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逆流性食道炎について徹底解説

[2025.05.27]

「胸やけ」「胃酸の逆流」「げっぷ」…これらの症状、心当たりはありませんか?もしかしたら、それは日本人全体の10~20%が経験すると言われる「逆流性食道炎」のサインかもしれません。

実はこの病気、放置すると食道狭窄やバレット食道、さらには食道がんといった深刻な合併症を引き起こすリスクも潜んでいます。

睡眠障害との関連性も指摘されており、日常生活への影響も無視できません。

この記事では、逆流性食道炎の症状・原因・診断から、効果的な治療法、そして再発予防策まで、専門家の視点から徹底解説いたします。

ご自身の健康を守るためにも、ぜひ一度、目を通してみてください。

逆流性食道炎の症状・原因・診断

「なんとなく胸やけがする」「胃酸がこみ上げてくる」「げっぷがよく出る」…こうした症状、放置していませんか?

これらの症状は、逆流性食道炎のサインかもしれません。逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで、食道の粘膜に炎症を起こす病気です。

実は、逆流性食道炎は、日本人全体の約10~20%が経験すると言われているほど、決して珍しい病気ではありません。

放っておくと、食道狭窄やバレット食道といった合併症を引き起こす可能性も。

また、逆流性食道炎は、睡眠障害との関連性も指摘されており、日常生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

この章では、逆流性食道炎の様々な症状や原因、そしてどのように診断されるのかについて、消化器内科専門医の立場から詳しく解説していきます。

ご自身の症状と照らし合わせながら、ぜひ読んでみてください。

胸やけ、呑酸、げっぷなどの典型的な症状

逆流性食道炎の代表的な症状は、以下のものが挙げられます。

  • 胸やけ
  • 呑酸(どんさん)
  • げっぷ

「胸やけ」は、みぞおちのあたりから胸にかけて、焼けるような、あるいは熱っぽい、不快な感覚がある症状です。

まるで、胸の中に小さな火種があるように感じる人もいれば、締め付けられるような感覚を覚える人もいます。症状の感じ方は人それぞれです。

「呑酸」は、胃酸が食道に逆流してきて、口の中が酸っぱくなる症状です。

時に、胃液や食べたものが口まで上がってくることもあります。

「げっぷ」は、胃の中の空気が口から出る現象で、逆流性食道炎の場合、胃酸や食べ物が一緒に逆流してくることがあります。

これらの症状は、食後や前かがみになった時、あるいは横になった時に強くなる傾向があります。

食道以外の症状:咳、喘息、声枯れなど

逆流性食道炎は、食道以外の様々な症状を引き起こすことがあります。

具体的には、以下のものがあります。

  • 喘息
  • 声枯れ

逆流した胃酸が気管や喉を刺激することで、これらの症状が出現します。

また、逆流性食道炎によって、胸の痛みや違和感、喉の異物感、さらに、耳の痛み、鼻詰まりといった症状が出ることもあります。

これらの症状は、逆流性食道炎以外の病気でも起こり得るため、見逃さずに医療機関を受診し、正しい診断を受けることが重要です。

逆流性食道炎の原因:食生活、ストレス、肥満など

逆流性食道炎の原因は多岐に渡りますが、主に、食生活の乱れ、ストレス、肥満、加齢などが挙げられます。

脂肪分の多い食事や刺激物、過食、飲酒、喫煙などは、胃酸の分泌を促進したり、食道の防御機能を低下させたりするため、逆流性食道炎のリスクを高めます。

また、ストレスは自律神経のバランスを崩し、胃酸の分泌を増加させる可能性があります。

肥満は、腹圧を高め、胃酸が逆流しやすくなる原因となります。

加齢とともに、食道と胃のつなぎ目にある下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)の機能が低下することも、逆流性食道炎のリスクを高める一因です。

