大腸カメラをやった方が良い人とは?症状・年齢・リスク別に医師が徹底解説

「最近お腹の調子が悪いけど、いつものことだろう」「自分はまだ若いからがんの心配はないはず」。そんな風に、ご自身の健康を楽観視していませんか?大腸がんは40歳を過ぎた頃からリスクが高まりますが、初期は自覚症状がほとんどなく、静かに進行する怖い病気です。
健康診断の便潜血検査で陽性となった方のうち、約2~3%に大腸がんが見つかるというデータもあります。これは、症状がない段階で病気を発見できる重要なサインです。この記事では、消化器内科の専門医が、腹痛や血便といった症状から年齢や家族歴まで、大腸カメラ検査を強く推奨する方の特徴を徹底解説します。
あなたや大切なご家族の健康を守るための知識です。ご自身の状況と照らし合わせ、読み進めてみてください。
目次
大腸カメラ検査が強く推奨される人の特徴
「最近お腹の調子が悪いけど、いつものことだろうか」 「自分はまだ若いから、がんの心配はないはず」
このように、ご自身の健康について楽観的に考えていませんか。 大腸がんは、早期に発見すれば高い確率で治癒が期待できる病気です。 そして、その早期発見に最も有効な手段が、大腸カメラ検査です。
しかし、どのような人が検査を受けるべきなのか、具体的な基準がわからない方も多いでしょう。 ここでは、消化器内科の専門医として、大腸カメラ検査を特に強く受けていただきたい方の特徴を、一つひとつ詳しく解説します。
ご自身の状態と照らし合わせながら、読み進めてみてください。 ご自身や大切なご家族の健康を守るための、大切な知識です。

腹痛、便秘、下痢などお腹の不調が続いている方
一時的な腹痛や便通の異常は、誰にでも起こり得るものです。 しかし、原因がはっきりしないお腹の不調が長く続いている場合は、大腸からの警告サインかもしれません。 大腸にポリープやがん、あるいは炎症などが生じると、腸の正常な動きが妨げられ、さまざまな症状を引き起こすことがあります。
以下のような症状が2週間以上続く場合は、大腸カメラ検査で原因を詳しく調べることをお勧めします。
注意すべきお腹の症状チェックリスト
繰り返す腹痛 市販薬を飲んでも改善しない、または一旦良くなってもすぐにぶり返す腹痛がある。
便通の異常 便秘と下痢を交互に繰り返す、急に頑固な便秘になったなど、排便のリズムが乱れている。
お腹の張り 常にお腹が張っている感じがする(腹部膨満感)状態が続く。
これらの症状は、大腸ポリープや大腸がんが大きくなることで、便の通り道が物理的に狭くなること(通過障害)が原因で起こる場合があります。 また、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患でも、慢性的な下痢や腹痛が見られます。
「ストレスのせい」「体質だから」と自己判断してしまうのは危険です。 症状の裏には、治療が必要な病気が隠れている可能性があります。 消化器内科で専門的な検査を受けることが、病気の早期発見につながります。
便に血が混じる、便が細くなったなど排便習慣に変化がある方
毎日の排便は、大腸の健康状態を知るための重要なバロメーターです。 もし、便の状態や排便の習慣にこれまでと違う変化が見られたら、それは大腸からのサインかもしれません。 特に注意していただきたいのが、「血便」と「便の形の変化」です。
注意すべき排便の変化チェックリスト
血便(下血)便に血が混じる状態です。痔が原因の場合も多いですが、大腸がんやポリープの表面はもろく、便が通過する際にこすれて出血することがあります。
- 便の色: 便全体に血が混じっている、イチゴジャムのような粘液と血が混じる、黒っぽい血である場合は、大腸の奥の方で出血している可能性があります。
- 自己判断の危険: 「きっと痔だろう」と安易に考えず、必ず専門医に相談してください。
便が細くなる(便柱狭小化)大腸の内部にがんなどの「できもの」ができると、便の通り道が狭くなります。その結果、まるで鉛筆のように細い便が出ることがあります。急に便が細くなったと感じる場合は、注意が必要です。
残便感 排便後も便が残っているようなスッキリしない感覚が続く場合です。特に肛門に近い直腸に病変があると、常に腸が刺激されて残便感として現れることがあります。
これらの排便習慣の変化は、決して見過ごしてはならない重要なサインです。 一つでも当てはまる場合は、早めに大腸カメラ検査を検討しましょう。
