大腸がんのリスク SSL(鋸歯状病変)とは?

「大腸がんのリスク」という言葉に、多くの方が不安を感じることでしょう。近年、大腸ポリープの中でも、従来から知られる「腺腫」とは異なる性質を持つ「SSL(鋸歯状病変)」が、大腸がんへの進行リスクとして特に注目されています。しかし、このSSLは平坦な形状や周囲の粘膜と同化しやすい色調、粘液キャップの付着といった特徴を持つため、残念ながら見過ごされてしまうことも少なくありません。
実際、大腸内視鏡検査後に見つかる大腸がん(PCCRC)の「かなりの割合」が、この見過ごされやすいSSLに起因する可能性が指摘されています。ご自身の健康を守るためには、このSSLについて正しく理解し、早期発見に繋がる質の高い検査を受けることが極めて重要です。本記事では、SSLの基礎知識からそのがん化リスク、適切な診断と治療方法について詳しく解説します。
目次
大腸がんのリスク SSL(鋸歯状病変)とは?

見過ごされやすいSSL(鋸歯状病変)の基礎知識
「大腸がんのリスク」という言葉を聞くと、多くの方が不安を感じることでしょう。近年、大腸ポリープの中でも、従来から知られている「腺腫(せんしゅ)」とは異なる性質を持つ「SSL(鋸歯状病変)」が、大腸がんへの進行リスクとして注目されています。しかし、このSSLは発見が難しい特徴を持つため、残念ながら見過ごされてしまうことも少なくありません。
消化器内科医の立場から見ても、SSLは発見に専門的な知識と経験、そして最新の内視鏡技術が求められる病変です。ご自身の健康を守るために、SSLについて正しい知識を持つことが非常に大切になります。
SSL(鋸歯状病変)の定義と従来のポリープとの違い
SSL(えすえすえる)とは、正式名称を「Sessile Serrated Lesion(無茎性鋸歯状病変)」、または「Sessile Serrated Adenoma/Polyp(無茎性鋸歯状腺腫/ポリープ)」と呼びます。大腸の粘膜表面が、まるで「のこぎりの歯」のようにギザギザとした形をしていることが最大の特徴です。見た目にはあまり盛り上がりがなく、平坦であることが多いため、従来の腺腫性ポリープとは区別されています。
従来の一般的な大腸ポリープである「腺腫」と比較すると、SSLには多くの違いがあります。
| 項目 | SSL(鋸歯状病変) | 従来の腺腫性ポリープ |
|---|---|---|
| 組織学的特徴 | 粘膜表面がギザギザ(鋸歯状)で、腺管(せんかん)と呼ばれる管状の構造が不規則に分岐します。 | 正常な腺管構造が変化し、異型細胞(いけいさいぼう)と呼ばれる、がんになりかけの細胞が増殖します。 |
| 特に、腺管の基底部が広がる「逆T字型」や「L字型」の分岐が見られることもあります。 | ||
| 形状 | 粘膜の表面とほぼ同じ高さの平坦な形、あるいはわずかに凹んでいる形をしています。 | 盛り上がった(隆起性)形状が多く、内視鏡で比較的見つけやすいことが多いです。 |
| そのため、内視鏡検査でも見過ごされやすい傾向にあります。 | ||
| 色調 | 周囲の正常な粘膜と色合いが似ており、淡い色調をしていることが多いため、同化しやすいです。 | やや赤みを帯びていることが多く、周囲の粘膜との色の違いで発見しやすいことがあります。 |
| 好発部位 | 大腸の右側(上行結腸、横行結腸)に多く見られる傾向がありますが、大腸のどの部位にも発生する可能性があります。 | 大腸のどこにでも発生しうる病変です。 |
| がん化経路 | 「鋸歯状経路(きょしじょうけいろ)」と呼ばれる独自の経路でがん化すると考えられています。 | 「腺腫・がん(がん)シークエンス」と呼ばれる経路でがん化します。 |
| この経路は、特に「CIMP(CpGアイランドメチル化表現型)経路」とも呼ばれ、BRAF遺伝子変異などの分子的な特徴を持つことが分かっています。 | 従来の腺腫の細胞が、異形成を経てがんへと進行していく特徴があります。 |
SSLは、このように組織学的にも発生経路においても、従来の腺腫とは異なる特性を持っています。特に、がん化への進行経路が独特であるため、早期発見と適切な対処が極めて重要であると認識されています。
なぜ見つけにくい?SSL(鋸歯状病変)の主な特徴3つ
SSL(鋸歯状病変)は、大腸内視鏡検査で見つけにくいことで知られています。その主な特徴は次の3つです。私たち消化器内科医が内視鏡検査を行う際に、特に注意深く観察するポイントでもあります。
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平坦な形状をしていること
