【セルフチェックで簡単判別】過敏性腸症候群(IBS)の症状と見分け方を徹底解説!
はじめに:お腹の不調、もしかしてIBSかも?
「最近、お腹の調子が悪い」「下痢や便秘が続くけど原因がわからない」
そんな悩みを抱えていませんか?
それ、**過敏性腸症候群(IBS)**かもしれません。
IBSは、ストレスや生活習慣により腸が過敏になり、腹痛や便通異常を引き起こす病気です。日本人の約10~15%が罹患しているといわれており、特に20~40代に多く見られます(※1)。
本記事では、IBSの基本情報から、セルフチェックでIBSの可能性を確認する方法、さらには見逃してはいけない他の疾患との違いまで、医療情報とエビデンスに基づいて詳しく解説します。
セルフチェック前に知っておくべき3つの症状
セルフチェックを始める前に、まずはIBSによく見られる代表的な3つの症状を理解しておきましょう。
① 腹痛や腹部不快感が排便でやわらぐ
IBSで最も特徴的なのは、腹痛やお腹の張りが排便後に軽くなることです。
「お腹が痛くなる→トイレに行く→痛みが和らぐ」
このようなパターンが繰り返される人は、IBSの可能性があります。
これは、腸の動きが過敏になっており、ガスや便の刺激が痛みを引き起こしているためと考えられています。
② 便通の異常(下痢・便秘)が長く続く
IBSの便通異常は、一時的ではなく**「週1回以上・3か月以上持続する」**という特徴があります。
タイプ | 症状の例 |
---|---|
下痢型(IBS-D) | 急にトイレに行きたくなる、軟便や水様便 |
便秘型(IBS-C) | 硬い便、コロコロ便、残便感 |
混合型(IBS-M) | 下痢と便秘が交互に現れる |
「なんとなく不安定なお腹」が続くなら、便の状態と頻度をチェックしてみましょう。
③ ストレスでお腹の症状が悪化する
IBSは「脳腸相関(のうちょうそうかん)」と呼ばれるメカニズムが関与する疾患です。
これは、ストレスや不安が腸の動きに影響を与えるという現象で、IBSの発症に深く関係しています。
例:
-
満員電車で腹痛が出る
-
試験や会議前に下痢になる
-
緊張するとお腹が張る
このように、精神的な負荷と腸の反応がリンクしている人はIBSのリスクが高いといえます。
あなたは当てはまる?IBSセルフチェックリスト
IBSの診断には、Rome IV(ローマ・フォー)基準という国際的な診断基準が使われます。これをもとにした簡易セルフチェックリストで、自分の症状を確認してみましょう。
Rome IV基準をもとにしたセルフチェック表
過去3か月間の状態を思い出して、以下のチェックをしてみてください。
質問 | はい | いいえ |
---|---|---|
月に1回以上、腹痛がある | □ | □ |
排便後に腹痛が軽減する | □ | □ |
腹痛とともに便の回数が変化する | □ | □ |
腹痛とともに便の形状が変化する | □ | □ |
下痢または便秘が3か月以上続いている | □ | □ |
ストレスがあるとお腹の調子が悪くなる | □ | □ |
特定の状況で症状が出やすい | □ | □ |
ガスや腹部の張りが気になる | □ | □ |
チェック結果の目安
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4項目以上該当 → IBSの可能性大
-
2~3項目該当 → IBS傾向あり
-
1項目以下 → 他の原因の可能性も検討を
このセルフチェックはあくまで目安です。気になる症状が続く場合は、消化器内科を受診しましょう。
IBSと間違えやすい病気に注意!
IBSのような症状を呈する疾患には、重篤な病気も含まれています。
自己判断で放置することは非常に危険です。
器質的疾患との違いとは?
IBSは機能的疾患であり、採血や画像検査にて症状の原因となる疾患が見つからないものを指します。
一方器質的疾患とは、採血や画像検査にて症状の原因が明確に分かる疾患であり、IBSと似ている疾患として下記のような疾患が挙げられます。
疾患名 | 主な症状 | 見分けるポイント |
---|---|---|
大腸がん | 血便、便秘、体重減少 | 40歳以降の初発症状に注意 |
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病) | 下痢、血便、発熱 | 若年層でも発症し、進行性 |
感染性腸炎 | 急な下痢、嘔吐、発熱 | 数日で発症し、ウイルスや細菌が原因 |
乳糖不耐症 | 食後すぐの腹痛・下痢 | 乳製品摂取後に症状 |
すぐ受診すべき「赤信号」の症状
以下の症状がある場合は、IBSではなく他の病気が隠れている可能性があります。
-
血便、黒色便が出る
-
発熱・体重減少・貧血など全身症状がある
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夜中に下痢で起きる
-
家族に炎症性腸疾患やがんの既往がある
これらがある場合は、速やかに専門医の診察を受けてください。
セルフチェック後にすべき3つのアクション
IBSの可能性があると感じたら、以下のステップで適切に対処しましょう。
① 医療機関で診断を受ける
IBSは除外診断です。他の疾患を排除するため、消化器内科で以下の検査が行われます。
-
問診
-
血液・便検査
-
大腸内視鏡検査
② 食事と生活習慣を見直す(低FODMAP食)
IBS改善には、低FODMAP食が注目されています。これは腸でガスを発生させやすい糖質を避ける食事法です。
避ける食品(高FODMAP) | 例 |
---|---|
小麦製品 | パン、パスタ |
乳製品 | 牛乳、ヨーグルト |
野菜 | 玉ねぎ、にんにく |
果物 | りんご、洋梨 |
人工甘味料 | ソルビトールなど |
まずは1~2週間試して、症状の変化を記録しましょう。
③ ストレスケアと心の安定
IBSはストレスと密接な関係があるため、心のケアも重要です。
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睡眠の質を上げる
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軽い運動を習慣化する
-
瞑想や呼吸法を取り入れる
-
必要に応じて心療内科の受診も視野に
薬物療法も視野に入れて
症状が重い場合、薬による治療も行われます。
タイプ | 処方される薬 | 効果 |
---|---|---|
下痢型 | ラモセトロン、止瀉薬 | 下痢・腹痛の抑制 |
便秘型 | ルビプロストン、酸化マグネシウム | 排便改善 |
全体型 | 整腸剤、抗不安薬、漢方薬 | 腸内バランス・ストレス対策 |
お腹の不調は我慢せず、まずはチェックから
IBSは命にかかわる病気ではありませんが、生活の質(QOL)を大きく下げる原因になります。
「たかがお腹の不調」と思わず、まずはセルフチェックから始め、必要に応じて医療機関を受診しましょう。
早めの気づきと行動が、健康への第一歩です。
参考文献・引用論文
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日本消化器病学会ガイドライン(2020年版)過敏性腸症候群診療ガイドライン
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Drossman DA et al. Rome IV–Functional Gastrointestinal Disorders: Disorders of Gut-Brain Interaction. Gastroenterology. 2016
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Ford AC et al. Efficacy of dietary FODMAP restriction in IBS: Systematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol. 2018
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長谷川 俊弘ら:過敏性腸症候群の診断と治療. 日本内科学会雑誌. 2020; 109(7): 1289–1295
当院では、麻酔薬を使った苦痛の少ない内視鏡検査を行っています。内視鏡専門医である院長が責任を持って担当し、大腸ポリープがあれば当日切除も可能です。
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【監修者】
かわぐち内科・内視鏡クリニック
川口 佑輔
- 2010年北里大学医学部卒業
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- 日本肝臓病学会専門医