健康診断の便潜血検査で「陽性」と判定された方
健康診断や市区町村のがん検診で行われる「便潜血検査」は、便に混じった目に見えない微量の血液を検出する検査です。 この検査で「陽性」という結果が出た場合、それは「消化管のどこかで出血がある」というサインです。 精密検査として大腸カメラを受けることが、次のステップとして強く推奨されます。
「陽性」と聞くと、すぐに大腸がんを心配されるかもしれませんが、陽性イコールがんというわけではありません。 痔や良性の大腸ポリープ、硬い便による刺激など、がん以外の原因で陽性となることも多くあります。 しかし、その出血の原因を特定するためには、大腸カメラで直接、腸の内部を観察することが不可欠です。
便潜血検査で陽性となった方のうち、実際に大腸カメラ検査を行うと、
- 約50〜60%の方に大腸ポリープ(当院成績)
- 約2~3%の方に早期または進行大腸がん
が見つかるといわれています。 自覚症状が全くない段階で、がんやその前段階であるポリープを発見できる、大変重要な機会なのです。
「症状がないから大丈夫」「次の検査で陰性になるかもしれないから」といった理由で精密検査を受けずにいると、病気の発見が遅れてしまう可能性があります。 陽性の判定を受けたら、必ず消化器内科を受診してください。
40歳以上で一度も大腸カメラを受けたことがない方
大腸がんは、40歳を過ぎた頃から発症するリスクが少しずつ高まり始め、年齢とともに増加していきます。 しかし、初期の大腸がんや、がんになる可能性のあるポリープの多くは、自覚症状がほとんどありません。 血便や腹痛といった症状が現れてから検査を受けた場合、病気がすでに進行してしまっているケースも少なくないのです。
そのため、症状がない段階で検査を受けることが、大腸がんから命を守るために非常に重要になります。 特に、40歳という節目を迎えた方で、これまで一度も大腸の中を詳しく調べたことがない場合は、健康診断の一環として大腸カメラ検査を受けることをお勧めします。
近年では、内視鏡技術の進歩も目覚ましいものがあります。 特殊な光を用いて粘膜表面の血管や模様を強調したり、画像の質感や色を調整したりすることで、従来は見つけにくかった平坦な形の病変や微小なポリープの発見率も向上しています。
40歳を過ぎたら、一度ご自身の大腸の状態を正確に確認してみましょう。 検査で異常がないことがわかれば、安心して毎日を過ごせるという大きなメリットもあります。
血縁者に大腸がんや大腸ポリープにかかった人がいる方
大腸がんの発症には、食生活などの環境的な要因だけでなく、遺伝的な要因が関わっている場合があります。 そのため、ご家族や親戚に大腸がんや大腸ポリープにかかった方がいる場合、ご自身も発症するリスクが一般の方より高くなる可能性があります。
特に、以下のような方は注意が必要です。
- 親、兄弟姉妹、子(第一度近親者)に大腸がんになった人がいる
- 血縁者に複数人、大腸がんになった人がいる
- 血縁者に50歳未満の若さで大腸がんになった人がいる
上記に当てはまる方は、遺伝的に大腸がんになりやすい体質を受け継いでいる可能性があります。 このような場合、一般的な推奨年齢よりも早い段階から、定期的に大腸カメラ検査を受けることが勧められています。
目安としては、「ご家族が発症した年齢よりも10歳若い年齢」から、あるいは少なくとも「40歳」になったら検査を開始することが望ましいとされています。 遺伝的リスクを正しく理解し、計画的に検査を受けることが、ご自身の健康を守る上で非常に重要です。
過去に大腸ポリープを切除した経験がある方
一度でも大腸ポリープを切除したことがある方は、将来再びポリープができる可能性が、ポリープができたことのない方に比べて高いことがわかっています。 これは、「ポリープができやすい腸の性質」を持っていると考えられるためです。
ポリープを切除したからといって、それで終わりではありません。 ポリープ切除は、その時点でのがん化を防ぐための重要な治療です。 しかし同時に、新たなポリープが発生していないかを定期的にチェックしていく「予防」の始まりでもあります。
見逃された小さなポリープが大きくなったり、別の場所に新しいポリープができたりする可能性があるため、医師の指示に従って定期的な大腸カメラ検査を受け続けることが大切です。 検査の間隔は、切除したポリープの以下の情報から総合的に判断されます。
- 大きさ
- 数