従来のポリープの多くは、内視鏡で見て分かりやすいように盛り上がった形をしています。しかし、SSLは粘膜表面とほぼ同じ高さの平坦な形をしているため、粘膜のひだに隠れてしまったり、目立たなかったりして見逃されやすい傾向があります。経験豊富な内視鏡医が、注意深く粘膜全体をくまなく観察しないと、病変の存在に気づかないことがあります。 -
周囲の粘膜と同化しやすい色調であること
SSLの色調は、周囲の正常な粘膜と大きく変わらないことが多く、淡い色をしています。そのため、通常の白色光で内視鏡検査を行っても、病変部分が背景に溶け込んでしまい、発見が難しくなります。また、従来の腺腫のように血管の走行が変化するなどの間接的な所見も乏しい場合があり、これが発見をさらに困難にさせる要因となります。 -
表面に粘液が付着していること(粘液キャップ)
SSLの表面には、まるで白い粘液で蓋をされたかのように、白っぽい粘液が覆っていることがあります。これを「粘液キャップ」と呼びます。この粘液キャップが病変本体を隠してしまうため、内視鏡で直接観察することが非常に難しくなります。
これらの特徴から、SSLの診断には、経験豊富な内視鏡医による丁寧な観察が不可欠です。当院のような専門施設では、特殊な光(狭帯域光観察:NBIなど)を用いた内視鏡検査を積極的に行っています。このNBIは、粘膜の表面構造や血管パターンを詳細に観察できるため、SSLを早期に発見することに繋がります。
実際に、複数の研究で「鋸歯状ポリープの検出率が高い内視鏡医ほど、内視鏡検査後の大腸がん(PCCRC)の発生率が低い」ことが示されています。このことは、内視鏡医の技術と経験が、SSLのような見つけにくい病変の発見において非常に重要であることを裏付けています。
大腸がんへの進行リスクと高リスクな病変の種類
SSL(鋸歯状病変)が見つかった場合、「大腸がんになるのだろうか」という不安を感じる方は少なくありません。SSLは、大腸がんになるリスクがある病変であり、特に近年その重要性が認識されています。SSLから大腸がんへ進行する経路は、従来の腺腫性ポリープからの経路とは異なる「鋸歯状経路」と呼ばれる特殊な経路であると考えられています。
全てのSSLが大腸がんになるわけではありませんが、より進行がんのリスクが高いとされる病変の種類がいくつかあります。低リスクのSSLは、従来の腺腫と比較して進行腫瘍への進行リスクが高いとは言えない場合もあります。しかし、以下の高リスクな特徴を持つSSLは、がん化の可能性が高いため、早期の切除が強く推奨されます。
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10mm以上の大きなSSL病変のサイズが大きいほど、がん化のリスクが高まります。
例えば、PubMedに掲載された論文(Mallick TR and Hasan M, BMJ open gastroenterology, 2025)では、10mm以上の進行した病変は、悪性化の可能性が高いと考えられています。
早期発見のために、小さな病変のうちに切除することが望ましいです。 -
異形成(いけいせい)を伴うSSL
組織検査で、がんの一歩手前の細胞変化である「異形成」が認められるSSLは、将来的にがんへ進行するリスクが非常に高いとされています。
病理検査の結果でこの異形成の有無が確認されます。 -
大腸の右側に発生したSSL
SSLは大腸の右側(上行結腸、横行結腸)に多く見られる傾向があり、合併する大腸がんも右側結腸に多いという特徴があります。
特に、高齢の女性や、他の臓器にがんが見つかった方に、右側結腸のSSL由来の大腸がんが見られることがあります。 -
従来の腺腫性ポリープを併発しているSSL
同じ論文で、従来の腺腫とSSLが併発している場合も、悪性化の可能性が高いと指摘されています。
複数の種類のポリープが見つかった場合は、より注意深い経過観察が必要となります。
これらの高リスクな特徴を持つSSLは、見つかりにくいという特性も相まって、より慎重な診断と迅速な治療が求められます。
SSL(鋸歯状病変)と遺伝の関係性・家族への影響
ご自身にSSL(鋸歯状病変)が見つかった場合、「家族にも同じような病変が見つかることはあるのか」「遺伝する可能性はあるのか」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。
