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便が臭くて水に浮くのは病気?|腸と体調の知られざるサインとは

[2025.07.15]

気になる便の変化|浮く・臭いの原因とは?

便が水に浮いたり、普段より強い臭いがすると、「何か病気かも?」と不安になりますよね。実は、こうした便の変化には明確なメカニズムがあり、体の状態や腸内環境のサインでもあります。

まず、便が浮く主な原因は**「脂肪」や「ガス」**の存在です。脂肪分の多い食事を摂った際、小腸での吸収が不十分だと、便中に脂肪が残り、軽くなって水に浮くことがあります。また、腸内細菌によってガスが多く発生する場合(特にSIBO:小腸内細菌異常増殖症など)、ガスが便の中に混ざって浮く現象も見られます。

次に、便の臭いについて。便のにおいは、腸内で食べ物が分解・発酵される過程で発生するガスの種類や量に左右されます。特に動物性たんぱく質を多く摂ると、悪玉菌が増えてアンモニアや硫化水素などの腐敗臭が強くなります。腸内環境が乱れると、便の臭いも強くなる傾向があります。

ただし、脂っこいものを食べ過ぎた翌日や、一時的な腸内トラブルでも、便が臭かったり浮いたりすることはあります。重要なのは**「それが続いているかどうか」**。数日で収まる場合は心配いりませんが、1週間以上続く、あるいは他の症状(腹痛、下痢、血便など)を伴う場合は、病気の兆候である可能性もあります。

表1:便が浮く・臭いときに考えられる主な原因と仕組み

原因 メカニズム 一時的 or 持続的
脂肪の多い食事 便中に脂肪が残り比重が軽くなる 一時的
腸内ガス(発酵やSIBOなど) ガスが便に含まれて浮く 一時的〜持続的
腸内フローラの悪化(悪玉菌増加) 腐敗物質(アンモニア・硫化水素)が発生 持続的
消化吸収不良(膵疾患・吸収不良) 吸収されない脂肪が残って浮く 持続的

要注意!便が浮いて臭いときに疑うべき病気3つ

「便が浮く」「強く臭う」という症状が一時的ではなく、数週間続く場合には、腸や膵臓の機能に問題がある可能性があります。ここでは、特に注意が必要な3つの疾患について解説します。

吸収不良症候群(膵機能不全・セリアック病など)

小腸での栄養吸収がうまくいかない「吸収不良症候群」は、脂肪の吸収が低下し、便中に脂肪が残る**「脂肪便」**を引き起こします。これは非常に臭く、油っぽく、トイレに浮くのが特徴です。

大腸がん・ポリープによる腸内異常

大腸がんやポリープがあると腸内の通過や発酵環境に異常が生じ、便の形や臭いが変化します。さらに便が細くなったり、血が混じるようであれば、早期の内視鏡検査が推奨されます。

過敏性腸症候群(IBS)やSIBOとの関連性

SIBOやIBSでは腸内で過剰な発酵が起こり、大量のガスが発生します。便が浮いてガス臭が強い場合には、これらの疾患の関与が考えられます。

表2:便の異常から考えられる代表的な疾患と特徴

疾患名 主な症状 特徴的な便の状態 診断方法
吸収不良症候群 体重減少、疲労、下痢 脂肪便、油っぽく水に浮く 便中脂肪検査、血液検査
大腸がん・ポリープ 血便、便の細さ、腹痛 臭い・浮く・形状異常 大腸カメラ内視鏡
SIBO・IBS お腹の張り、ガス、便通異常 ガスが多く浮く、臭いが強い便 呼気テスト、問診