- 顔つき(組織型)
一般的には1年後や3年後など、個々のリスクに応じて最適なタイミングが指示されます。 定期的な経過観察を続けることで、万が一新しいポリープができても小さいうちに切除でき、将来の大腸がんを効果的に予防することにつながります。
原因不明の貧血や体重減少を指摘された方
健康診断などで「原因不明の貧血」を指摘されたり、特にダイエットをしていないのに体重が減り続けたりする場合、その背景に消化器系の病気が隠れている可能性があります。 中でも大腸がんは、これらの症状を引き起こす代表的な原因の一つです。
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原因不明の貧血(特に鉄欠乏性貧血)
大腸がんの病変部からは、自分では気づかないうちに、毎日ごくわずかな出血が持続していることがあります。 この出血が長期間続くと、体内の鉄分が徐々に失われ、血液中のヘモグロビンが作れなくなる「鉄欠乏性貧血」を引き起こします。 めまいや立ちくらみ、息切れ、倦怠感などの症状が現れることもあります。 特に、閉経後の女性や男性で鉄欠乏性貧血と診断された場合は、消化管からの出血を強く疑い、大腸カメラ検査で出血源を調べることが極めて重要です。
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意図しない体重減少
がん細胞は、正常な細胞よりも多くの栄養を消費して増殖します。 そのため、がんが進行すると、体全体の栄養状態が悪化し、食欲不振や体重減少が起こることがあります。
「たかが貧血」「痩せてちょうど良い」などと軽視してはいけません。 これらの症状に気づいたら速やかに医療機関を受診し、原因を突き止めるための精密検査を受けてください。
検査の「質」で結果は変わる|上手い医師・医療機関の選び方
大腸カメラ検査は、どの医療機関で受けても同じ結果とは限りません。 検査を担当する医師の技術や経験、そして使用する内視鏡機器の性能で、がんやポリープの発見率は大きく変わるのが実情です。
せっかく勇気を出して検査を受けるのですから、より精密で信頼できる医療機関を選びたいと思うのは当然のことでしょう。 ここでは消化器内科の専門医として、質の高い大腸カメラ検査を提供している医師や医療機関を見分けるための4つのポイントを具体的に解説します。

医師の経験を示す指標「腺腫発見率(ADR)」を確認する
医師の技術力を客観的に評価する大切な指標に、「腺腫発見率(ADR:Adenoma Detection Rate)」があります。 これは、検査を受けた人のうち、何パーセントの人に大腸がんになる可能性のあるポリープ(腺腫)が見つかったかを示す割合です。
このADRの数値が高い医師ほど、見逃しが少なく質の高い検査を行っていると評価できます。 なぜなら、小さなポリープや平坦で色の変化が乏しいポリープなど、発見が難しい病変を見つけ出す能力が高いことを意味するからです。
ADRの質の目安
- 50歳以上の男性: 25%以上
- 50歳以上の女性: 15%以上
一般的に、上記の数値が質の高い検査の目安として推奨されています。 医療機関によっては、このADRをウェブサイトなどで公開している場合があります。
ADRを公表していることは、その医療機関が検査の質に自信を持ち、透明性を大切にしている証ともいえます。 医師の技術力を示す客観的なデータとして、クリニック選びの参考にすると良いでしょう。
※当院では毎年40~45%ほどのADRであり、質の高い検査を保証いたします。
最新の内視鏡機器(画像強調)が導入されているか
精度の高い検査には、医師の技術力だけでなく、使用する内視鏡機器の性能も極めて重要です。 特に、がんやポリープの見逃しを防ぐためには、「画像強調機能」を備えた内視鏡が大きな力を発揮します。
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画像強調機能 特殊な光を用いて、粘膜表面の血管やわずかな色の違いを際立たせる技術です。 従来の内視鏡(白色光)では平坦で分かりにくい病変も、この機能によって発見しやすくなります。
近年では、組織の質感や色を強調する画像処理(TXI)などの新しい技術が登場しています。 あるメタ分析(複数の研究結果を統合して分析した研究)によると、TXIを用いた検査は、従来の白色光内視鏡検査と比較して、病変の発見率や腺腫の発見率を有意に向上させることが報告されています。
