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台東区浅草のかわぐち内科・内視鏡クリニックの院長ブログ

院長ブログ
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下痢と便秘を繰り返す理由とは?

 

「忙しい人向け|1分要約スライド」

 

通勤電車や大事な会議の前になると、決まってお腹が痛くなる。数日間のつらい便秘の後に、今度は急な下痢に襲われる。そんな繰り返すお腹の不調を、「いつものことだから」「体質だから」と諦めてしまっていませんか?

その不調の正体は、脳が感じたストレスが腸に影響を与える「脳腸相関」の乱れかもしれません。実は日本人の約10人に1人が、こうした症状を伴う「過敏性腸症候群(IBS)」に悩んでいると言われています。

この記事では、なぜ下痢と便秘が繰り返されるのか、そのメカニズムを詳しく解説します。症状の裏に隠れた病気の可能性や、専門的な治療法についても触れていきますので、長年の悩みと向き合うきっかけにしてください。

目次

繰り返す下痢と便秘の正体は「脳腸相関」の乱れ

通勤電車で急にお腹が痛くなったり、便秘で数日苦しんだ後に突然下痢になったり。
このような繰り返すお腹の不調は、多くの方が経験する辛い症状です。

これらの症状は、単なる「お腹が弱い」体質の問題だけではありません。
脳と腸が連携して働く「脳腸相関」という仕組みの乱れが原因かもしれません。

また、症状の裏には過敏性腸症候群(IBS)だけでなく、大腸がんや潰瘍性大腸炎といった病気が隠れている可能性もあります。
まずは、なぜお腹の不調が繰り返されるのか、その仕組みから見ていきましょう。

なぜストレスがお腹の不調を招くのか?脳と腸の密接な関係

私たちの脳と腸は、「自律神経」という連絡通路で常につながっています。
そして、互いに情報を交換し、影響を与え合っています。
この深いつながりを「脳腸相関」と呼びます。

例えば、大事な会議の前に緊張するとお腹が痛くなることがあります。
これは脳が感じたストレス信号が、自律神経を通じて瞬時に腸へ伝わるためです。
その結果、腸の動きが異常になり、腹痛や下痢を引き起こします。

自律神経は、私たちの意思とは関係なく内臓の働きを調整する神経です。
活動時に働く「交感神経」と、休息時に働く「副交感神経」の2つがあります。
この2つの神経がバランスを取ることで、腸は正常な動きを保っています。

しかし、ストレスや睡眠不足などで脳が疲れると、自律神経のバランスが崩れます。
その結果、腸の動き(蠕動運動)に異常が生じてしまうのです。

脳の状態 自律神経の反応 腸の動き(蠕動運動) 現れやすい症状
強いプレッシャーや緊張 交感神経が過剰に働く 動きが激しくなりすぎる 腹痛、差し込むような痛み、急な下痢
慢性的な悩みや不安 副交感神経の働きが乱れる 動きが鈍くなる 便秘、お腹の張り、残便感
睡眠不足や疲労の蓄積 自律神経全体の機能が低下 動きが不安定になる 下痢と便秘を交互に繰り返す

このように、脳が受けたストレスは自律神経を介して腸に直接影響します。
腸の動きが過剰になれば下痢、鈍くなれば便秘という形で症状に現れるのです。

腸が痛みを感じやすくなる「内臓知覚過敏」とは

過敏性腸症候群(IBS)と診断される方の多くは、「内臓知覚過敏」という状態にあります。
これは、腸の神経がとてもデリケートになり、痛みを感じやすくなっている状態です。

健康な人であれば何とも感じない、ごくわずかな刺激に対しても、強い腹痛や不快感として脳に伝わってしまいます。

例えば、以下のような日常的な腸の動きでも、痛みを感じやすくなります。

  • 便やガスが腸の中を移動する動き
  • 食事をした後に、腸が少し伸び縮みする動き
  • 健康な人でも溜まる程度の、少量のガス

内臓知覚過敏があると、少し腸が動いただけでも「キリキリ」とした痛みを感じます。
また、お腹にガスが溜まった時の苦しさも、人一倍強く感じてしまいます。
ストレスや腸内環境の悪化が、腸の神経を過敏にさせることが原因と考えられています。