現時点では、SSL自体が直接的に遺伝する単一の病気であるとは明確には断定されていません。しかし、大腸がんの中には遺伝的な要因が強く関与するものがあり、特に「リンチ症候群」と呼ばれる遺伝性大腸がん症候群では、鋸歯状病変が見られることがあります。リンチ症候群は、特定の遺伝子の異常によって大腸がんを含む複数のがんの発症リスクが高まる病気です。
ご家族に大腸がんや大腸ポリープの既往(特に若い年齢での発症や、複数のポリープが見つかっている場合など)がある場合は、ご自身も大腸がんの発症リスクが高い可能性があります。これはSSLに限らず、大腸ポリープ全般に言えることです。
家族歴がある方は、そうでない方と比べて、より一層、定期的な大腸内視鏡検査を受けることが大切です。ご家族の病歴を把握し、気になる場合は担当の医師に相談してください。遺伝カウンセリング専門の医療機関で相談することで、ご自身やご家族の遺伝的リスクについて詳しく評価し、適切な情報やアドバイスを得られる場合もあります。遺伝の可能性について不安を感じる場合は、一人で抱え込まず、専門家にご相談ください。
SSL(鋸歯状病変)の癌化のリスク
SSL(鋸歯状病変)が見つかったとき、「この病変が将来、大腸がんになってしまうのではないか」と不安を感じるのは当然のことです。ご自身の体のことですから、心配になるのはごく自然な感情でしょう。しかし、すべてのSSLが大腸がんに進行するわけではありません。大切なのは、ご自身の病変がどのようなタイプで、どのくらいの注意が必要なのかを正しく理解することです。ここでは、SSLの大腸がんへの進行リスクについて、具体的なデータも交えながら詳しくご説明します。

鋸歯状病変はどの位の確率で大腸がんになる?
「鋸歯状病変がどのくらいの確率で大腸がんになるのか」という疑問に対し、一概に「何パーセント」と断定することは非常に難しいのが現状です。その理由は、鋸歯状病変の種類が多岐にわたり、個々の病変の特性や患者さんの状態によってリスクが大きく異なるためです。
しかし、鋸歯状病変が大腸がんの発症に重要な役割を果たしていることは、多くの研究で明らかになっています。特に、「大腸内視鏡検査後の大腸がん(PCCRC:ピーシーアールシー)」、つまり内視鏡検査を受けた後に見つかる大腸がんの原因の「かなりの割合を占めている可能性」が指摘されています。これは、SSLが発見しにくい特性を持つため、見過ごされてしまうケースがあることを示唆しています。
一方で、比較的リスクが低いとされる「低リスクの無茎性鋸歯状病変(SSL)」は、従来の一般的なポリープである腺腫(せんしゅ)と比較して、すぐに進行したがんに変わるリスクが高いとは言えないことも分かっています。つまり、SSLと診断されたからといって、過度に不安になる必要はありません。重要なのは、ご自身の病変がどのタイプに該当するかを正確に把握し、適切な対策を講じることです。
癌化リスクを高める病変の特徴
SSLの癌化リスクは、病変のさまざまな特徴によって変動します。特に、以下のような特徴を持つSSLは、癌化の可能性が高まると考えられています。
| 特徴 | 説明 |
|---|---|
| 大きさ | 10mm以上の大きなSSLは、小さな病変と比較して、癌へ進行するリスクが高まる傾向にあります。 |
| 異形成(いけいせい)の有無 | 組織検査で、細胞の形や並び方に異常(がんの一歩手前の細胞変化)が認められるSSLは、将来がんへ進行するリスクが非常に高いとされています。 |
| 発生部位 | 大腸の右側(上行結腸や横行結腸)に発生したSSLは、左側よりも癌化リスクが高いとする研究報告もあります。 |
| 病変の種類 | SSLの中でも特に「従来の鋸歯状腺腫(TSA:ティーエスエー)」は、癌化リスクが高いと考えられています。 |
| 他の腺腫との併発 | 従来の一般的な腺腫性ポリープと同時にSSLが見つかる場合も、癌化リスクが高まることが指摘されています。 |
これらの特徴は、消化器内科医が内視鏡検査や病理検査の結果を評価する上で、特に注意深く確認するポイントです。ご自身の病変がこれらの特徴に当てはまるかどうか、主治医とよく相談してください。
内視鏡医の質が癌化リスクの低減に繋がる
SSLの癌化リスクを考える上で、見過ごされやすいという特性は避けて通れません。しかし、内視鏡検査を行う医師の技術や経験が、このリスクを大きく左右することが分かっています。
複数の研究で、「鋸歯状ポリープの検出率が高い内視鏡医ほど、大腸内視鏡検査後の大腸がん(PCCRC)の発生率が低い」ことが示されています。これは、経験豊富な医師が丁寧に検査を行い、SSLを早期に発見・切除することが、結果的に大腸がんの予防に繋がることを意味します。