日常生活でできる!便の臭いや浮きを改善する方法

便の臭いや浮きが気になるとき、食事や生活習慣の見直しによって改善できることが多くあります。

食事で整える腸内環境

水溶性食物繊維(海藻・オクラ・大麦など)と発酵食品(ヨーグルト・納豆・キムチなど)は、善玉菌を増やし腸内フローラを改善する代表的な食品です。

腸内ガスを抑える生活習慣と運動

ウォーキングや腹式呼吸、ヨガなどの軽い運動は腸の動きを促し、ガスの排出を助けます。また、早食いや炭酸飲料、ストレスを避けることも大切です。

市販薬・整腸剤の使い方

ビフィズス菌・乳酸菌・酪酸菌を含む整腸剤は、腸内バランスの乱れによる便異常の改善に効果が期待されます。ただし、効果がない場合は医師の診察が必要です。

表3:便の浮き・臭いに対する生活改善法とポイント

対策内容 具体例・食材 効果のポイント
水溶性食物繊維の摂取 海藻類(わかめ)、オクラ、大麦など 善玉菌のエサになり腸内環境改善
発酵食品の活用 ヨーグルト、納豆、キムチ 善玉菌を直接補給し腸内を整える
適度な運動の継続 ウォーキング、ヨガ、腹式呼吸 ぜん動運動促進・ガス排出を助ける
整腸剤・乳酸菌製剤の利用 ビオフェルミン、ラックビーなど 悪玉菌の抑制と便通の正常化

医療機関に相談すべきタイミングとは?

便の異常が2週間以上続く場合や、他の症状(血便、体重減少、腹痛など)がある場合は、自己判断せず医療機関に相談しましょう。

便の変化が2週間以上続く場合

消化吸収障害(膵疾患、セリアック病)や腸内異常の可能性があります。

血便・体重減少などを伴うとき

大腸がんや炎症性腸疾患などのサインであることもあり、内視鏡検査が必要になるケースもあります。

検査で分かること

  • 便潜血検査:消化管からの出血を調べる

  • 大腸カメラ:ポリープやがんの有無を確認

  • SIBO検査(呼気):腸内ガス異常を評価 →当院ではできません。

  • 膵酵素・脂肪便検査:吸収不良症候群を評価 →脂肪便の評価は当院ではできません。

表4:受診を検討すべき便の異常と対応の目安

異常症状 継続期間・状況 推奨される対応
便の浮きや臭いが2週間以上続く 食生活を整えても改善しない場合 消化器内科へ相談
血便、体重減少、腹痛、発熱がある 1回でも出現すれば 速やかに受診、精密検査へ
便が白っぽい・油っぽくてべたつく 脂肪便が疑われる 膵臓や吸収不良症の評価が必要
過剰なガス・腹部膨満感が続く 食後悪化、ガス臭が強い SIBOやIBSの検査を検討

まとめ

便が浮く、臭い時に考えられる疾患についてまとめました。
基本的には便が水に浮く・くさい だけで重篤な病気が隠れている可能性は低いものの、思わぬ病気が見つかる事もあります。

当院では、大腸内視鏡検査や膵臓関連検査(採血や腹部超音波検査)などで、症状の原因を調べる事が可能です。
また、それらの検査で異常が見つからない場合には、SIBOやIBS(過敏性腸症候群)などを疑い、生活習慣の指導や内服薬により長期的なコントロールを目指す事も行っております。

まずは症状が気になる方は当院までお気軽にご相談を頂けますと幸いです。

 

引用文献

  1. Keller J, Layer P. "Human pancreatic exocrine response to nutrients in health and disease." Gut. 2005;54(Suppl 6):vi1–vi28.

  2. Windey K, De Preter V, Verbeke K. "Relevance of protein fermentation to gut health." Mol Nutr Food Res. 2012 Jan;56(1):184–196.

  3. Meyer F, Balestra A, et al. "Stool examination for diagnosis of fat malabsorption: still useful?" World J Gastroenterol. 2014;20(42):15650–15656.

  4. Ghoshal UC, Srivastava D. "Small intestinal bacterial overgrowth and irritable bowel syndrome: a bridge between functional organic dichotomy." Gut Liver. 2014 Jul;8(4):349–361.

  5. 厚生労働省 e-ヘルスネット. 「腸内フローラと健康」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

 

【監修者】

かわぐち内科・内視鏡クリニック

川口 佑輔

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