あなたの腸は敏感?内臓知覚過敏セルフチェック

ご自身の症状と照らし合わせてみてください。

食事を始めると、すぐにお腹がゴロゴロしたり痛くなったりする

便意を感じると、我慢できないほどの強い腹痛を伴うことが多い

お腹の音やガスの動きが、気持ち悪く感じられる

緊張したり、不安になったりすると、お腹の痛みがひどくなる

 いつもお腹が張っていて、ズボンがきつく感じる

これらの項目に多く当てはまる場合、腸が敏感になっている可能性があります。

感染性胃腸炎が引き金になることも【感染後IBSについて】

ウイルスや細菌による感染性胃腸炎、いわゆる「お腹の風邪」にかかったことはありますか?
通常は原因菌がいなくなれば症状は治まります。
しかし、胃腸炎が治った後も、下痢や腹痛などの不快な症状が続いてしまうことがあります。
これを「感染後 過敏性腸症候群(感染後IBS)」と呼びます。

研究によれば、感染性胃腸炎にかかった方の約1割が、感染後IBSに移行すると報告されています。
胃腸炎によって腸の粘膜がダメージを受け、腸内細菌のバランスが崩れることがきっかけです。

健康な人であれば、腸の粘膜は自然に修復されていきます。
しかし、一部の人では、目に見えないほどのわずかな炎症が腸に残ってしまいます。
この微細な炎症が刺激となり、腸の神経を過敏な状態(内臓知覚過敏)にしてしまうのです。

感染後IBS発症の仕組み

  1. 感染症の発症
    ウイルスや細菌に感染し、激しい下痢や嘔吐が起こる。
  2. 腸内環境の悪化
    腸の粘膜が傷つき、善玉菌と悪玉菌のバランスが大きく崩れる。
  3. 微細な炎症の持続
    感染症が治った後も、腸の粘膜に軽度の炎症が残ってしまう。
  4. 内臓知覚過敏の発症
    持続する炎症が腸の神経を常に刺激し、過敏な状態にする。
  5. IBS症状の慢性化
    下痢や腹痛、お腹の張りといった症状が日常的に続くようになる。

「お腹の風邪がいつまでも治らない」と感じている方は、この感染後IBSの可能性も考えられます。

遺伝や性差は関係する?過敏性腸症候群になりやすい人の特徴

過敏性腸症候群(IBS)の発症には、ストレスなどの外的要因だけでなく、生まれ持った体質も関わっています。

遺伝的な要因

IBSという病気そのものが、親から子へ直接遺伝することはありません。
しかし、ストレスの感じやすさや、腸の動き方のクセといった「IBSになりやすい体質」は、ご家族で似る傾向があります。
ご両親や兄弟に同じような症状の方がいる場合、体質的な影響も考えられます。

性差による症状の傾向

IBSは、性別によって症状の現れ方に違いが見られます。
臨床現場でも、男女で訴える症状のタイプが異なることが多いです。

  症状タイプ 特徴
女性の場合 便秘型(IBS-C) 女性ホルモン(特に黄体ホルモン)は、腸の蠕動運動を抑える働きがあります。そのため、月経周期によって便秘になりやすい傾向があります。
男性の場合 下痢型(IBS-D) ストレスを受けた際に、腸の動きが過剰に活発になりやすい傾向があるといわれています。通勤電車など、特定の状況で症状が悪化することが多いです。

性格的な特徴

どのような性格の人がIBSになりやすいか、はっきりと証明されているわけではありません。
しかし、日々の診療の中では、真面目で責任感の強い方に多い印象があります。

  • 何事も完璧にこなさないと気が済まない
  • 物事を深く考え込み、心配しやすい
  • 周りの人に気を使い、自分の意見を我慢しがち
  • ストレスをうまく発散できず、一人で抱え込んでしまう

もちろん、これらの特徴があるからといって、必ずIBSになるわけではありません。
ご自身の性格の傾向を知ることは、ストレスとの上手な付き合い方を見つけるための大切な第一歩になるでしょう。

IBS診断の最前線 ローマⅣ基準と重篤疾患の除外診断

「下痢と便秘を繰り返すけれど、ただの体質だろうか」
「何か重い病気が隠れているのではないか」

終わりの見えないお腹の不調に、多くの方がこのような不安を抱えています。
その症状は、専門的な診断を受けることで、原因がはっきりするかもしれません。

過敏性腸症候群(IBS)の診断は、まず大腸がんなどの病気がないかを確認します。
その上で、国際的な診断基準を用いて慎重に進められます。
ここでは、IBSの診断がどのように行われるのか、その最前線について詳しく解説します。

