当院で使用している胃カメラの麻酔・鎮静剤について
【監修者】
かわぐち内科・内視鏡クリニック
川口 佑輔
- 2010年北里大学医学部卒業
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- 日本肝臓病学会専門医
当院で使用している麻酔・鎮静剤の種類
内視鏡で行う麻酔・鎮静剤は、
- のどや鼻腔に行う麻酔
- 点滴を使用した静脈麻酔(鎮静剤)
に分けられます。
経口方式の麻酔
口から内視鏡を入れる場合、内視鏡スコープがのどを通過するときに強い苦痛を伴います。
この苦痛を取り除くために、のどの麻酔を行います。
のどの麻酔にはキシロカインという薬剤が使用されており、
- スプレータイプ
- ゼリータイプ
- 液体タイプ
などがあります。
当院ではゼリータイプを30秒間のどにため吐きだし、その後スプレータイプを使用してのどの麻酔を行っています。
他院に比べると、かなり丁寧な方法です。
経鼻方式の麻酔
鼻からの内視鏡検査では、鼻腔の内部に麻酔を行う必要があります。当院では上述したキシロカインの液体タイプを鼻に注入し鼻腔の麻酔を行っています。
また経鼻胃カメラの場合、鼻腔を広げるために血管収縮剤(プリビナ)を用い、内視鏡スコープが通りやすいように工夫しています。
静脈麻酔(鎮静剤)
点滴から静脈麻酔薬を注射し、うとうとした状態で行う内視鏡検査を行う事ができます。
痛みや『オエッ』という反射の軽減のみならず、抗不安作用もあるため不安感の軽減に繋がるのも特徴です。
麻酔薬にも様々な種類があり、患者様の状態や合併症により使い分けています。
よく使用する麻酔薬と特徴を挙げておきます。
- ミダゾラム
- プロポフォール
ミダゾラム | プロポフォール | |
効果発現の速さ | 早い | 早い |
目覚めるまでの速さ | やや遅い | 早い |
拮抗薬の有無 | あり | なし |
副作用のリスク | 低い | やや高い |
※拮抗薬:薬の効果をなくす作用を持つ薬です。ミダゾラムにはフルマゼニルという拮抗薬があるため、副作用が強く出た場合でも拮抗薬を使用する事により眠気を覚ます事ができます。
麻酔薬を使う胃カメラのメリット
- 苦痛の軽減
- 観察の精度が上昇する
という事が挙げられます。
苦痛の軽減
胃カメラ検査では、経口であれ経鼻であれ内視鏡スコープが喉を通過するため、どんなに上手な内視鏡施行医が検査を行っても少なからず『オエッ』という反射が起こります。
正直なところ、鎮静剤を使用しない胃カメラ検査においても、『他の病院より苦しくなかった』と言って頂ける事は非常に多いと自負しています。
しかし、それでも、特に若い方を中心に苦しさを感じさせてしまう事は多々あります。
鎮静剤を使用する事で、この苦痛はかなりの確立で軽減されます。
観察の精度が上昇する
患者様の『オエッ』という反射は、内視鏡的には胃の中の空気がげっぷとして口から体外に出てしまう事を指します。
鎮静剤を使用しない内視鏡検査で、患者様が『オエッ』という反射を繰り返してしまうと、胃の中に空気が溜まらず不十分な検査に終わってしまう可能性が増えます。
鎮静剤を使用する事でこのような反射も軽減され、精度の高い検査に結びつくのです。
麻酔薬を使う胃カメラのデメリット
- 時間がかかる
- 副作用のリスクを伴う
- 帰宅後も鎮静剤の影響が残る
などが挙げられます。
時間がかかる
鎮静剤を使用した場合、検査後にも鎮静剤の作用が残るため、リカバリールームでの休憩が必要となります。人によってはなかなか起きられない方もいらっしゃいますので、必然的に時間を要してしまいます。
副作用のリスクを伴う
鎮静剤の副作用として、血圧低下や呼吸抑制などが知られており、最悪の場合命に関わる事もあります。
苦しさを取り除くために鎮静剤の量を増やせば増やすほど副作用のリスクも高まるため、鎮静剤の使用に精通した医師によるコントロールが必須となります。
帰宅後も鎮静剤の影響が残る
鎮静剤の作用は数時間は残るため、帰宅後もぼーっとした感じが残ります。そのため車や自転車の運転は禁止されています。
また仕事も集中力を欠きミスに繋がる可能性もありますので、日程には十分に注意頂く必要があります。
当院で行っている胃カメラ麻酔の特徴
麻酔薬の前提 ~理想の麻酔薬は?~
前提として、どのような麻酔薬を皆さんは望まれますか?