近年では、内視鏡検査の質の指標として「扁平隆起性鋸歯状病変発見率(SSLDR:エスエスエルディーアール)」という新しい指標も導入されています。これは、見つけにくいSSLをどれだけ発見できたかを示す割合です。私たち消化器内科医も、このSSLDRのような新しい質の指標を継続的にモニタリングし、質の高い検査を提供できるよう日々努力を重ねています。これにより、見過ごされやすいSSLの早期発見と、適切な処置へと繋がると考えています。
ご自身の病変の特徴だけでなく、信頼できる専門医による質の高い内視鏡検査を受けることが、SSLによる大腸がんのリスクを低減するための重要なステップと言えるでしょう。不安な場合は、お気軽に消化器内科の専門医にご相談ください。
SSL(鋸歯状病変)の適切な診断と治療
SSL(鋸歯状病変)と診断されたとき、多くの方が「この病変が将来、大腸がんになるのだろうか」「どのような治療が必要なのだろうか」と不安に感じることでしょう。ご自身の体のことですから、心配になるのはごく自然な感情です。しかし、ご安心ください。私たち消化器内科医としてお伝えしたいのは、適切な診断と治療を早期に行うことで、大腸がんへの進行を効果的に防ぎ、安心して日常生活を送ることが可能であるという事実です。
ご自身の病変がどのような状態にあるのかを正しく理解し、私たちとともに前向きに治療に取り組むための一助となれば幸いです。
がん化を防ぐ!内視鏡検査による早期発見の重要性
SSL(鋸歯状病変)は、その見つけにくい特性から、「見過ごされやすいポリープ」として知られています。従来の一般的な大腸ポリープ(腺腫:せんしゅ)とは異なり、形状が平坦であることや、周囲の正常な粘膜と色合いが似ているため、大腸内視鏡検査で見逃されてしまうリスクがありました。私たち消化器内科医が内視鏡検査を行う際も、このSSLの特性を理解し、より専門的な知識と豊富な経験、そして最新の内視鏡技術を駆使して、病変を見つける努力を重ねています。
近年、内視鏡技術は目覚ましく進歩し、病変の早期発見と正確な診断に大きく貢献しています。特に「狭帯域イメージング(NBI)」と呼ばれる特殊な光を用いた内視鏡検査は、SSLのような見つけにくい病変の検出率を飛躍的に向上させました。
| 検査方法の種類 | 特徴 | メリット | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 白色光内視鏡 | 肉眼で見る色に近い通常の光で大腸全体を観察します。 | 大腸全体の異常を広くスクリーニングするのに適しています。 | 平坦なSSLや周囲の粘膜と同化しやすい病変は見つけにくいことがあります。 |
| – 狭帯域イメージング(NBI) | 青色と緑色の光を使い、粘膜表面の毛細血管と微細な模様を強調します。 | SSLのようなわずかな色の変化や微細な凹凸も認識しやすくなり、病変の検出率が向上します。 | |
| 生検・病理診断 | 内視鏡で病変の一部を採取し、顕微鏡で細胞レベルの変化を詳しく調べます。 | SSLの確定診断には不可欠であり、がんの有無、悪性度(がん細胞の顔つき)、そして病変のタイプを正確に判断します。 | 組織を採取するため、ごく稀に出血のリスクがあります。 |
これらの新しい技術は、SSLの早期発見に大きな力を発揮しますが、狭帯域イメージング(NBI)にも限界があることをご理解ください。特に、病変が粘膜のどの深さまで及んでいるか(粘膜下層浸潤深度)を正確に評価することは、NBIだけでは難しい場合があります。この浸潤深度の評価は、適切な治療法を選択する上で非常に重要な情報となります。
正確な診断こそが、その後の適切な治療へと繋がる第一歩です。ご自身の病変がどのような状態にあるのかを正確に把握するためにも、これらの先進的な検査技術を持つ専門施設での検査を強くおすすめします。
内視鏡的切除のメリットと治療の種類
SSL(鋸歯状病変)は、放置すると大腸がんへ進行するリスクがあるため、早期の段階で切除することが強く推奨されています。幸いなことに、多くのSSLは、開腹手術のような体への大きな負担を伴う外科手術ではなく、内視鏡を使った「内視鏡的切除」で治療することが可能です。内視鏡的切除の最大のメリットは、体への負担が非常に少ないことです。
- お腹に傷が残る心配がありません。
- 入院期間が短く済むことが多いため、早期の社会復帰が期待できます。
- 全身麻酔ではなく、鎮静剤を使用することで検査中の苦痛も最小限に抑えられます。
内視鏡的切除には、主に以下の2つの方法があり、病変の大きさや形状、深さなどによって適切な方法が選択されます。
