急に起こる便秘は大腸がんのサイン?放置するべきではない理由も解説
「急に起こる便秘は大腸がん?」
「その他に注意すべき症状はある?」
理由もなく急に便秘が起こると、このような不安を抱いてしまうでしょう。急な便秘は、大腸がんがある程度進行すると現れることがあります。便秘だけでは大腸がんと判断できませんが、その他にも気になる症状が現れている場合は、一度消化器内科で検査を受けてみてください。
本記事では、急に起こる便秘が大腸がんのサインであるかどうかをはじめとして、以下を解説します。
- 急な便秘を放置するべきではない理由
- 急に起こる便秘に対する検査
- 大腸がん以外で便秘を引き起こす病気
- 便秘以外で注意すべき症状
今までなかったのに「急に便秘になった」「便秘が長引く」など、気になる症状がある方は参考にしてください。大腸がんの初期症状や気づいたきっかけを知りたい方は「初期症状はない?大腸がんと気づいた7つのきっかけを症状別で解説」を参考にしましょう。
急に起こる便秘は大腸がんのサイン?
基本的に早期の大腸がんでは便秘などの症状は見られません。ある程度がんが進行すると、急な便秘や下痢などの排便習慣の変化が現れます。大腸がんにより便秘が起きる理由は、がんが大きくなることで腸の内側が狭くなり便が通りにくくなるためです。
頻度としては多くはないですが、実際に「便秘が続く」という理由で検査を受け、大腸がんが発見されたという事例もあります。
急な便秘を放置するべきではない理由
急に便秘が起きた場合は放置するべきではありません。腸の働きを悪くするなんらかの病気が隠れている恐れがあるためです。
また、便秘を放置すると病気を引き起こすこともあります。便秘が引き起こす典型的な病気は虚血性大腸炎(きょけつせいだいちょうえん)です。
虚血性大腸炎とは、便秘などなんらかの原因で大腸に十分な血液が流れなくなり、大腸に炎症が起きて血便や腹痛が現れる病気です。60歳以上の女性に多い病気ですが、若い人にも増えています。
適切に治療をすれば予後は良好ですが、重傷となると大腸が壊死(えし:細胞が壊れること)してしまい緊急手術が必要になります。このような病気を防ぐためにも、便秘は放置しないでおきましょう。
急に起こる便秘に対する検査
急に起こる便秘に対しては主に以下のような検査を実施します。
- 便潜血検査
- 画像検査
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
それぞれの詳細を解説します。
1.便潜血検査
便潜血検査とは、大腸や小腸のどこかに出血が起きていないかを確認する検査です。便に血液が含まれていないかを調べることで主に大腸の出血の有無を判断できます。
正確に出血の有無を判断するために、2日間に分けて便を採取する2日法を受けることを推奨します。陽性となった場合は、がんや潰瘍(かいよう)、ポリープ、腸炎など何らかの病気が隠れている恐れがあるため、大腸内視鏡検査による精密検査を受けましょう。
2.画像検査
一般的に画像検査は、大腸がんであると確定診断がされたあとに行われます。しかし、急な便秘に加えて腹痛や吐き気、嘔吐などが現れている場合は、腸閉塞の疑いがあるためレントゲンなどの画像検査を実施します。
大腸がんであると確定診断がされたあとは、大腸がんの進行状況や他の部位への転移状態を確認しなければなりません。そのために全身のCT検査や骨盤のMRI検査、腹部超音波検査など、さまざまな画像検査を実施します。
3.大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
大腸内視鏡検査は、大腸がんの有無を診断するために必要な検査です。内視鏡という先端に小型カメラが付いた細い管を肛門から挿入して大腸全体を詳細に観察します。
大腸がんを疑う病変が発見されたら、一部を採取して病理検査にて確定診断します。1回の検査ではがんが見つからない場合もあるため、大腸がんの検診は毎年受けてください。
当院では、鎮静剤を使用した痛みの少ない内視鏡検査を提供しています。気になる症状がある方は、まずは事前診察を受けてみましょう。