これらの画像強調技術は、特に周囲の粘膜と色の差が少ない病変の検出に威力を発揮します。
これらの高機能な内視鏡を導入しているかどうかは、医療機関のウェブサイトなどで確認できることが多いです。 どのような機器で検査を行うのかを確認することも、質の高い検査を受けるための大切なポイントになります。
ポリープの見逃しを防ぐ十分な観察時間が確保されているか
大腸カメラ検査の精度は、大腸の中をどれだけ丁寧に、時間をかけて観察したかによっても大きく左右されます。 大腸には多くの「ひだ」があり、その裏側にはポリープが隠れていることが少なくありません。 観察を急いでしまうと、こうした見つけにくい場所にある病変を見逃すリスクが高まります。
質の高い検査において我々専門医が重視するのが、内視鏡を抜きながら観察する「抜去時間」です。 一般的に、質の高い検査を担保するためには、少なくとも6分以上の抜去時間が推奨されています。
検査の予約を取る際に、一人ひとりの検査にどれくらいの時間を確保しているかを確認してみるのも良い方法です。 効率だけを重視するのではなく、見逃しをなくすために十分な観察時間を確保している医療機関は、それだけ検査の質を大切にしていると考えられます。 丁寧な観察は、早期がんの発見率向上に直結する非常に重要な要素なのです。
当院では、大腸の奥(盲腸)につくまでの平均時間が4分程度と早く、そのおかげで観察に6分以上の時間を割く事が可能です。
検査後の結果説明は丁寧で、質問しやすい雰囲気か
検査は、受けて終わりではありません。 検査で何がわかったのか、ご自身の大腸がどのような状態だったのかを正確に理解することが、今後の健康管理において非常に重要になります。 そのため、検査後に医師から丁寧な結果説明を受けられるかどうかも、医療機関を選ぶ上で大切なポイントです。
良い結果説明のチェックポイント
具体的な説明 内視鏡で撮影した実際の画像を一緒に見ながら、分かりやすい言葉で説明してくれるか。
今後の指針 ポリープがあれば今後の治療方針を、異常がなくても次回の推奨検査時期など、先のことまで説明してくれるか。
質問への対応 専門用語を多用せず、こちらの疑問や不安に耳を傾け、丁寧に答えてくれるか。
検査結果について不明な点や心配なことを気軽に質問できる雰囲気があるかどうかも、ぜひ確認してください。 患者さんとのコミュニケーションを大切にし、納得できるまで説明してくれる医師であれば、安心してご自身の体を任せることができるでしょう。
検査で何がわかる?大腸がんとポリープの早期発見から治療まで
「もし検査で何か悪いものが見つかったら…」 大腸カメラを受ける前は、誰でも不安な気持ちになるものです。
しかし、大腸カメラは不調の原因を探るだけでなく、命に関わる病気を最も早い段階で発見し、治療までつなげられる非常に重要な検査です。
この検査で何がわかり、どのようにご自身の健康を守れるのかを知ることで、きっと前向きな気持ちで検査に臨めるはずです。 ここでは、大腸の専門医として、検査の実際について詳しく解説します。

大腸カメラで発見できる病気の一覧
大腸カメラは、医師が直接、大腸の粘膜をすみずみまで観察できるため、さまざまな病気の発見が可能です。
特に近年は、内視鏡技術の進歩が目覚ましく、検査の精度は飛躍的に向上しています。 従来の白色の光(白色光内視鏡)だけでは、平坦な病変や周囲の粘膜との色の差が少ない病変を見つけることは容易ではありませんでした。
しかし現在では、特殊な光や画像処理を用いる「画像増強内視鏡(IEE)」という技術が広く使われています。 IEEは、粘膜表面の微細な血管の模様や構造を強調して表示する技術です。
例えば、組織の質感や色、明るさを強調するTXIという技術を用いた研究では、従来の内視鏡と比較して病変の発見率が有意に向上したと報告されています。 これにより、これまで見逃されやすかった微小ながんやポリープも、早期に発見できる可能性が高まりました。
大腸カメラで発見できる代表的な病気は以下の通りです。
| 分類 | 病名 | 特徴 |
|---|---|---|
| 腫瘍性疾患 | 大腸がん | 早期段階では自覚症状がほとんどありません。進行すると血便や便通異常を引き起こします。早期発見と治療が何よりも重要です。 |
| 大腸ポリープ | がんになる可能性がある「腺腫性ポリープ」と、がん化のリスクが低いポリープがあります。多くは症状がなく、検査で偶然発見されます。 | |