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内視鏡的粘膜切除術(EMR:Endoscopic Mucosal Resection)
- 治療方法:病変の粘膜の下に薬液を注入し、病変をドーム状に持ち上げます。その後、高周波電流が流れるスネアと呼ばれる金属製の輪を病変にかけて、電気的に切除する方法です。
- 適応病変:比較的小さなSSLや、粘膜の表面に限局している病変(通常は2cm未満)に適しています。
- メリット:比較的短時間で安全に行うことができ、体への負担も少ないです。
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内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:Endoscopic Submucosal Dissection)
- 治療方法:病変の周囲に薬液を注入し、専用の電気メスを使って、病変を粘膜下層(ねんまくかそう:粘膜の下の層)から慎重に剥がし取るように切除する方法です。これは非常に高度な技術を要する手技です。
- 適応病変:EMRでは一括(いっかつ)切除が難しい大きなSSL(通常は2cm以上)や、広範囲に広がった病変、また過去にEMRで切除しきれなかった病変などに対して行われます。
- メリット:病変をまるごと(一括で)切除できるため、病理診断の精度が高まり、取り残しのリスクを減らすことができます。特に、がん細胞が粘膜下層にわずかに浸潤しているような病変の場合、一括切除による正確な病理診断が、その後の治療方針を決定する上で極めて重要になります。
これらの治療は、基本的に医療保険が適用されます。具体的な治療費用については、病変の大きさ、治療方法、入院期間、そして自己負担割合などによって異なりますので、治療を受ける前に必ず医療機関にご確認ください。不明な点があれば、遠慮なく担当医や医療事務のスタッフに質問しましょう。
切除後の合併症リスクと経過観察の重要性
SSL(鋸歯状病変)の内視鏡的切除は、体への負担が少ない優れた治療法ですが、医療行為である以上、全くリスクがないわけではありません。治療後に起こりうる合併症として、主なものは「出血」と「穿孔(せんこう)」です。
- 出血
- 説明:切除した部分から出血が起こることがあります。多くの場合、少量で自然に止まることがほとんどですが、時には再内視鏡での止血処置が必要となるケースもあります。ごくまれに、輸血が必要となるような大量出血が起こる可能性もゼロではありません。
- 穿孔(せんこう)
- 説明:大腸の壁に穴が開いてしまうことです。これは非常にまれな合併症ですが、万が一生じた場合は、お腹の中に腸の内容物が漏れて腹膜炎(ふくまくえん)を引き起こす可能性があるため、緊急手術が必要となることもあります。
私たち消化器内科医は、これらの合併症のリスクを最小限に抑えるため、細心の注意を払って治療を行っています。また、万が一合併症が起きた場合でも、迅速かつ適切に対応できる医療体制を整えていますのでご安心ください。
病変を切除したからといって、それで治療が終わりではありません。SSL(鋸歯状病変)は、その性質上、同じ場所に「再発」しやすいことや、大腸の別の場所に「新たな病変」ができる可能性もあるため、定期的な「経過観察(サーベイランス)」が非常に重要です。
- 経過観察の目的
- 説明:再発や新たな病変を早期に発見し、大腸がんへの進行を未然に防ぐことです。
- 検査間隔
- 説明:切除した病変の病理結果(特にがんの有無や悪性度)、患者さんの個別のリスク因子(家族歴、既往歴、生活習慣など)を総合的に考慮し、担当医が最適な検査間隔を決定します。一般的には、数ヶ月から数年おきに大腸内視鏡検査を受けることが推奨されます。
- 定期検査の重要性
- 説明:この定期的な検査によって、もし再発や新たな病変が見つかった場合でも、早い段階で対処することができ、大腸がんへの進行を食い止めることが可能です。自己判断で経過観察を中断せず、医師の指示に従って定期的な検査を受け続けることが、ご自身の健康を守る上で最も大切なことです。
痛みを軽減する検査方法と信頼できる病院選び
「大腸内視鏡検査は痛い」「検査がおっくうで避けたい」といった理由で、受診をためらってしまう方は少なくありません。しかし、近年では検査中の不快感をできる限り軽減するための様々な工夫がなされており、安心して検査を受けていただける環境が整ってきています。
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鎮静剤の使用