下部食道括約筋は、通常は胃の内容物が食道へ逆流するのを防ぐ役割を担っています。

この括約筋が加齢などによって弱くなると、胃酸が逆流を起こしやすくなってしまいます。

胃カメラ検査:検査方法と費用、苦痛軽減のための工夫

逆流性食道炎の診断には、胃カメラ検査が有効です。胃カメラ検査は、正式には「上部消化管内視鏡検査」と呼ばれ、口または鼻から内視鏡を挿入し、食道、胃、十二指腸の粘膜の状態を観察する検査です。

食道の粘膜に炎症やびらん(ただれ:粘膜が浅く欠損した状態)が見られる場合、逆流性食道炎と診断されます。

胃カメラ検査では、炎症の程度を詳しく確認することができ、逆流性食道炎の重症度を評価する上でも重要な検査です。

検査費用は医療機関や検査方法によって異なりますが、健康保険が適用されるため、3割負担の方で5,000円~12,000円程度が目安となります。

検査時の苦痛を軽減するために、鎮静剤を使用したり、経鼻内視鏡を選択したりすることも可能ですので、ご希望があれば医師にご相談ください。

胃カメラ以外の検査:24時間pHモニタリング検査など(当院ではできません)

胃カメラ検査以外にも、24時間pHモニタリング検査などがあります。これは、小型のセンサーを食道に挿入し、24時間かけて食道のpH(ペーハー:酸性度)を測定する検査です。

pHは、物質の酸性・アルカリ性の度合いを示す指標で、0から14までの数値で表されます。pH7が中性で、それより小さい値は酸性、大きい値はアルカリ性を示します。

逆流性食道炎では、胃酸が逆流することで食道のpHが低下するため、この検査によって酸逆流の頻度や程度を客観的に評価することができます。

胃カメラ検査で異常が見つからないにもかかわらず、逆流性食道炎の症状が疑われる場合に、この検査が行われることがあります。

近年注目されている検査として、食道内圧検査があります。これは、食道の運動機能を調べる検査です。

具体的には、下部食道括約筋の圧力や食道の蠕動(ぜんどう)運動などを測定します。蠕動運動とは、食べ物を胃に送り込むための、食道の収縮運動のことです。

この検査によって、食道運動機能の異常が逆流性食道炎の原因となっているかどうかを調べることができます。

逆流性食道炎の治療法3選と予防策

胸やけや呑酸など、逆流性食道炎の症状に悩まされている方は、決して少なくありません。つらい症状を我慢し続けると、日常生活にも支障をきたす可能性があります。適切な治療を受けることで、症状を改善し、快適な生活を取り戻すことができるのです。

この章では、逆流性食道炎の主な治療法3選と、再発を防ぐための予防策について、消化器内科専門医の立場から詳しく解説します。ご自身の症状と照らし合わせながら、ぜひ読んでみてください。

薬物療法:PPI、P-CAB、制酸剤など

薬物療法は、逆流性食道炎の治療における中心的な役割を担っています。胃酸の分泌を抑えたり中和したりすることで、食道の炎症を鎮め、症状を和らげます。主な薬には、PPI、P-CAB、制酸剤などがあります。それぞれの薬の特徴を理解し、医師と相談しながら最適な薬を選択することが重要です。

  • PPI(プロトンポンプ阻害薬): 胃酸の分泌を強力に抑える薬です。胃壁細胞にあるプロトンポンプという酵素の働きを阻害することで、胃酸の分泌を抑制します。症状が強い場合や、他の治療法で効果がない場合に用いられます。オメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾールなどが代表的な薬です。

  • P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー): PPIと同様に胃酸の分泌を抑える薬ですが、作用機序が異なります。P-CABは、カリウムイオンと競合的に結合することで、胃酸の分泌を抑制します。即効性があり、効果が持続しやすいという特徴があります。タケキャブ(一般名:ボノプラザン)が代表的な薬です。