過敏性腸症候群と診断されるための国際的な基準「ローマⅣ」を解説

過敏性腸症候群(IBS)の診断には、「ローマ基準」という世界共通の基準が用いられます。
現在使われているのは、2016年に改訂された「ローマⅣ基準」です。
この基準は、画像検査などではなく、患者さんの症状に基づいて診断を下すためのものです。
そのため、医師が症状について詳しくお話を伺う「問診」が非常に重要になります。

【過敏性腸症候群(IBS)の国際的な診断基準:ローマⅣ】

診断のポイント 具体的な内容
症状の頻度 最近3ヶ月の間に、週に1回以上お腹の痛みが繰り返し起こる
お腹の痛みと
排便の関連
お腹の痛みが、以下の項目のうち2つ以上と関連する
1. 排便によって痛みが良くなる、または悪化する
2. 痛みが始まった時期と、排便の回数の変化が関連する
3. 痛みが始まった時期と、便の形(硬さ)の変化が関連する
症状の期間 これらの症状が、診断の6ヶ月以上前から始まっている

これらの基準は、お腹の痛みが「排便」と密接に関わっていることを重視しています。
基準に当てはまり、さらに他の病気の可能性がない場合に、IBSと診断されます。
ご自身の症状を医師に正確に伝えることが、正しい診断への第一歩となります。

なぜ血液検査や大腸内視鏡検査が必要なのか?

「お腹の症状なのに、なぜ血液検査や大腸カメラまで?」と疑問に思う方もいるでしょう。
実は、IBSの診断で最も大切なのは、「他の病気ではない」ことを確認することです。
これを「除外診断」と呼び、重大な病気の可能性を一つひとつ取り除いていく作業です。

IBSの症状は、大腸がんや炎症性腸疾患といった病気の症状と非常に似ています。
そのため、症状だけで判断するのは難しく、危険も伴います。
各種検査には、それぞれ重要な目的があります。

検査の種類 目的とわかること
血液検査 ・体内で炎症が起きていないか(炎症性腸疾患の可能性)
・貧血がないか(消化管からの出血や大腸がんの可能性)
・全身の栄養状態はどうか
大腸内視鏡検査
(大腸カメラ)
・大腸がんやポリープがないか、腸の中を直接目で見て確認する
・潰瘍性大腸炎やクローン病などの特徴的な炎症がないか調べる
・症状の原因となる形の異常がないことを確かめる最も重要な検査

これらの検査で異常が見つからないことを確認した上で、初めてIBSの診断に進みます。
つらい症状の原因が、命に関わる病気ではないとわかるだけでも、大きな安心につながります。

あなたのIBSタイプを特定する重要性【混合型・下痢型・便秘型】

過敏性腸症候群(IBS)は、主に便の状態によっていくつかのタイプに分類されます。
ご自身の症状がどのタイプかを知ることは、治療法を決める上で非常に重要です。
なぜなら、タイプによって効果が期待できる薬や食事のアドバイスが異なるからです。
タイプを正確に特定することが、症状改善への「治療のスタートライン」となります。

IBSのタイプ 便の状態の基準(症状がある日のうち) 主な症状の傾向
下痢型 (IBS-D) 軟便や水様便が25%以上あり、硬い便は25%未満。 ・急な腹痛と便意に襲われる
・通勤中など特定の状況で不安になる
・男性に比較的多い
便秘型 (IBS-C) 硬い便やコロコロ便が25%以上あり、軟便は25%未満。 ・お腹の張りが強く、残便感が続く
・強くいきまないと便が出ない
・女性に比較的多い
混合型 (IBS-M) 硬い便と軟便(水様便)が、それぞれ25%以上みられる。 ・下痢と便秘を数日おきに繰り返す
・症状が予測しづらく、対応が難しい
分類不能型 (IBS-U) 上記のいずれの基準にもはっきりと当てはまらない。

医師は問診を通して、患者さんの便の硬さや形、頻度などを詳しくお聞きします。
それによって、どのタイプに当てはまるかを判断し、最適な治療計画を立てていきます。

自己判断は危険!似た症状を持つ他の消化器疾患との違い

下痢と便秘を繰り返すからといって、「自分はきっとIBSだ」と決めつけるのは危険です。
前述のとおり、背景に命に関わる病気が隠れている可能性があるからです。
特に注意が必要な病気との違いを知っておきましょう。