| 炎症性疾患 | 潰瘍性大腸炎 クローン病 |
慢性的にお腹の痛みや下痢、血便などが続きます。国の難病に指定されていますが、適切な治療で症状をコントロールすることが可能です。 |
| 虚血性腸炎 感染性腸炎 |
突然の腹痛や下痢、血便が特徴です。腸への血流障害や、細菌・ウイルス感染が原因で起こります。 | |
| その他 | 大腸憩室症 | 腸の壁の一部が外側に袋状に飛び出した状態です。無症状のことが多いですが、時に炎症(憩室炎)や出血の原因になります。 |
| 内痔核 | いわゆる「いぼ痔」です。肛門に近い直腸にでき、排便時の出血の原因となることがあります。がんとの鑑別のために観察します。 |
大腸ポリープはその場で切除できる?日帰り手術の実際
大腸カメラ検査の最大の利点の一つは、検査中に発見されたポリープをその場で切除できる点です。 これにより、検査と治療を一度で完結させることができ、将来の大腸がんを効果的に予防することにつながります。
日帰りポリープ切除の対象 一般的に、日帰りで切除できるのは、大きさが10mm程度までのポリープです。 ただし、切除するかどうかの判断は大きさだけで決めるわけではありません。
前述した画像増強内視鏡(IEE)を用いることで、ポリープ表面の微細な模様を拡大して詳細に観察できます。 この模様を分析することで、そのポリープが将来がんになる可能性のある腫瘍性か、その可能性が低い非腫瘍性かを高い精度でその場で判別できるのです。 この診断に基づき、切除の必要性を的確に判断します。
切除の方法 ポリープ切除には、主に以下のような方法があります。
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コールドポリペクトミー
スネアと呼ばれる金属製の輪をポリープにかけ、電気を使わずに締め付けて切り取る方法です。 比較的小さなポリープが対象で、周囲の組織への熱によるダメージが少なく、切除後の出血などの合併症リスクが低いとされています。
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内視鏡的粘膜切除術(EMR)
ポリープの下層に生理食塩水などを注入し、病変を浮き上がらせてからスネアをかけ、高周波電流で焼き切る方法です。 少し大きめのポリープや、平坦でスネアがかかりにくい形のポリープに用いられます。 ※EMRは出血のリスクも高いため、当院では行っておりません。
ただし、ポリープが非常に大きい場合や、IEEによる観察でがんが深く潜っていることが疑われる場合は、その場では切除しません。 安全性を最優先し、後日入院の上で内視鏡治療を行ったり、外科手術を検討したりします。
ポリープ切除後の食事や運動、飲酒に関する注意点
ポリープを切除した後の大腸の壁は、一時的に傷ができたデリケートな状態です。 まれに起こる出血や穿孔(腸に穴が開くこと)といった合併症を防ぐため、切除後しばらくは生活にいくつかの注意が必要です。
制限が必要な期間は、切除したポリープの大きさや数、切除方法によって異なりますが、一般的には1週間程度を目安となります。 当院では出血リスクの少ないコールドスネアポリペクトミーを行っているため、術後2日間の制限のみとしています。
切除後の生活チェックリスト
食事
- 切除当日は、おかゆやうどんなど、消化に良いものを少量から始めましょう。
- 翌日以降も2日間は、香辛料などの刺激物、ラーメンや揚げ物といった脂っこい食事は避けてください。
- 食物繊維の多い食品(ごぼう、きのこ、海藻類など)も消化に負担がかかるため、しばらく控えましょう。
運動・入浴
- 腹圧がかかる激しい運動(筋トレ、ジョギングなど)や重いものを持つ力仕事は、2日間は中止してください。
- 当日の入浴はシャワーで済ませ、長湯やサウナは2日間程度控えるのが安全です。
飲酒
- アルコールは血流を促進し、出血のリスクを高める重要な因子です。
- 安全のため、少なくとも2日間は必ず禁酒してください。
その他
- 飛行機での移動や長距離運転は、気圧の変化や同じ姿勢を続けることが体に負担をかけるため、医師に相談してください。
- 万が一、我慢できないほどの強い腹痛や、便器が真っ赤になるほどの多量の血便が出た場合は、ためらわずに検査を受けた医療機関に連絡してください。
