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便秘

最近の研究では便秘であることが、心筋梗塞、脳卒中の発症リスクである事が分かりました。
一方で便秘程度では病院にかかりたくない、という患者様も多いのではないでしょうか?
このページの結論ですが、『便秘は医療機関にかかるべき疾患』です。
便秘でお悩みの患者様は、是非ハードルを下げて、当院への受診をご検討下さい。

    1. 便秘とは?
    2. 便秘の疫学 ~どの位の人が便秘なの?~
    3. 便秘の分類
    4. 便秘を生じる疾患
    5. 当院における便秘の診断
    6. 当院における便秘の治療

便秘とは?

便秘症とは慢性便秘症診療ガイドライン2017において、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。

そして『日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断治療研究会編:慢性便秘症診療ガイドライン2017』にて便秘の診断基準は表の様に記されています。

『便秘症』の診断基準
以下の6項目のうち、2項目以上を満たす
  • 排便の4分の1超の頻度で、強くいきむ必要がある。
  • 排便の4分の1超の頻度で、兎糞状便または硬便である。
  • 排便の4分の1超の頻度で、残便感を感じる。
  • 排便の4分の1超の頻度で、直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある。
  • 排便の4分の1超の頻度で、用手的な排便介助が必要である(摘便・会陰部圧迫など)。
  • 自発的な排便回数が、週に3回未満である。
『慢性』の診断基準
6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月間は上記の基準を満たしていること。

要するに便秘と感じる方は便秘症という事になります。

便秘の疫学 ~どの位の人が便秘なの?~

日本国民生活基礎調査の統計では男性2.5%、女性4.6%が便秘症状を有しているとされています。

20~60歳では圧倒的に女性が多く、70歳代から有病率が急激に上昇し、男女差もなくなります。

 

便秘の分類

便秘の分類は『日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会編:慢性便秘症診療ガイドライン2017』で上記の様に記載されています。

難しい言葉だらけで分かりづらいと思うので、解説を加えます。

 

まず器質性とは、臓器そのものに炎症やがんがあるものを指します。一番分かりやすい例が大腸がんで、大腸がんにより大腸が狭くなり便が流れなければ便秘になります。

一方機能性とは、臓器には何も異常は無いにもかかわらず症状がある状態です。一般的に皆さんが『便秘』と言われてイメージするのはこちらの病態と思われます。

 

また様々な検査方法が記されていますが、実際にクリニックレベルでできる事は腹部X線検査と大腸内視鏡程度です。

従って我々クリニックができる事は、患者さん一人ひとりの状況を見極めて自分たちができる事できない事を明確にし、クリニックで診る事ができないと判断した患者様を適切な医療機関に送る事と考えます。

そして大部分は機能性の病態であり、クリニックでも十分に対応できると考えます。

 

便秘を生じる疾患

機能性便秘症

『便秘の分類』の表の機能性の部分で、患者様がいわゆる『便秘』という部分を指します。最も頻度の高い領域であり、クリニックでの一番の治療対象となります。

機能性便秘といっても様々な原因が隠れている事がありますので、問診は非常に重要となります。

便秘型過敏性腸症候群

腹部膨満感が強く、排便で改善する事が多いです。

大腸がん

血便や体重減少、便の狭小化を伴う事があります。これらの症状がみられる場合には早めの受診が必要です。

腹部手術歴がある患者様の腸管蠕動障害(腸管の動きが悪い)

術後の癒着により、腸管の動きが低下し便秘となります。

腸閉塞

手術の影響やヘルニア嵌頓などにより、腸の一部が詰まることにより便が出なくなります。急激に症状が発生する事が多く、腹部膨満、嘔吐、腹痛を伴います。

腹部のレントゲンを撮る事で大抵の腸閉塞は診断することが可能です。

 

当院における便秘の診断

問診

便秘の診断では問診が重要であり、排便回数や排便困難感、残便感、腹痛の有無・程度を聞き、重症度を判定しています。

また便性状のスケールとしてブリストルスケールがあります。このスケールを利用して現在の状況の把握、今後目指すべき性状をご理解頂きます。

腹部X線検査

便秘の中には腸閉塞が隠れている可能性を十分に考慮する必要があります。特に症状が急激に増悪する場合には、まず最初に腹部X線検査を行い、腸閉塞が疑われれば適切な高次医療機関にご紹介いたします。

