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台東区浅草のかわぐち内科・内視鏡クリニックの院長ブログ

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血便と腹痛が同時に出たら要注意!虚血性大腸炎を中心に考えるべき病気とは?

血便+腹痛は危険なサイン?どんな病気が隠れているのか

突然、血便と腹痛が同時に現れたら——それは体からの「危険信号」かもしれません。この2つの症状の組み合わせは、単なる胃腸炎ではなく、命に関わる病気の可能性もあるため注意が必要です。

血便+腹痛から考えられる主な病気

血便+腹痛で受診される方は数多くいらっしゃいます。

血便の量や頻度、腹痛の部位や強さにより表のような疾患を想定します。

この中で、一般の方にはあまり馴染みがない病名と思いますが頻度が非常に高いのが虚血性大腸炎という病気です。

疾患名 主な症状 特徴
虚血性大腸炎 急な左下腹部痛、下痢、血便 中高年女性に多い。突然発症。
感染性腸炎 発熱、嘔吐、腹痛、血便 細菌・ウイルス感染による。旅行後に多い。
潰瘍性大腸炎 慢性的な下痢、血便、体重減少 若年者に多く、再発を繰り返す。
大腸がん 血便(赤〜黒色)、腹部の違和感 初期は無症状のことも多い。
痔(内痔核など) 排便時の鮮血、痛みが少ない 血便が便の表面に付着する。

ワンポイントアドバイス

「痔」だと思って放置する方も多いですが、腹痛が伴う血便は、痔よりも消化管の病気の可能性が高くなります。

 

虚血性大腸炎とは?―中高年に多い意外な病気

虚血性大腸炎とはどんな病気?

虚血性大腸炎は、大腸に流れる血液が一時的に不足し、粘膜が炎症を起こす病気です。心筋梗塞が心臓の血流障害で起きるように、腸でも同様の障害が起こると理解してください。

大腸を栄養する結果の中で下腸間膜動脈という血管が解剖学的に詰まりやすく、下腸間膜動脈が栄養する下行結腸からS状結腸の部分で炎症を起こし症状が起こります。

下行結腸とS状結腸は図のような場所であり、腹痛の部位もおおむねこの部分に一致します。

虚血性大腸炎について詳しくは 虚血性大腸炎 をご覧ください。

 

なぜ起こる?リスク因子と好発年齢

以下の表が虚血性大腸炎のリスク因子となります。

典型的には、普段便秘のある40-50歳女性が突然腹痛を発症し、数時間後に血便が出る というエピソードとなります。

リスク因子 説明
中年・高齢・女性 血管の硬化や女性ホルモンの変化が関与
動脈硬化、高血圧、糖尿病 血管障害を起こしやすい
便秘や下剤の乱用 腸内圧の急激な変化で血流低下
脱水、過度なダイエット 血液量の低下で腸の酸素供給不足

日本消化器病学会ガイドラインによれば、60代以上の女性に多く、再発例も一定数報告されています。

虚血性大腸炎の代表的な症状と進行の流れ

代表的な症状

  • 左下腹部の突然の差し込むような痛み
  • 数時間後に粘液を含む血便
  • 多くは数日で自然軽快する

病型と重症度分類

病型 症状の程度 治療方針
軽症型 腹痛・血便が自然軽快 絶食・点滴で腸を休ませる
中等症型 発熱・白血球増加など全身炎症 入院して抗菌薬投与
重症型 腸壊死・穿孔など腹膜炎の兆候 緊急手術が必要なケースもある

⚠️ 注意サイン

痛みが強まる、発熱が続く、吐き気がある場合は早急に受診を!

