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感染性腸炎

感染性腸炎とは?

感染性腸炎は、ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体が原因で発生し、胃腸の炎症や感染によって引き起こされる疾患です。主に感染経路として、汚染された食品や水を摂取することが挙げられます。また、感染者の便や嘔吐物に触れた手を介しての感染もあります。そのため、衛生状態が悪いと発生しやすいとされています。

感染性腸炎には、ノロウイルスやロタウイルス、カンピロバクター、サルモネラ菌、大腸菌など様々な病原体が関与しており、それぞれに特徴的な症状が現れます。また、感染性腸炎は年齢や免疫力に関係なくかかることがあり、特に幼児や高齢者には重症化しやすいため、注意が必要です。予防策としては、手洗いや食品の加熱調理、水分補給などが重要で、早めの診断と適切な治療が求められます。

感染性腸炎の症状

感染性腸炎の症状としては

  • 発熱
  • 腹痛
  • 下痢
  • 嘔気(吐き気)・嘔吐

などがあります。

それぞれの病原体によって症状に違いがあり、例えばノロウイルス感染症では急激に嘔吐が始まり、その後下痢が加わることが多く見られます。また、カンピロバクター感染症では激しい腹痛や血便が特徴となります。

感染性腸炎の症状は、感染から数時間から数日の潜伏期間を経て発症し、通常1週間程度で自然に治まりますが、重症化したり合併症が発生した場合は、速やかに医療機関での治療が必要となります。脱水症状もよく見られるため、水分補給を心掛けることが大切です。

感染性腸炎の診断と検査

感染性腸炎の診断は、症状の詳細や問診を元に医師が行います。その後、確定診断のために便や血液の検査が実施されることが多いです。

問診

問診では、患者の食事内容や海外渡航歴、症状の詳細を聞くことで、感染性腸炎の原因となる病原体を特定する手がかりとなります。

食事内容でいえば、例えば前日に牡蠣を食べて腹痛、下痢、嘔吐が始まった場合ノロウイルス感染が疑われる といった具合です。

直前に海外渡航歴がある場合には、感染症が流行している国や地域での感染の可能性が考慮されます。

血液検査(採血)

感染性腸炎の場合、血液検査で注目するポイントとしては

  • 白血球
  • CRP
  • Cr(腎機能)

などがあります。

白血球とCRPは炎症の重要な指標となります。

白血球が高い場合は細菌による感染症の事が多く、CRPは基本的にどんな炎症でも高値を示します。

従って感染性腸炎の場合

白血球とCRPどちらも高い場合には細菌感染を疑い、白血球は正常値だがCRPが高い場合にはウイルス感染などが疑われます。

またどちらの値も値が高いほど重症度が高くなるため、重症度の指標にもなります。

腎機能は脱水の具合を判定する良い指標です。感染性腸炎では下痢や嘔吐により脱水になりやすくなるため、高度の腎機能障害を起こしている場合には、重症度が高いと判断されます。

便検査(細菌培養検査)

便による細菌培養検査は、感染性腸炎の原因を診断するための重要な検査です。

ただし、便検体の提出が面倒であり、またウイルス性の場合原因が同定できません。そして細菌性でもウイルス性でも通常は3-5日程度で改善に向かいますが、細菌培養検査の結果は1週間から10日ほど経った後に判明します。

従って、重症度が高い場合や、海外渡航歴があり一般の感染源以外の可能性が考慮される場合に便検査を行う事が多いです。

便検査のメリット ・病原体を特定できる可能性がある
便検査のデメリット

・ウイルス感染では原因が特定できない
・便検体の採取が面倒
・検査結果が出るのに7~10日ほどかかる

CT検査

感染性腸炎を疑った場合に、全例で行う検査ではありません。

CTを行う事により、感染の場所がどこにあるか(小腸なのか大腸なのか)、炎症の重症度、穿孔(腸に穴があく)などの合併症が起こっていないか などが判定できます。

感染性腸炎症状の患者様にCTを考慮する場合としては

  • 重症度が高い患者様
  • 感染性腸炎以外の疾患も鑑別に挙がる患者様

などです。

大腸カメラ検査

感染性腸炎の際に大腸カメラは第一選択とは言えません。

何故なら、感染性腸炎で下痢や嘔吐の症状が強い時に大腸カメラのための腸管洗浄剤を内服する事により、症状が増悪したり、最悪炎症を起こしている腸に負担がさらにかかって腸管穿孔を起こすなどのリスクがあるからです。

大腸カメラを検討する場合は

  • 感染性腸炎にしては経過が長く、症状の原因検索が必要な場合
  • 便検査だけでは診断ができず、直接大腸カメラで粘膜を確認し病原体を確定させたい場合

などです。

感染性腸炎の病原体とは?