- 説明:眠くなるお薬(鎮静剤)を使用することで、検査中にリラックスした状態を保ちます。多くの方は、ウトウトしている間に検査が終わり、痛みや不快感をほとんど感じずに済むことが可能です。
- メリット:精神的な緊張が和らぎ、医師もより丁寧でスムーズな検査を行うことができます。
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炭酸ガス(CO2)送気
- 説明:検査中、大腸のひだを広げて観察しやすくするために空気を入れることがあります。従来の空気は検査後にお腹の張りや不快感の原因となることがありましたが、炭酸ガス(CO2)は体内に速やかに吸収される性質を持っています。
- メリット:検査後のお腹の張りや痛みを大幅に軽減し、より快適に過ごせるようになります。
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内視鏡の選択
- 説明:使用する内視鏡の種類も、患者さんの負担軽減に繋がります。より細い内視鏡(細径内視鏡)や、医師が操作中に硬さを調整できる内視鏡(硬度可変内視鏡)を用いることで、大腸のS字状結腸などの曲がりくねった部分でも、無理なくスムーズに挿入できます。
- メリット:大腸の屈曲部での痛みや不快感を減らし、より安全で楽な検査を提供できます。
大腸内視鏡検査やSSL(鋸歯状病変)の治療を受ける医療機関を選ぶ際には、以下の点を参考にしてください。ご自身の健康を預ける大切な選択です。
- 消化器内視鏡専門医が在籍しているか
- SSL(鋸歯状病変)は発見が難しい病変であるため、豊富な経験と高度な診断技術を持つ消化器内視鏡専門医による精密な検査が不可欠です。学会の認定資格を持つ医師が在籍しているかを確認しましょう。
- 治療実績が豊富か
- 内視鏡的切除(EMRやESD)の経験が豊富であることは、安全で確実な治療を受ける上で重要な指標となります。過去の治療件数や合併症発生率などを確認できると安心です。
- 最新の内視鏡設備が整っているか
- 狭帯域イメージング(NBI)などが搭載された内視鏡設備を有している事は必須条件です。
- セカンドオピニオン体制が確立されているか
- 現在の診断や治療方針について、他の専門家の意見を聞きたい場合に、快く応じてくれる体制が整っているかも確認しておくと、より納得して治療に進むことができます。
これらのポイントを参考に、ご自身に合った信頼できる医療機関を見つけ、安心して検査と治療に臨んでください。疑問や不安があれば、遠慮なく医師やスタッフに相談することが大切です。
SSL(鋸歯状病変)と診断された後の安心対策
SSL(鋸歯状病変)と診断され、ご不安な気持ちでいらっしゃる方も少なくないことでしょう。しかし、私たち消化器内科医としてお伝えしたいのは、SSLが見つかったとしても、決して絶望する必要はないということです。適切な知識を身につけ、今日からできる対策を講じることで、大腸がんへの進行リスクを大きく減らし、安心して日常生活を送ることが可能です。大切なのは、病変を正しく理解し、前向きに治療や予防に取り組む姿勢を持つことです。この章では、ご自身の健康を守るために具体的に何をすべきかについて、詳しく解説していきます。

再発予防のための定期検査とフォローアップの期間
SSL(鋸歯状病変)が切除された後も、それで全てが終わったわけではありません。再発や大腸の別の場所に新たな病変が発生する可能性もゼロではないため、定期的な内視鏡検査とフォローアップが非常に重要です。私たち消化器内科医は、切除後も患者さんの健康を継続的にサポートすることを目指しています。
定期検査の重要性
たとえSSLの切除が成功したとしても、大腸の他の部位に新たな病変ができたり、切除した場所が再発したりする可能性はあります。特に、鋸歯状病変は高度な病変である場合に大腸がんへの進行リスクが高いとされているため、定期的な検査は極めて重要です。
- 目的
- 再発や新たな病変を早期に発見することです。
- 早期発見により、大腸がんへの進行を未然に防ぎ、迅速な治療に繋げることができます。
- メリット
- もし新しい病変が見つかっても、早い段階で対処できるため、治療の選択肢が広がり、体への負担も少なく済みます。
フォローアップの期間と頻度
フォローアップの期間や検査の頻度は、患者さん一人ひとりの状態や病変の特性によって異なります。担当医が、以下の要素を総合的に判断し、最適な検査間隔を提案します。