病名 IBSとの主な違い・注意すべき「警告症状(アラームサイン)」
大腸がん ・血便(便に血が混じる、便器が赤くなる)
・便が急に細くなる
・原因不明の体重減少、貧血
・大腸の出口付近のがんでは便秘と下痢を繰り返しやすくなる
炎症性腸疾患
(潰瘍性大腸炎など)
・血便や、ネバネバした粘液が混じった便
・持続する腹痛、発熱、体重減少
・関節の痛みや皮膚の異常など、お腹以外の症状を伴うことがある
感染性腸炎 ・突然の発熱や嘔吐を伴うことが多い
・生ものを食べた後など、原因に心当たりがある場合がある

これらの症状、特に血便、体重減少、発熱は「警告症状(アラームサイン)」と呼ばれます。
一つでも当てはまる場合は、自己判断で市販薬を使い続けたりせず、必ず消化器内科を受診してください。
専門医による正確な診断が、適切な治療と安心への最短ルートです。

専門医と取り組む過敏性腸症候群のオーダーメイド治療

市販薬を試しても良くならないお腹の不調は、日々の生活の質を大きく下げます。
急な腹痛や便意に振り回され、外出が怖くなってしまう方も少なくありません。

過敏性腸症候群(IBS)の治療は、すべての人に同じ方法が効くわけではありません。
症状の現れ方や原因、生活スタイルは一人ひとり異なるためです。
だからこそ、専門医と一緒にあなただけの「オーダーメイド治療」を見つけることが重要です。

日本では約10人に1人がIBSに悩んでいると言われ、決して珍しい病気ではありません。
生活習慣や食事、お悩みの症状、心理的な側面まで総合的に考えます。
あなたに合った治療計画を一緒に立てていきましょう。

食事で改善を目指す「低FODMAP(フォドマップ)食」の具体的な進め方

特定の食べ物でお腹の調子が悪くなる原因の一つに、「FODMAP」が考えられます。
FODMAPとは、小腸で吸収されにくい特定の糖質の総称です。
これらが大腸に届くと腸内細菌によって発酵し、ガスが発生します。
その結果、お腹の張りや腹痛、下痢などの症状を引き起こすのです。

このFODMAPを一時的に制限するのが「低FODMAP食」という食事療法です。
自己判断で極端な食事制限を行うと、栄養が偏る危険があります。
必ず医師や管理栄養士の指導のもとで、以下の3ステップで進めましょう。

  1. 除去期(3〜6週間)
    FODMAPを多く含む食品をすべて控え、症状が改善するかを観察します。
  2. チャレンジ期
    症状が落ち着いたら、高FODMAP食を一つずつ少量から試します。
    どの食品が、どのくらいの量で症状を引き起こすのかを特定する大切な期間です。
  3. 維持期
    チャレンジ期で見つかった、ご自身の体に合わない食品だけを避けます。
    それ以外の食品は食事に戻し、栄養バランスの取れた食事を続けます。
  高FODMAP食(控える食品の例) 低FODMAP食(食べてよい食品の例)
穀物類 小麦、ライ麦(パン、パスタ、ラーメン、うどん) 米、玄米、米粉パン、オートミール、そば(十割)
乳製品 牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム、プロセスチーズ 乳糖を含まない牛乳、豆乳、アーモンドミルク、木綿豆腐
野菜類 玉ねぎ、にんにく、ねぎ類、ごぼう、きのこ類、豆類 トマト、きゅうり、なす、ほうれん草、にんじん、ピーマン
果物類 りんご、なし、すいか、もも、柿、マンゴー バナナ、いちご、ぶどう、オレンジ、キウイ、メロン
その他 はちみつ、オリゴ糖、カシューナッツ、ピスタチオ 砂糖、メープルシロップ、ピーナッツ、くるみ

この食事療法は、合わない食品を一生食べられなくするものではありません。
ご自身の腸のクセを知り、上手に食事をコントロールするための方法です。

市販薬で効果がない場合に処方される治療薬

市販薬で症状が改善しない場合、医療機関ではより専門的な薬による治療を行います。
医師は症状のタイプ(下痢型、便秘型など)や原因を診断した上で処方します。
医療機関で処方される薬は、市販薬にはない作用を持つものもあります。