大腸がん以外で便秘を引き起こす病気
大腸がん以外で便秘を引き起こす恐れがある主な病気は以下の通りです。
- 過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)
- 腸閉塞(イレウス)
- 薬剤性便秘
それぞれの詳細を解説します。
1.過敏性腸症候群
過敏性腸症候群とは、大腸などの消化管に本来あるはずの機能が損なわれてしまう病気です。原因は解明されていませんが、ストレスや生活習慣が関係すると考えられています。主な症状は以下の通りです。
- 便秘
- 下痢
- 腹痛
- 腹部の不快感
症状は排便により改善したり、ストレスによって悪化したりします。生命に影響が少ない病気ですが、長期的に症状が続き改善したとしても再発する特徴があります。症状によって日常生活へ悪影響を及ぼすため適切な治療を受けましょう。
2.腸閉塞(イレウス)
腸閉塞(イレウス)は、特定の原因により腸の内容物の通過が障害される病気です。腸閉塞の原因は多岐にわたり、がん以外にも手術による癒着や炎症、ヘルニア、腹部への打撲などが原因になることがあります。主な症状は以下の通りです。
- 便秘
- 排便の停止
- 腹痛
- 嘔吐
- 排ガス(おならのこと)
腸閉塞により腸の血流が途絶えると、ショックという重篤な状態に移行する恐れがあります。腸閉塞を疑う症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
3.薬剤性便秘
薬の副作用として便秘が起きることがあります。便秘の副作用がある主な薬の種類は以下の通りです。
- 向精神薬
- 抗うつ剤
- 制酸剤
- カルシウム剤
- 医療用麻薬
これらを内服している方で便秘が起きている場合は、副作用によるものかもしれません。一度主治医に相談してみましょう。
急な便秘以外で注意すべき症状
便秘の他にも以下のような症状が現れている場合は要注意です。
症状 | 発生する理由 |
---|---|
血便 | がんからの出血により便に血が混じる。 |
下痢 | がんにより腸の働きが妨げられることで現れる。 |
便が細くなる | がんにより腸の内側が狭くなり、便の通り道が狭くなるため細くなる。 |
腹痛 | がんにより便の通りが妨げられ、腸の内側が刺激されることで生じる。 |
貧血 | がんからの出血が続くことにより生じる。 |
腹部にしこりが触れる | がんが大きくなりしこりとして触れるようになる。 |
大腸の左側にがんができると便秘が起きやすい傾向です。その他に便秘と一緒に現れやすい傾向の症状は血便、下痢、細い便などです。これらの症状が現れている方は、受診を検討してください。
また、便秘に引き続き、腹痛や吐き気、嘔吐などの症状が現れている場合は、腸閉塞が生じている恐れがあります。速やかに医療機関を受診しましょう。
大腸がんを見逃さないためにも急に起きた便秘は放置しない
大腸がんはある程度進行すると、急に便秘を引き起こすことがあります。その他にも、繰り返す下痢や血便、細い便、腹痛などが現れている場合は注意してください。
たとえ便秘しか現れていなくても、何らかの病気が隠れていたり、便秘が病気を引き起こしたりするリスクもあります。気になる症状がある方は、消化器内科の受診を検討しましょう。
【監修者】
かわぐち内科・内視鏡クリニック
川口 佑輔
- 2010年北里大学医学部卒業
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- 日本肝臓病学会専門医
【参照元】
・国立がん研究センター東病院「大腸がんについて」
・国立がん研究センター中央病院「大腸がんの症状について」
・兵庫医科大学病院「虚血性大腸炎」
・東京大学保健・健康推進本部保健センター「便潜血」
・北里大学北里研究所病院「腸閉塞」
・慶應義塾大学病院「過敏性腸症候群(IBS)」
・国立がん研究センター東病院「大腸について」
・特定機能病院 日本大学医学部附属 板橋病院「腸閉塞」
・一般社団法人 愛知県薬剤師会「5.便秘」
・一般社団法人 日本内科学会「便秘症の診断と治療―最新の進歩」