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 病変の種類 | 切除したSSLの組織学的検査の結果(良性か、がんへの変化が見られたかなど)によって、フォローアップの間隔が変わります。 |
| 病変の大きさ | 大きな病変や、高リスクと判断されたSSLを切除した場合は、より慎重な経過観察が必要です。 |
| 病変の数 | 複数のSSLが発見された方や、過去に大腸ポリープを多く切除されている方は、より頻繁な検査が推奨されることがあります。 |
| 患者さんの状態 | 家族の中に大腸がんの既往がある場合や、炎症性腸疾患(腸に炎症が起きる病気の総称)をお持ちの方など、個々のリスク因子も考慮されます。 |
| 一般的な目安 | 多くの場合、SSL切除後は1年後に内視鏡検査を行い、その後は3年ごとなど、主治医が個別に最適な間隔を判断し、案内いたします。 |
熟練した内視鏡医による精密な検査は、SSLが見つけにくいという特性を考慮すると、再発や新しい病変の早期発見に不可欠です。検査時の苦痛を軽減するためには、鎮静剤を使用したり、炭酸ガス(CO2)送気を行ったり、楽な体位での検査を工夫したりする方法もありますので、不安な場合は担当医に遠慮なく相談してください。自己判断で経過観察を中断せず、医師の指示に従って定期的な検査を受け続けることが、ご自身の健康を守る上で最も大切なことです。
また、ご家族の方の理解とサポートも、精神的な面で患者さんの治療成功に大きく影響します。病気の情報を共有し、一緒に健康的な生活を送ることで、再発予防に対する意識も高まり、より安心して治療に取り組むことができるでしょう。
SSL(鋸歯状病変)Q&A
SSL(鋸歯状病変)は、大腸がんのリスクがあることから、多くの患者さんが不安を感じることでしょう。消化器内科医として、皆さんが抱える疑問や心配を少しでも解消できるよう、よくいただく質問とその回答をまとめました。ご自身の健康を守るために、ぜひ参考にしてください。
Q1. SSL(鋸歯状病変)はなぜ「見つけにくい」と言われるのですか?
SSL(Sessile Serrated Lesion:無茎性鋸歯状病変)は、大腸内視鏡検査で発見が難しいとされる病変です。これにはいくつかの理由があります。
- 平坦な形状をしているため
- 従来の一般的なポリープは盛り上がった形をしていますが、SSLは粘膜の表面とほぼ同じ高さの平坦な形をしています。
- 大腸のひだに隠れてしまったり、目立たなかったりして、見逃されやすい傾向があります。
- 周囲の粘膜と同化しやすい色調のため
- 周囲の正常な粘膜と色合いが似ており、淡い色調をしていることが多いため、病変部分が背景に溶け込みやすいです。
- 表面に粘液が付着していることがあるため
- SSLの表面には、白い粘液が覆いかぶさっていることがあり、これを「粘液キャップ」と呼びます。
- 粘液キャップが病変本体を隠してしまうため、直接観察することが難しくなります。
このような特徴から、SSLの検出には、医師の専門的な知識と豊富な経験、そして最新の内視鏡技術が不可欠です。近年では、粘膜表面の微細な構造や血管パターンを強調表示する「画像増強内視鏡(IEE:Image-Enhanced Endoscopy)」や、人工知能(AI)による診断支援システムなどの技術が進歩し、見つけにくいSSLの検出率向上に貢献しています。
Q2. SSLと診断されたら、どのくらいの頻度で検査を受ければ良いですか?
SSLと診断された場合、その後の定期的な検査(経過観察)は非常に大切です。検査の間隔は、患者さん一人ひとりの病変の特性やリスク因子によって異なり、担当医が総合的に判断して決定します。
主な考慮事項は次のとおりです。
- 病変の種類と組織検査の結果
- 切除したSSLの病理診断で、良性か、がんへの変化(異形成)が見られたかなどによって、間隔が変わります。
- 病変の大きさや数
- 大きなSSLや複数の病変が見つかった場合、また高リスクと判断されたSSLを切除した場合は、より慎重な経過観察が必要です。
- 患者さん個別のリスク因子
- ご家族に大腸がんの既往がある場合や、他の大腸ポリープを多く切除されている場合など、個々のリスクも考慮されます。
一般的には、SSL切除後に1年以内に内視鏡検査を行い、その後は3年ごとなど、主治医が最適な間隔を案内します。自己判断で経過観察を中断せず、医師の指示に従って定期的な検査を受け続けることが、再発や新たな病変を早期に発見し、大腸がんへの進行を未然に防ぐ上で最も大切です。
Q3. SSLからの大腸がんへの進行リスクはどれくらいですか?