薬の種類 どのような働きをするか 主な対象となる症状
消化管運動調整薬 腸の動きが活発すぎたり、鈍かったりする状態を正常に近づけます。 腹痛、下痢、便秘
高分子重合体 腸内の水分を吸収または保持し、便の硬さをちょうど良い状態に調整します。 下痢、便秘
プロバイオティクス 乳酸菌や酪酸菌などを補給し、乱れた腸内細菌のバランスを整えます。 腹部膨満感、下痢、便秘
セロトニン5-HT3
受容体拮抗薬
脳からのストレス信号を腸に伝えにくくし、知覚過敏を抑えます。急な下痢や腹痛に効果が期待できます。 下痢、腹痛
粘膜上皮機能変容薬 腸管からの水分分泌を促したり、吸収を調整したりして便通を改善します。 便秘、腹痛
漢方薬 全身のバランスを整える考え方で、体質に合った薬を選び、心身両面から症状を和らげます。 腹痛、腹部膨満感、冷え
抗不安薬・抗うつ薬 症状の背景にある強い不安やストレスに働きかけ、脳のレベルから痛みの感じ方を緩和します。 不安、うつ、腹痛

これらの薬を単独で使ったり、組み合わせたりして治療を進めます。
薬の効果には個人差があるため、医師と相談しながら最適な処方を見つけていきます。

薬物療法だけではない、運動療法と心理的アプローチの重要性

薬はつらい症状を和らげるのに有効ですが、IBSの根本的な改善には多角的な視点が必要です。
特に運動とストレス対策は、薬と同じくらい重要な治療の柱と言えます。

無理なく続ける運動療法

適度な運動は自律神経のバランスを整え、腸の働きを安定させます。
また、気分転換になりストレス解消にもつながります。
大切なのは、激しい運動ではなく、心地よく続けられることです。

おすすめの運動

  • ウォーキング、軽いジョギング、サイクリングなどの有酸素運動
  • ヨガやストレッチ

運動の目安

1日30分程度、「少し汗ばむかな」と感じるくらいの強さ
週に3〜5日を目標に、まずはできる日から始めてみましょう

心と体をゆるめる心理的アプローチ

脳と腸は「脳腸相関」によって密接につながっています。
脳が感じたストレスは、すぐに腸に伝わり不調を引き起こします。
意識的にリラックスする時間を作り、心と体を休ませることが症状緩和につながります。

今日からできるリラックス法

  • 腹式呼吸(ゆっくり鼻から吸い、口から吐く)
  • ぬるめのお風呂にゆっくりつかる
  • 音楽鑑賞や読書など、趣味に没頭する時間を作る

不安が非常に強い場合は、認知行動療法などのカウンセリングも有効な選択肢です。

再発を防ぎ、長期的に症状と上手に付き合うためのヒント

過敏性腸症候群は、一度良くなっても再発しやすい特徴があります。
治療で症状が落ち着いた後も、良い状態を維持する工夫が大切です。
「治す」ことだけでなく、「上手に付き合う」という視点を持ちましょう。

1. 生活リズムを整える
規則正しい生活は、自律神経のバランスを保つための土台です。

十分な睡眠
睡眠不足は脳を疲れさせ、腸の働きを乱します。
毎日なるべく同じ時間に寝て、同じ時間に起きることを心がけましょう。

決まった時間の食事
食事のリズムが整うと、腸の運動も安定しやすくなります。
朝食を抜かず、3食をゆっくりよく噛んで食べるのが理想です。

2. 症状日記をつける
ご自身の症状の傾向を客観的に把握するために、日記は非常に有効です。

記録する内容の例

  • その日の便の状態(形、回数)
  • 腹痛やお腹の張りの有無、強さ
  • 食べたものや飲んだもの
  • ストレスに感じた出来事
  • 睡眠時間、服薬状況

この記録は、医師が治療方針を考える上でも大変貴重な情報になります。

3. 完璧を目指さない
「また症状が出てしまった」と落ち込む必要はありません。
IBSの症状には波があるのが当たり前です。
少し調子が悪くても自分を責めず、「今日は無理せず休もう」と受け入れる気持ちが大切です。
つらい症状が続く場合は、一人で抱え込まず、いつでも専門医にご相談ください。

下痢と便秘Q&A

下痢と便秘を繰り返す症状について、患者さんからよくいただく5つのご質問にお答えします。

Q1. ストレスや緊張を感じると、決まってお腹が痛くなるのはなぜですか?

