSAIDsやアスピリンなどを使用している方は、医師と相談の上で胃薬を併用しましょう。

  • 必要に応じて、胃の保護薬(プロトンポンプ阻害薬など)の継続処方も検討されます。

胃を守るためには、習慣が最大の薬

胃炎の再発防止には、「医師の治療」+「自分自身の生活管理」の両立が欠かせません。日々の行動が胃の状態を大きく左右するため、小さな習慣改善から始めることが大切です。

胃カメラで「胃が荒れている」と言われたら|正しい知識とケアで胃を守ろう

胃カメラ検査で「胃が荒れている」と言われると、不安になる方も多いでしょう。しかし、これは「胃炎」と呼ばれる状態の一つで、原因や程度に応じた対処をすることで、多くの場合しっかりと改善が可能です。

胃炎には急性・慢性のほか、ピロリ菌感染、薬剤性、ストレス性などさまざまなタイプがあり、それぞれに適した治療と生活改善が必要です。

胃炎対策で大切な6つのポイント

  1. ピロリ菌の検査と除菌治療

  2. 胃カメラでの定期チェック

  3. 禁煙・節酒による胃粘膜の保護

  4. ストレスの管理と十分な休養

  5. 胃に優しい食生活の継続

  6. 薬の服用における医師との連携

胃炎は「生活習慣病の一種」ともいえるほど、日常の行動が大きく関係します。市販薬で一時的に症状を和らげることはできますが、根本的な原因を見逃さず、医師の診断と定期的なチェックを怠らないことが再発防止の鍵です。

正しい知識とケアで、胃の健康を守りましょう。

 

引用論文・ガイドライン

  1. Uemura N, Okamoto S, Yamamoto S, et al.
     Helicobacter pylori infection and the development of gastric cancer.
     New England Journal of Medicine. 2001;345(11):784–789.
     https://doi.org/10.1056/NEJMoa001999

  2. 日本ヘリコバクター学会.
     ヘリコバクター・ピロリ感染の診断と治療に関するガイドライン 第5版(2023年).
     https://www.jshr.jp/guidelines/

  3. Malfertheiner P, Megraud F, O'Morain CA, et al.
     Management of Helicobacter pylori infection—the Maastricht V/Florence Consensus Report.
     Gut. 2017;66(1):6–30.
     https://gut.bmj.com/content/66/1/6

【監修者】

かわぐち内科・内視鏡クリニック

川口 佑輔

 

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