 

どうやって診断する?検査内容と病院での流れ

腹痛と血便で受診された場合、虚血性大腸炎は念頭に置くべき疾患ですが、それ以外にも鑑別疾患は多数あります。

特に血便を呈している場合には、必ず大腸がんでない事を除外する必要があります。

初診で行われる診察

  • 問診(症状の経過、既往歴、服薬歴など)
  • 触診(左下腹部の圧痛が典型的)

実施される主な検査

検査名 内容と目的
血液検査 炎症や貧血の有無、脱水の程度を確認
便検査 感染性腸炎や寄生虫の有無を鑑別
CT検査 壁肥厚や出血範囲を可視化
大腸内視鏡検査 粘膜のびらん・潰瘍・出血を詳細に観察

鑑別が必要な疾患

  • 感染性腸炎(発熱・集団感染の可能性)
  • 潰瘍性大腸炎(慢性化する若年性血便)
  • 大腸がん(慢性的な血便、体重減少)

当院の腹痛+血便の流れ

  1. 問診にて疾患を想定する
  2. 虚血性大腸炎が疑われたら、採血とCT(他院に依頼)をオーダーする
  3. 結果説明外来にて重症度と画像診断結果を伝え、その後の症状の経過を聞き取る
  4. CTで虚血性大腸炎が疑われても、『大腸がんでない』とは言えず、一度大腸カメラを後日行う。

ワンポイントアドバイス

虚血性大腸炎を疑った場合、通常大腸カメラはすぐには行いません。
炎症がある状態で大腸カメラ前の腸管洗浄剤を飲んだり、大腸カメラを挿入したりすると、症状の悪化を招く恐れがあるためです。

治療と予防法―再発を防ぐためにできること

病型別の治療法

虚血性腸炎治療の第1選択は、絶食・点滴による腸管安静です。

ただし、ご自宅で療養する場合水分や少量の食事は取らざるを得ませんが、それだけでも症状が増悪するような方や、虚血性大腸炎に感染が合併して抗生剤投与が必要な方は入院を要する場合があります。

病型 治療法
軽症型 絶食・点滴・腸の安静で自然治癒
中等症型 抗菌薬、入院加療が必要
重症型 腸壊死・穿孔があれば緊急手術

💡 多くの患者は1週間前後で改善しますが、再発防止の意識が重要です。

 

再発を防ぐ生活習慣のポイント

予防策 解説
水分摂取の習慣 喉が渇く前に水を飲むことを習慣に
食物繊維の摂取 腸の動きを整え、便秘予防に効果的
下剤の濫用を避ける 腸管障害や虚血の原因になることもある
血圧・血糖管理 血管の健康を守ることが再発予防に直結

受診すべきタイミング

  • 血便が繰り返し出る
  • 腹痛が治まらない(3日以上)
  • 食欲不振・全身倦怠感がある
  • 貧血症状(ふらつき・動悸など)が見られる

まとめ:血便+腹痛は放置せず、早めの受診を

血便と腹痛という2つの症状が揃ったとき、自己判断で「大したことない」と片付けてしまうのは危険です。とくに中高年の女性であれば、虚血性大腸炎の可能性は十分に考慮するべきです。

正確な診断と適切な対応、そして再発予防のための生活改善が、あなたの腸を守る鍵となります。心当たりがある方は、早めに消化器内科を受診しましょう。

引用・参考文献

  1. Furukawa K, et al. “Ischemic colitis: Clinical review and update on management.” Annals of Gastroenterology. 2021.
  2. 日本消化器病学会.「消化器病診療ガイドライン 虚血性腸炎 2020」
  3. Brandt LJ, et al. “ACG Clinical Guideline: Epidemiology, Risk Factors, Clinical Presentation, and Management of Ischemic Colitis.” Am J Gastroenterol. 2015.
  4. Mizukami T, et al. “Clinical characteristics of ischemic colitis: A retrospective study in a Japanese hospital.” Int J Colorectal Dis. 2020.

当院では、麻酔薬を使った苦痛の少ない内視鏡検査を行っています内視鏡専門医である院長が責任を持って担当し、大腸ポリープがあれば当日切除も可能です。

麻酔薬を使用した無痛内視鏡検査

検査の説明を聞いてから大腸カメラを受けたい方は【外来Web予約】へお進みください。

先に検査日を決めたい方は【大腸カメラWeb予約】へお進みください。

 

【監修者】

 

かわぐち内科・内視鏡クリニック
川口 佑輔

2010年北里大学医学部卒業
日本内科学会認定医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本肝臓病学会専門医

〒111-0032 東京都台東区浅草1丁目35−9
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