大腸がんになるとどのくらい体重減少するのか?痩せる理由も解説
「大腸がんになっていたとしたら、どのくらい体重減少する?」
「なぜがんができると痩せてしまうの?」
このような疑問を抱いていませんか。大腸がんだけでなく、がん全般において体重減少は起きることがあります。原因不明の体重減少は、大腸がんだけでなくなんらかの病気が隠れている恐れがあるため注意が必要です。
本記事では、大腸がんを発症すると「どのくらい体重減少するのか」をはじめとして以下を解説します。
- 大腸がんの進行により痩せる理由
- 体重減少による体への影響
- 大腸がんの検査方法
- 大腸がん以外で体重減少が見られる病気
- 体重減少以外に注意すべき症状
ダイエットをしているわけでもないのに「体重が減ってきた」方は、とくに参考にしてください。大腸がんの初期症状の詳細を知りたい方は「初期症状はない?大腸がんと気づいた7つのきっかけを症状別で解説」を参考にしましょう。
目次
大腸がんによる体重減少はどのくらいか?
体重減少は大腸がんだけでなく、がん全般に現れることがある症状です。理由もなく1ヵ月に1kg以上の体重減少が3ヵ月以上続く場合は、がんに限らず何らかの病気が隠れている恐れがあるため要注意です。
消化器系のがんによって体重減少の症状が現れている場合は、以下のような随伴症状も現れることがあります。
- 食欲不振
- 腹痛
- 吐き気
- 嘔吐
特に高齢者はがんの頻度が高いです。体重減少しか見られない場合でも、一度検査を受けてみたほうが良いでしょう。ダイエット中の体重減少は、がんの発見が遅れる恐れがあります。思った以上に体重が減少する場合は注意してください。
大腸がんの進行により痩せる理由
がんにおける体重減少は、悪液質が関係しています。がんにおける悪液質とは、全身の炎症により筋肉の減少などが起きる病態です。がん患者様の死因の1つでもあります。主な症状は以下の通りです。
- 筋肉の減少
- 食欲不振
- 脂肪の分解
これらの症状が現れることで、結果的に体重が減少してしまいます。発生機序は明確に解明されていませんが、がん細胞から分泌される炎症性サイトカインという炎症を促す物質が関係すると考えられています。
悪液質の状態になると「食べたいが食べることができない」状態になるといわれています。がん自体が栄養を吸収してしまうことも、体重減少を引き起こす原因です。
体重減少による体への影響
体重が減少しているということは、栄養状態も低下しています。栄養状態が低下すると、以下のようなさまざまなことに影響を及ぼします。
- 免疫機能が下がり感染症にかかりやすくなる
- 褥瘡(じょくそう:床ずれのこと)や傷の治癒が遅れる
- 筋肉の萎縮なども起きやすくなる
- 活力がなくなっていく
- 下半身や腹部がむくみやすくなる
- 脱水症状になりやすくなる
これらはがんの治療にも悪影響を及ぼします。低栄養状態にならないためにも、原因不明の体重減少が見られたら、速やかに検査を受けることが大切です。
大腸がんの検査方法
大腸がんを発見するための検査は主に以下の2つです。
- 便潜血検査
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
それぞれの詳細を解説します。
1.便潜血検査
便潜血検査とは、大腸などから出血が起きていないかを調べる検査です。便に血液が混じっているかどうかを調べて出血が起きていないかを判断します。自覚症状のない大腸がんを発見するために有効です。
陽性になると大腸がんだけでなく、以下のような病気も疑われます。
- 大腸ポリープ
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 虚血性腸炎
- 痔核
これらの病気を早期発見するためにも、陽性が出たら大腸内視鏡検査を受けましょう。また、便潜血検査は2日法(日を変えて便を2回採取する方法)のほうが正確であるため、こちらを受けることを推奨します。
2.大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
大腸内視鏡検査とは、小型カメラが取り付けられた管を肛門から挿入して大腸全体を調べる検査です。大腸がんの有無を判断するために必要な検査です。
病変が発見された際は、一部を採取して顕微鏡で確認したのちに確定診断します。大腸内視鏡検査は1回の検査では、がんが見つからないこともあるため、毎年受けることを推奨します。
大腸内視鏡検査は「痛そう」という理由で検査を受けないことが多いです。大腸がんは、年齢とともにリスクが高まるため、定期的に検診を受けることが推奨されています。当院では、鎮静剤を利用した痛みの少ない検査を提供しています。まずは事前診察を受けてみてください。
関連記事:大腸カメラ(内視鏡検査)が痛い人の3つの特徴|痛みを軽減する方法も!