- しっかりと眠れる薬
- 検査が終わった後すぐに起きやすい薬
- 副作用が少ない薬
基本的にはこの3つを高いレベルで達成できる薬がいい薬という事になると思います。
当院の胃カメラ麻酔3つのこだわり
- 少ない量から鎮静剤投与を開始
- 患者様の病態に合わせた薬剤選択・容量調整
- しっかり目が覚めるまでリカバリールームで休憩
少ない量から鎮静剤投与を開始
検査を短時間で終わらせるためには、最初から鎮静剤を相当量投与し深く眠ってもらった方が検査が早く開始できます。
しかし鎮静剤の効果は人それぞれであり、投与が過量になれば副作用のリスクが増えてしまいます。
当院では、安全性を最大限に考慮し、少ない容量から丁寧に鎮静剤を投与しています。
患者様の病態に合わせた薬剤選択
患者様の患っている持病により、使用できる鎮静剤に制限が出る場合があります。事前の外来にてしっかりと問診を行い、使用する薬剤を決定します。
(当院では、ミダゾラムとプロポフォールを常備しており、患者様の状態に合わせて使い分けています。)
しっかり目が覚めるまでリカバリールームで休憩
胃カメラが無事終わっても、帰宅時に転倒してけがをしては意味がありません。
当院では、胃カメラ検査後、寝たままの状態でベッドごとリカバリールームに移動し、しっかりと目が覚めるまで休憩して頂いております。
私の体験談
私は今までに
- 経口胃カメラ
- 経鼻胃カメラ
- 鎮静剤を使用した胃カメラ
全てを経験しています。
私自身は喉の反射は強い方であり、胃カメラはかなり苦手です。
26歳 消化器内科を専攻した歳に、『患者様に内視鏡をするのだから自分も辛さを知りなさい』という教えのもと、初めて経口胃カメラを行いました。
上手な先輩の先生に胃カメラを行ってもらいましたが、それでも非常に辛かった事を覚えています。
2回目は35歳の時、永寿時代に健康診断のオプションとして胃カメラが受けられたため、経鼻胃カメラを行いました。
鼻の方が楽かな?と思っていましたが、これも非常に辛かったです。
そして38歳(今年)、3回目の胃カメラで初めて鎮静剤を用いた検査を行いました。
結論から言うと、個人としては鎮静剤使用の胃カメラ検査が圧倒的に楽であり、次回以降も鎮静剤を使用した胃カメラを受けたいと考えました。
ただし、上述したように、鎮静剤を使用した胃カメラにはデメリットもありますので、日程などよく検討した上で、検査を受けて頂く事が重要です。
胃カメラの麻酔・鎮静剤に関するよくあるご質問
最後に、胃カメラの麻酔・鎮静剤に関する患者様から多く寄せられる質問にお答えします。
Q.麻酔・鎮静剤を使用した当日や次の日は運転することは可能ですか?
喉や鼻腔の麻酔のみであれば、検査当日より運転は可能です。
静脈麻酔(鎮静剤)を使用した場合には、検査当日自転車や車の運転ができません。
検査翌日は、運転に制限はありません。
Q.鎮静剤を使用した胃カメラ検査はどのくらいの時間がかかりますか?
来院してから帰宅までにおおよそ30分から1時間程度となります。
喉の麻酔や点滴の針を入れる時間:約5分
内視鏡室に移動して体勢を整え麻酔薬を入れるまで:約5分
内視鏡検査時間:約3~5分
検査後リカバリールームで休憩する時間:薬15分
検査結果説明の時間:約5分
会計:約5分
その他に順番待ちや休憩する時間の個人差などにより+αの時間がかかります。
Q.麻酔・鎮静剤無しで胃カメラ検査を行う事は可能ですか?
鎮静剤を使用しない胃カメラは問題なく可能です。
また喉や鼻の麻酔を行わずに胃カメラを行わなければならない事はたまにありますが、かなりの苦痛を伴います。
前回の喉麻酔でアレルギーが出た方、歯医者さんの麻酔でアレルギーが出た方などは、喉や鼻の麻酔が使用できない事がありますので、予めご報告下さい。
Q.鎮静剤を使用する場合でも、のどの麻酔は必要ですか?
のどの麻酔自体が苦しいため、鎮静剤を使用するならのどの麻酔はやりたくないと思う方もいると思います。
しかし鎮静剤の使用は副作用のリスクも高まるため、のどの麻酔も併用する事で鎮静剤の量を減らす事ができ、副作用のリスクを軽減することができます。
従って、鎮静剤を使用する場合でも、のどの麻酔は原則行います。
当院では、麻酔薬を使った苦痛の少ない内視鏡検査を行っています。内視鏡専門医である院長が責任を持って担当し、胃・大腸カメラを同日施行する事も可能です。
胃の症状があり、胃カメラを受けるべきか相談したい方は【外来Web予約】へお進みください。
他院からの紹介状などがあり胃カメラを予約したい方は【胃カメラWeb予約】へお進みください。