感染性腸炎はの原因としては、

  • ウイルス性
  • 細菌性
  • 寄生虫性

に大別されます。

ウイルス性は小腸に炎症の首座がある場合が多く、抗生剤による効果が望めないという特徴があります。

細菌性の場合には大腸に炎症の首座がある場合が多く、抗生剤の投与も考慮されます。

寄生虫性は頻度が少なく、限られた特徴的な症状の場合のみ疑うこととなります。

ウイルス性感染性腸炎

ウイルス性感染性腸炎は、ウイルスが原因で発生する胃腸炎の一種であり、患者は下痢や嘔吐などの症状に悩まされます。

原因ウイルスは便の迅速抗原検査の施行により短時間で診断できますが、場合によっては自費診療となりやや高額になってしまいます。

感染原因の主なウイルスとして3つ

  • ノロウイルス
  • ロタウイルス
  • 腸管アデノウイルス

を挙げて特徴を説明させていただきます。

  ノロウイルス ロタウイルス アデノウイルス
頻度 高い
感染経路 経口(牡蠣摂取) 感染乳幼児から感染 経口
流行時期
症状 ・嘔気・嘔吐
・下痢
・腹痛
・発熱
・乳幼児の突然の嘔吐
・下痢
・発熱
・嘔気・嘔吐
・下痢
・腹痛
・発熱
潜伏期間 1~2日 1~2日 2~7日

※潜伏期間:感染から症状が発現するまでの期間

表のように、季節や症状だけでは原因ウイルスが同定できない事も多々あります。

細菌性腸炎

細菌性腸炎は、細菌が原因で引き起こされる胃腸炎で、腹痛、下痢、嘔吐などのいわゆる『食中毒』の症状が現れます。

ウイルス性と違って夏に流行する事が多いのが特徴です。診断は便の培養により行われ、抗生物質が必要な場合もあります。

感染原因の原因菌として有名な4つ

  • 病原性大腸菌
  • 腸炎ビブリオ
  • サルモネル
  • カンピロバクター

について特徴を表にまとめさせて頂きます。

  大腸菌(O-157) カンピロバクター サルモネル 腸炎ビブリオ
感染経路 牛肉、井戸水 加熱不足の鶏肉 卵、鶏肉、うなぎ 刺身
頻度 低い 高い 高い
流行時期
潜伏期間 4~7日 1~7日 半日~3日 半日~1日
症状 ・腹痛
・下痢
・血便
・腹痛
・発熱
・頻回な下痢
・腹痛
・下痢
・嘔吐
・激しい腹痛
・下痢
・嘔吐

 

寄生虫

寄生虫感染症は様々な原因がありますが、ここでは主にクリプトスポリジウムとアメーバに焦点を当てます。クリプトスポリジウムは水を通じた感染が一般的であり、症状としては水様性の下痢、腹痛、発熱があります。アメーバは汚染された水や食品を摂取することで感染し、腹痛や下痢、時には血便が現れることがあります。

治療は医師の診断に基づき、抗原虫薬や抗生物質が使用されます。感染予防策としては、水の消毒や食品の衛生的な取り扱い、手洗いを徹底することが求められます。

感染性腸炎の治療

治療法としては

  • 食事制限・水分摂取
  • 薬による治療
  • 点滴

などがあります。

食事制限・水分摂取

感染性腸炎では腸に炎症を起こしているため、食事を取ると腸の刺激となり、症状が増悪する可能性があります。

栄養は二の次として、水分の摂取を優先しましょう。

薬による治療

薬については、整腸剤や解熱剤、場合により吐き気止めを使用します。

抗生剤については、細菌性の場合にのみ効果があり、ウイルス性では効果を示しません。従って、上述したような症状の経過や特徴的な所見から細菌性かウイルス性かの当たりをつけ、必要に応じて抗生剤は処方します。

(細菌性であっても自然に治癒する事がほとんどであり、抗生剤が必須な訳ではありません)

点滴

点滴はあくまでその場しのぎですが、水分の摂取もできない場合には脱水が進行してしまいます。脱水が著明な場合入院が必要となる事もあります

 

感染性腸炎についてよくある質問

最後に、血便について患者様から多く寄せられる質問にお答えします。

Q.感染性腸炎と診断された場合、出勤や出席が禁止となりますか?

法律的には、感染性腸炎で会社への出勤や学校への出席が禁止となるものはありません。

通常は下痢や嘔吐の症状が改善すれば、出勤、出席は可能と判断されます。

調理従事者の場合、ノロウイルス感染に罹患した状態で調理を続けると集団感染のリスクが高くなります。従ってノロウイルスの検査は行っておく必要があるでしょう。

Q.下痢がひどいので下痢止めをもらえますか?

感染性腸炎の際に起こる下痢は、病原体を体の外に出そうとする生体防御反応のようなものです。下痢止めを飲むと、病原体が体の中に留まり、症状が増悪する恐れがあるため使用できません。

Q.子供が感染性腸炎になりました。自分が感染しないための方法を教えてください。

子供の感染性腸炎が大人に映る事はよくあります。これは、通常大人であれば吐物や下痢などの処理は自分で行えますが、子供の場合そうはいかず、家族(特に母親)が看病する際に触れた下痢や吐物などの感染源から感染してしまいます。

基本的な事ではありますが、感染源に触れた後の手洗いなどが非常に重要です。タオルや食器なども感染経路となりますので、使用したものはなるべくすぐに洗うように心がけましょう。

Q.海外から帰国後に腸炎症状が出ました。特別な対処法はありますか?

頻度として多いものとして、毒素原性大腸菌(大腸菌の一種)、細菌性赤痢などがあり、日本国内では比較的頻度の少ないものが含まれます。

基本的な対処としては通常の感染性腸炎と同じです。

ただし、これ以外にも特殊な感染症の可能性もあり、便培養検査が診断に役立つ可能性があります。

帰国後に腸炎症状がある場合には一度医療機関を受診してください。

 

以上、感染性腸炎についてまとめました。

是非参考にして頂き、必要に応じて外来を受診してください。

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