これらの注意点は一般的なものです。ご自身の状態に合わせて医師から個別の指示がありますので、必ずそれに従ってください。
大腸カメラと他の検査(便潜血、CT)との違い
大腸の病気を調べる検査には、大腸カメラ以外にもいくつか選択肢があります。 それぞれに長所と短所があり、目的によって使い分けられます。 代表的な検査との違いを理解し、ご自身の状況に合った検査を選択する際の参考にしてください。
| 検査項目 | 大腸カメラ(内視鏡) | 便潜血検査 | CTコロノグラフィ |
|---|---|---|---|
| 検査の役割 | 精密検査・治療 | 一次検診(スクリーニング) | 精密検査(代替) |
| 検査方法 | 肛門から内視鏡を挿入し、大腸の粘膜を直接観察する。 | 自宅で便を採取し、便に微量の血液が混じっているかを調べる。 | 肛門から炭酸ガスを注入して大腸を膨らませ、CTで撮影する。 |
| 診断精度 | 最も高い。 ミリ単位の微小な病変も発見でき、画像強調観察で詳細な診断が可能。 |
低い。 出血していない早期がんやポリープは発見できない。 |
大腸カメラよりは劣る。 特に平坦な病変や5mm以下の小さな病変の検出は不得意。 |
| 治療 | ポリープの切除や、診断確定のための組織採取が同時に可能。 | 不可。 | 不可。 |
| 身体への負担 | 下剤の服用が必要。 鎮静剤を使用すれば苦痛は少ない。 |
身体的負担はほとんどない。 | 下剤の服用が必要。 放射線被ばくがある。 |
| 検査の特徴 | **診断から治療まで一度で行える唯一の検査。**病変を確定診断できる最も確実な方法。 | 手軽で安価なため、がん検診で広く採用されている「きっかけ」を作る検査。 | 内視鏡挿入に抵抗がある場合の選択肢。異常が見つかれば、結局大腸カメラが必要になる。 |
便潜血検査は、あくまで病気の「可能性」を見つけるための入り口です。 一方で大腸カメラは、病気の正体を「確定」し、同時に「治療」まで行えるゴールと言えます。 それぞれの検査の役割を正しく理解し、ご自身の健康を守るために最適な選択をすることが大切です。
まとめ
今回は、大腸カメラを受けるべき人の特徴から、質の高い医療機関の選び方まで詳しく解説しました。
大腸がんは、自覚症状に乏しい早期の段階で発見できれば、決して怖い病気ではありません。そして、その発見のために最も確実で有効なのが大腸カメラ検査です。
もし、この記事でご紹介した腹痛や血便などの症状、年齢やご家族のリスクに少しでも心当たりがあれば、それはあなたの体が発している大切なサインかもしれません。「まだ大丈夫」「きっと痔だろう」と自己判断で先延ばしにせず、まずは一度、消化器内科の専門医にご相談ください。
その勇気ある一歩が、将来の安心を手に入れ、ご自身と大切なご家族の未来を守ることに繋がります。
参考文献
- Sakamoto T, Akiyama S, Narasaka T, Tuchiya K. Advancements and limitations of image-enhanced endoscopy in colorectal lesion diagnosis and treatment selection: A narrative review. DEN open 6, no. 1 (2026): e70141.
- Shahzil M, Kashif TB, Jamil Z, Khaqan MA, Munir L, Amjad Z, Faisal MS, Chaudhary AJ, Ali H, Khan S, Enofe I. Assessing the effectiveness of texture and color enhancement imaging versus white-light endoscopy in detecting gastrointestinal lesions: A systematic review and meta-analysis. DEN open 6, no. 1 (2026): e70128.
追加情報
[title]: Advancements and limitations of image-enhanced endoscopy in colorectal lesion diagnosis and treatment selection: A narrative review.