大腸がん以外で体重減少が見られる病気
体重減少を引き起こす病気は非常に多岐にわたります。ここでは、以下の体重減少が起きる病気を解説します。
- 甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)
- 糖尿病
- うつ病
それぞれの詳細を解説します。
1.甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症とは、喉仏の下にある甲状腺という小さな臓器から分泌されるホルモンが過剰になる病気です。本来は全身の細胞に活力を与えるホルモンですが、過剰に分泌されると以下のような症状が現れます。
- 体重減少
- 不眠
- 疲れやすさ
- 動悸
- 多汗
- 下痢
- 生理の停止
- 手のふるえ
- 脱毛
「食べても食べても痩せてしまう」などの特徴的な症状が現れます。女性に多く見られる病気です。心房細動(しんぼうさいどう)やバセドウ病眼症などの合併症を引き起こす恐れがあるため、疑われる症状が現れたら早期に治療を始めることが大切です。
2.糖尿病
糖尿病はインスリンの分泌量の低下などにより、血糖値のコントロールが困難になる病気です。糖尿病においても以下のような流れで体重減少が生じます。
- 糖尿病によりインスリンの分泌量が低下する
- インスリンが不足することでブドウ糖が細胞内に取り込まれなくなる
- エネルギーが不足している状態になる
- 足りないエネルギーを補うために筋肉や脂肪を分解してしまう
- 筋肉や脂肪が分解されることで体重が減少する
体重減少を伴う糖尿病は、膵臓がんが隠れている恐れがあります。体重減少に加えて「喉がよく渇く」「トイレによく行く」「疲れやすい」などの症状が現れている方は、糖尿病を疑ってみましょう。
3.うつ病
うつ病は、気分の落ち込みが続く精神疾患です。うつ病を発症すると食欲低下が見られるため、体重が減少する恐れがあります。症状の現れ方は多岐にわたりますが、一例を挙げると以下のようなものがあります。
- 楽しみや喜びを感じられない
- 良いことが起きても気分が晴れない
- 性欲や睡眠欲が低下する
- 寝付きが悪い
- 睡眠中に何度も目が覚める
- 朝早く目が覚めてネガティブなことを考える
うつ病は自分では気づきにくい病気です。「憂うつな気分が続く」「何事も楽しくない」「自分に価値がないと感じる」などの症状が現れている場合は、精神科心療内科に相談してみましょう。
体重減少以外に注意すべき症状
大腸がんにおいて、体重減少以外に注意すべき症状は以下の通りです。
症状 | 症状が起きる理由 |
---|---|
血便 | がんからの出血により便に血が混ざる |
下痢 | がんにより腸の機能が妨げられて起こる |
便秘 | がんが腸の内側を狭くして便が通りづらくなるため起こる |
細い便 | がんが腸の内側を狭くするため起こる |
貧血 | がんからの出血が続くことで起こる |
腹痛 | がんが腸の内側を狭くして便などの内容物が腸を刺激するために起こる |
嘔吐 | 腸の内容物が溜まってくることで生じる |
体重減少のほかに、以上のいずれかの症状が現れている方は要注意です。症状に当てはまる方は消化器内科を受診しましょう。急に起こる便秘と大腸がんの関係性や、大腸がんの痛みについて知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:急に起こる便秘は大腸がんのサイン?放置するべきではない理由も解説
関連記事:【大腸がんはどこが痛む?】痛みの特徴や場所を詳細に解説
体重減少は大腸がんだけでなくがん全般に見られる
体重減少は大腸がんだけでなく、がん全般に見られる症状です。また原因不明の体重減少は大腸がんだけでなく、なんらかの病気が隠れている恐れがあります。
体重減少の他に腹痛、吐き気、血便、下痢、便秘などの症状が現れている場合は、大腸がんを疑ってください。これらの症状が現れているということは、がんがある程度進行している恐れもあります。気になる症状がある方は、消化器内科で検査を受けてみましょう。
【監修者】
かわぐち内科・内視鏡クリニック
川口 佑輔
2010年北里大学医学部卒業
日本内科学会認定医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本肝臓病学会専門医
【参照元】
・日本老年医学会「3.高齢者の大腸がんの特徴と治療」
・藤田医科大学 腫瘍医学研究センター「藤田医科大学 腫瘍医学研究センター」
・日本緩和医療学会「がん悪液質の概念と最近の動向」
・立命館大学「進行がんでみられる“痩せ”を引き起こす新たな免疫細胞を発見」
・日本内科学会「低栄養患者における感染症」
・公益財団法人長寿科学振興財団 「高齢者の低栄養」
・国立がん研究センター 中央病院「大腸がんとは」
・慶應義塾大学病院「甲状腺機能亢進症・別名:バセドウ病」
・厚生労働省「1 うつ病とは」