A1. 脳と腸が「自律神経」という連絡通路で深くつながっているためです。
この関係を「脳腸相関」と呼びます。

脳が感じたストレスの信号は、すぐに自律神経を通じて腸に伝わります。
その結果、腸の動き(蠕動運動)のバランスが崩れてしまうのです。

脳の状態 自律神経の反応 腸の動きの変化 現れやすい症状
緊張・不安 交感神経が過剰に働く 動きが激しくなりすぎる 差し込むような腹痛・下痢
慢性的な悩み 副交感神経の働きが乱れる 動きが鈍くなる 便秘・お腹の張り

このように、脳の興奮が直接腸の異常な動きを引き起こします。
症状が長引く場合は、過敏性腸症候群(IBS)の可能性も考えられます。

Q2. 市販の整腸剤を飲んでも良くなりません。病院に行くべきでしょうか?

A2. はい、一度専門医への受診をお勧めします。
市販薬を1週間ほど試しても症状が改善しない場合は、受診の目安です。

市販薬は一時的な症状緩和には役立つことがあります。
しかし、症状の根本的な原因を特定することはできません。
自己判断で薬を使い続けると、背景にある病気の発見が遅れる危険性があります。

特に、症状が徐々に悪化している場合は注意が必要です。
ご自身の症状に合った適切な治療を受けるためにも、一度ご相談ください。

Q3. 下痢と便秘を繰り返すのは、大腸がんが心配です。

A3. 確かに、大腸がんの症状として下痢と便秘を繰り返すことがあります。
がんで腸の中が狭くなると、便が通りにくくなり便秘になります。
その後、たまった便を排出しようと腸が過剰に動くことで下痢が起こるのです。

しかし、多くは過敏性腸症候群(IBS)などが原因です。
自己判断はせず、以下の「警告症状」がないか確認してみてください。

症状 過敏性腸症候群(IBS) 大腸がんの可能性を疑う場合
血便 基本的にない 便に血が混じる、便器が赤くなる
体重 変わらないことが多い 原因不明の体重減少がある
痛み 排便すると軽快することが多い 排便に関係なく痛みが続く
その他 発熱、貧血を指摘された

一つでも警告症状に当てはまる場合は、必ず消化器内科を受診してください。
特に40歳以上で一度も大腸の検査を受けたことがない方は、検査を強くお勧めします。

Q4. 病院ではどのような検査をしますか?大腸カメラは必須ですか?

A4. まずは詳しい問診で症状をお伺いし、必要に応じて検査を行います。
大腸カメラは、症状の原因を特定するために非常に重要な検査です。

  1. 問診
     症状の期間や頻度、生活習慣などについて詳しくお聞きします。
  2. 血液検査・便検査
     体内の炎症や貧血の有無、便に血が混じっていないかなどを調べます。
  3. 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
     大腸の中を直接観察し、がんやポリープ、炎症がないかを確認します。
     症状の原因が命に関わる病気ではないと確かめることが、一番の目的です。

検査に対して「痛い」「苦しい」といった不安があるかもしれません。
しかし、鎮静剤を使えば、うとうとと眠っている間に楽に検査を受けられます。

Q5. 検査で「異常なし」と言われましたが、症状は続いています。

A5. 検査で異常が見つからないのに症状が続く場合、過敏性腸症候群(IBS)と診断されることが多くあります。
IBSは、日本人の約10人に1人が悩んでいると言われるほど、決して珍しくない病気です。

「異常なし」という診断は、治療のゴールではなくスタートラインです。
命に関わる病気がないと分かった上で、安心して症状を和らげる治療に進めます。

治療法は、生活習慣の改善、食事療法、お薬など様々です。
一人で抱え込まず、専門医と一緒にあなたに合った治療法を見つけていきましょう。

まとめ

今回は、下痢と便秘を繰り返す原因と、その対処法について詳しく解説しました。
通勤電車での急な腹痛や、予測できないお腹の不調は本当につらいものですよね。
これらの症状の多くは、ストレスが引き金となる「脳腸相関」の乱れが関係しており、その背景には過敏性腸症候群(IBS)が隠れているかもしれません。
しかし、「いつものことだから」と自己判断で放置するのは危険です。まれに大腸がんなどの病気が原因のこともあります。まずは専門医に相談し、検査で原因をはっきりさせることが、安心と適切な治療への第一歩です。
IBSと診断されても、食事や運動、お薬など、あなたに合った治療法は必ず見つかります。一人で抱え込まず、まずは気軽に消化器内科のドアを叩いてみてください。

参考文献

  • 過敏性腸症候群(IBS)ガイドライン
  • 便秘と下痢を繰り返す原因や診断と治療ガイドライン
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