大腸病変の診断と治療選択における画像増強内視鏡検査の進歩と限界:叙述的レビュー 【要約】
- 大腸癌は癌関連死亡の主要な原因であり、早期発見と正確な病変の特性評価が必要である。
- 従来の白色光内視鏡検査では、特に平坦な形態や周囲の粘膜との色のコントラストが少ない病変の検出が困難であり、腫瘍性病変と非腫瘍性病変の鑑別も難しい。
- 画像増強内視鏡(IEE)は、狭帯域イメージング、青色レーザーイメージング、リンクカラーイメージング、テクスチャと色の強調イメージングなどの手法により、粘膜表面と血管パターンを強調表示することで、病変の検出と特性評価を向上させる。
- 赤色二色性イメージングは主に深部血管の視認性を高めるため、出血源の特定や治療後の止血モニタリングなどの治療的内視鏡検査に特に有用である。
- IEEは病変の検出と特性評価を向上させるが、治療決定の重要な要素である粘膜下層浸潤深度の評価には限界がある。
- 内視鏡的粘膜下層剥離術には浸潤深度の正確な予測が必要だが、IEEは主に表層の特徴を反映する。
- 浸潤深度の評価と病変分類の向上には、内視鏡的超音波検査と人工知能支援診断が補完的な技術として台頭している。
- IEEは、しばしば平坦な形態と不明瞭な境界を示す潰瘍性大腸炎関連腫瘍(UCAN)の検出にも重要な役割を果たす。
- 高精細クロモエンドスコピーとIEE法は検出を向上させるが、炎症関連の変化により診断精度が制限される。
- 人工知能と分子マーカーはUCAN診断の改善に役立つ可能性がある。
- 本レビューは、病変の検出と治療選択におけるIEEの役割、その限界、内視鏡的超音波検査や人工知能などの補完的技術について検討している。
- また、クリスタルバイオレット染色を用いたピットパターン診断にも触れ、大腸癌スクリーニングと管理を改善するための新たな戦略について議論している。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40353217
[quote_source]: Sakamoto T, Akiyama S, Narasaka T and Tuchiya K. “Advancements and limitations of image-enhanced endoscopy in colorectal lesion diagnosis and treatment selection: A narrative review.” DEN open 6, no. 1 (2026): e70141.
[title]: Assessing the effectiveness of texture and color enhancement imaging versus white-light endoscopy in detecting gastrointestinal lesions: A systematic review and meta-analysis.
組織テクスチャ強調と色強調画像処理(TXI)による消化器病変検出の有効性:系統的レビューとメタ分析 【要約】
- 世界中で消化器がんは癌発生率の26%、癌関連死の35%を占めており、早期発見が重要である。
- 白色光内視鏡(WLE)では微細な病変を見逃すことが多いため、2020年に導入された組織テクスチャ強調と色強調画像処理(TXI)は、テクスチャ、輝度、色を強調することでWLEの限界を克服しようとする技術である。
- 本メタ分析は、消化器病変検出においてTXIのWLEに対する有効性を評価した。
- 16,634人を対象とした17件の研究を対象とした系統的レビューとメタ分析を実施した。
- TXIは、WLEと比較して、色識別能力(平均差:3.31、95%信頼区間[CI]:2.49-4.13)、視認性スコア(平均差:0.50、95%CI:0.36-0.64)、病変検出率(オッズ比[OR]:1.84、95%CI:1.52-2.22)を有意に向上させた。
- 下部咽頭、食道、胃、結腸直腸の病変においてTXIの優位性が確認された。
- TXIは腺腫検出率(OR:1.66、95%CI:1.31-2.12)と1回の手技あたりの平均腺腫検出数(平均差:0.48、95%CI:0.25-0.70)も向上させた。
- TXIは可視化と色識別能力を高めることで消化器病変の検出を改善し、WLEの主要な限界に対処する。
- これらの知見は、TXIをルーチン内視鏡検査に統合することを支持するものであり、他のモダリティとの比較やリアルタイム病変検出における可能性を探るさらなる研究が必要である。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40313348
[quote_source]: Shahzil M, Kashif TB, Jamil Z, Khaqan MA, Munir L, Amjad Z, Faisal MS, Chaudhary AJ, Ali H, Khan S and Enofe I. “Assessing the effectiveness of texture and color enhancement imaging versus white-light endoscopy in detecting gastrointestinal lesions: A systematic review and meta-analysis.” DEN open 6, no. 1 (2026): e70128.