生活習慣改善:食事療法、禁煙、適度な運動など

生活習慣の改善は、逆流性食道炎の治療効果を高めるだけでなく、再発予防にも非常に重要です。食生活の見直し、禁煙、適度な運動などを日常生活に取り入れ、健康的な生活習慣を維持するよう心がけましょう。

  • 食事療法: 脂肪分の多い食事、カフェイン、アルコール、香辛料、炭酸飲料などは、胃酸の分泌を促進したり、食道の炎症を悪化させたりする可能性があります。これらの食品は控えめにし、バランスの取れた食事を心がけましょう。また、就寝前の食事は避け、腹八分目を心がけることも大切です。

  • 禁煙: 喫煙は、食道の防御機能を低下させ、逆流性食道炎の症状を悪化させるため、禁煙を強くお勧めします。

  • 適度な運動: 適度な運動は、ストレス軽減や肥満解消に効果的です。肥満は腹圧を高め、胃酸の逆流を促進する要因となるため、適正な体重を維持することが大切です。ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない範囲で体を動かす習慣を身につけましょう。

外科手術:噴門形成術など

薬物療法や生活習慣の改善で効果がない場合、外科手術が検討されることがあります。噴門形成術は、胃と食道のつなぎ目である噴門を狭めることで、胃酸の逆流を防ぐ手術です。

再発予防:日常生活でできる対策

逆流性食道炎は再発しやすい病気です。日常生活でできる対策を継続的に行うことで、再発を予防し、快適な生活を維持することができます。

  • 食後すぐに横にならない: 食後すぐに横になると、胃酸が食道に逆流しやすくなります。食後1~2時間は横になるのを避け、座位または立位で過ごしましょう。

  • 就寝時の姿勢に注意する: 上半身を高くして寝ることで、胃酸の逆流を防ぐことができます。枕の高さを調整したり、傾斜のあるベッドを使用したりするなど、自分に合った方法を見つけましょう。

  • ストレスをためない: ストレスは、胃酸の分泌を促進し、逆流性食道炎の症状を悪化させるため、ストレスをためないようにすることが重要です。趣味やリラックスできる時間を持つなど、ストレスを適切に解消する方法を見つけましょう。

  • 規則正しい生活を心がける: 規則正しい生活を送ることは、健康維持の基本です。バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、心身ともに健康な状態を維持しましょう。