大腸カメラ検査

長期間便秘が持続する場合には、『便秘の分類』の表でいう、器質的疾患(主に大腸がんなど)がないことを確認する必要があります。

40歳以上で過去に大腸カメラ施行歴のない方や3年以上大腸カメラを行っていない患者様を中心に、一度は大腸カメラの施行を推奨させて頂きます。

 

当院における便秘の治療

大腸カメラ検査の検討

便秘である事自体が大腸がんの発症リスクである、という説があります。

40歳以上大腸カメラ施行歴がない以前に大腸ポリープを指摘されていた

などの場合には、まず大腸カメラの施行を推奨させて頂きます。

ただし、大腸カメラの施行には抵抗があり、『大腸カメラを勧められるのが嫌だから、

受診もしない』となってしまったら本末転倒です。

絶対に行わなければならない訳ではなく、必要に応じて行う検査ですので、あまり警戒

せずにまずは消化器外来を受診してみてください。

生活習慣の改善

① 適度な運動

適度に身体を動かすことで、腸管の蠕動運動(腸管の便を肛門側に押し出そうとする動き)が促進され、便秘の改善に繋がります。

② 食物繊維の摂取

腸管の蠕動は正常であっても、食物繊維が不足していると、便秘の原因になり得ます。
18~20g/日の摂取で症状が改善する場合が多いとされています。

一方で食物繊維摂取量の適正化を図っても症状の改善に乏しい方も一定数いらっしゃいます。その場合には薬物治療に移行します。

薬物療法

下剤はかなりの種類があり、症状に応じて選択していく必要があります。

基本的な考え方としては、便を軟らかくする薬をBaseとし、腸管の動きを促す薬でレスキュー(便を軟らかくする薬でも排便がない時の頓服)する、という方針です。

それは腸管の動きを促す薬には耐性(最初は効いていたが徐々に効きが悪くなる作用)が指摘されているためです。

当院で使う各種薬剤についてご紹介します。

① 便を柔らかくする薬
浸透圧性下剤:酸化マグネシウム

昔から使用されていた下剤で、市販薬として薬局にも置いてある薬です。
腸管内(主に大腸)に水分を引き付け、便を柔らかくして排便を促す作用があります。
副作用として腎機能障害が有名です。

上皮機能変容薬:ルビプロストン(商品名:アミティーザ)、リナクトチド(商品名:リンゼス)

小腸や腸粘膜上皮に作用し腸管内への水分分泌を増加して排便を促進する新しいタイプの薬剤です。
腎機能障害のリスクが少ない反面、患者様によってはかなりの下痢になる事や、嘔気が生じる事があります。

② 腸管蠕動促進薬
刺激性下剤:センノシド(プルゼニド)、ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)

大腸の動きを促進し、排便を促す薬剤です。作用が強く依存性があります。

③ 座薬、浣腸:新レシカルボン坐剤、グリセリン浣腸

坐剤:腸に刺激を与えることで詰まった便を排便させる作用があります。
浣腸:便と腸の滑りを良くしたり、腸を刺激することによるにより排便を促します。

④ 膨張性下剤:ポリカルボフィルカルシウム(商品名:ポリフル、コロネル)

下痢の時:便中の水分を吸収し、便回数も減らします。
便秘の時:腸管内に水分を維持させ、排便を促進します。
過敏性腸症候群の患者様は便秘と下痢を繰り返すパターンの人がおり、どちらにも効果を示すのがこのお薬です。

その他

便秘の原因に応じて必要な対処を行います。
例)大腸がんが便秘の原因であった場合
→提携の高次医療機関にご紹介させていただきます。

 

便秘の診療についてまとめさせて頂きました。

このページを読んでいただいた方であれば分かると思いますが最後にもう一度。

便秘は医療機関にかかるべき疾患』です。

便秘でお悩みの方はお気軽に当院の消化器外来へご受診下さい。

 

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