逆流性食道炎と合併症・日常生活の注意点

逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで食道の粘膜に炎症を起こす病気です。

胸やけや呑酸といった症状が代表的ですが、放置すると食道狭窄、バレット食道、食道がんといった合併症のリスクが高まる可能性があります。

また、睡眠障害を引き起こすこともあり、日常生活にも様々な影響を及ぼします。

この章では、逆流性食道炎の合併症と日常生活での注意点について詳しく解説します。

食道狭窄、バレット食道、食道がんのリスク

長期間、胃酸にさらされ続けることで食道の粘膜が傷つき、炎症が慢性化すると、様々な合併症を引き起こす可能性があります。

胃酸による刺激は、食道の粘膜を傷つけ、炎症を慢性化させ、最終的には食道の構造変化に繋がることもあります。

その結果として、食道狭窄、バレット食道、食道がんといった深刻な合併症を引き起こすリスクが高まります。

  • 食道狭窄: 食道の粘膜が炎症によって傷つき、線維化することで食道が狭くなる状態です。

食道狭窄になると、食べ物が食道を通過しにくくなり、食事の際に食べ物が詰まる感覚や飲み込みづらさを覚えるようになります。

進行すると、固形物を摂取することが困難になる場合もあります。

  • バレット食道: 食道の粘膜が、胃の粘膜に似た細胞に変化する状態です。

バレット食道自体は自覚症状がありませんが、食道がんのリスクを高める前がん病変であると考えられています。

定期的な内視鏡検査で経過観察を行い、異形成の有無を確認することが重要です。

  • 食道がん: 食道にできる悪性腫瘍です。逆流性食道炎を長期間放置することで、食道がんのリスクが上昇すると考えられています。

初期段階では自覚症状が少ないため、早期発見が難しい場合もあります。

進行すると、飲み込みにくさや胸の痛み、体重減少などの症状が現れることがあります。

これらの合併症を予防するためには、逆流性食道炎の早期発見・早期治療が重要です。

特に、胸やけや呑酸などの症状が続く場合は、放置せずに医療機関を受診しましょう。

睡眠障害との関連性

逆流性食道炎は睡眠にも影響を及ぼす可能性があります。

夜間、横になると胃酸が食道に逆流しやすくなるため、胸やけや呑酸などの症状が悪化し、睡眠を妨げることがあります。

また、逆流性食道炎による咳や喘息発作も、睡眠の質を低下させる要因となります。

睡眠不足は、日中の集中力低下や倦怠感につながるため、日常生活にも大きな支障をきたす可能性があります。

GERD(胃食道逆流症)は、NERD(非びらん性逆流症)、軽症逆流性食道炎、重症逆流性食道炎の3つのサブタイプに分類され、治療法もサブタイプによって異なります。

特に睡眠障害との関連は強く、病態を含めてエビデンスが十分に証明されているため、睡眠の質の低下を感じている場合は、逆流性食道炎の可能性も考慮する必要があります。

ストレス軽減、生活習慣病予防の重要性

ストレスは、逆流性食道炎の症状を悪化させる要因の一つです。

ストレスを感じると、胃酸の分泌が増加し、逆流しやすくなるためです。

また、ストレスは生活習慣病のリスクを高めることも知られています。

生活習慣病は、逆流性食道炎の発症や悪化に関与しているため、ストレス軽減と生活習慣病の予防は、逆流性食道炎の改善にもつながります。

食事療法:脂肪分の多い食事、カフェイン、アルコールの制限

食生活の改善は、逆流性食道炎の症状を軽減し、再発を予防するために非常に重要です。

特に、脂肪分の多い食事、カフェイン、アルコールは、胃酸の分泌を促進したり、食道の括約筋を緩めたりするため、逆流性食道炎の症状を悪化させる可能性があります。

これらの食品を控え、バランスの良い食事を心がけることで、症状の改善が期待できます。

仕事・学業への影響と対処法

逆流性食道炎の症状は、仕事や学業にも影響を及ぼす可能性があります。

胸やけや呑酸などの症状は集中力を低下させ、作業効率を悪化させる可能性があります。

また、睡眠障害を伴う場合は、日中の倦怠感や眠気により、仕事や学業に支障が出ることもあります。

症状が重い場合は、医師に相談し、適切な治療を受けることが大切です。

症状が軽度であれば、食生活の改善やストレス軽減などのセルフケアで症状をコントロールできる場合もあります。

まとめ

つらい胸やけや呑酸、げっぷ…もしかしたら逆流性食道炎かもしれません。日本人全体の10~20%が経験する身近な病気ですが、放置すると食道狭窄やバレット食道、食道がんといった合併症のリスクも。食生活の乱れやストレス、肥満などが原因で、胃酸が食道に逆流し炎症を起こします。症状が気になる方は、早めに医療機関を受診しましょう。内視鏡検査で診断し、薬物療法や生活習慣の改善で治療を行います。規則正しい生活とバランスの取れた食事、そしてストレスをためないことが大切です。快適な毎日を送るためにも、逆流性食道炎について正しい知識を身につけて、適切な対策を心がけましょう。

参考文献

  1. 藤原靖弘. 胃食道逆流症(GERD)診療の進歩.
  2. 逆流性食道炎治療のためのフォノプラザンの複数用量のネットワークメタアナリシス.

 

当院では、麻酔薬を使った苦痛の少ない内視鏡検査を行っています内視鏡専門医である院長が責任を持って担当し、大腸ポリープがあれば当日切除も可能です。

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【監修者】

かわぐち内科・内視鏡クリニック

川口 佑輔

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