「SSLが見つかったら、必ず大腸がんになるのだろうか」と不安に感じるのは当然のことでしょう。すべてのSSLが大腸がんに進行するわけではありませんが、大腸がんの発症に重要な役割を果たす病変であることは、多くの研究で明らかになっています。特に、大腸内視鏡検査後に見つかる大腸がん(PCCRC:Post-Colonoscopy Colorectal Cancer)の「かなりの割合」が、SSLが見過ごされてしまうことに起因する可能性が指摘されています。
一方で、比較的リスクが低いとされる「低リスクの無茎性鋸歯状病変(SSL)」は、従来の一般的なポリープである腺腫(せんしゅ)と比較して、すぐに進行したがんに変わるリスクが高いとは言えないことも分かっています。
しかし、以下のような特徴を持つSSLは、癌化の可能性が高まると考えられています。
- 10mm以上の大きなSSL
- 病変のサイズが大きいほど、がん化のリスクが高まる傾向にあります。
- 異形成(いけいせい)を伴うSSL
- 組織検査で、がんの一歩手前の細胞変化(異形成)が認められる場合、将来がんへ進行するリスクが非常に高いです。
- 大腸の右側に発生したSSL
- 大腸の右側(上行結腸や横行結腸)に発生したSSLは、左側よりも癌化リスクが高いとする研究報告もあります。
- 従来の鋸歯状腺腫(TSA:Traditional Serrated Adenoma)
- SSLの中でも特にTSAは、癌化リスクが高いと考えられています。
- 他の腺腫性ポリープと併発しているSSL
- 従来の一般的な腺腫性ポリープと同時にSSLが見つかる場合も、癌化リスクが高まることが指摘されています。
これらの特徴を正確に評価し、適切な対応をとることが、大腸がんのリスクを低減するために極めて重要です。
Q4. 大腸内視鏡検査は、以前より楽になったと聞きますが本当ですか?また、質の高い検査を受けるにはどうすれば良いですか?
「大腸内視鏡検査は痛い、つらい」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、近年、検査技術や使用する機器は目覚ましく進歩しており、以前に比べて格段に楽に検査を受けていただけるようになっています。
痛みを軽減するための工夫
- 鎮静剤の使用
- ウトウトと眠っているような状態で検査を受けられるため、痛みや不快感をほとんど感じずに済みます。
- 炭酸ガス(CO2)送気
- 大腸を広げる際に、従来の空気ではなく炭酸ガスを用いることで、検査後のお腹の張りや痛みを大幅に軽減できます。炭酸ガスは体内に速やかに吸収される性質があるためです。
- 内視鏡の選択
- より細い内視鏡や、医師が操作中に硬さを調整できる内視鏡(硬度可変内視鏡)を用いることで、大腸の複雑な曲がり角でもスムーズに挿入できるようになっています。
質の高い検査を受けるためのポイント
SSLのような見つけにくい病変の早期発見には、内視鏡医の技術と設備の充実が不可欠です。
- 消化器内視鏡専門医が在籍しているか
- 経験豊富で、高度な診断技術を持つ専門医による丁寧な観察が、SSLの発見には極めて重要です。学会認定資格を持つ医師が在籍しているかを確認しましょう。
- 実際、複数の研究で「鋸歯状ポリープの検出率が高い内視鏡医ほど、大腸内視鏡検査後の大腸がん(PCCRC)の発生率が低い」ことが示されています。
- 最新の内視鏡設備が整っているか
- 「画像増強内視鏡(IEE)」と呼ばれる特殊な光を用いた内視鏡(NBI、BLI、LCI、RDIなど)は、粘膜の微細な変化を強調し、SSLの検出率を向上させます。
- IEEだけでは病変の深さ(粘膜下層浸潤深度)の評価に限界があるため、必要に応じて「内視鏡的超音波検査(EUS)」や「人工知能(AI)支援診断」を併用する施設もあります。
- 治療実績が豊富か
- 内視鏡的切除(EMRやESD)の経験が豊富な施設であれば、安全で確実な治療が期待できます。
これらの情報を参考に、ご自身に合った信頼できる医療機関を選び、安心して検査に臨んでください。
Q5. SSLと大腸がんの関連で、最近注目されている研究はありますか?
大腸がんの予防と治療に関する研究は日々進んでおり、SSLとの関連についても新たな知見が得られつつあります。最近注目されている研究の一つに、「肝臓X受容体(LXR)」と呼ばれる体内のたんぱく質に関するものがあります。
- 肝臓X受容体(LXR)の役割
- LXRは、コレステロールや脂質の代謝を調節する重要な役割を担う核内受容体の一種です。
- 近年、このLXRの活性化が、腸の炎症反応やがんの発生といった病的なプロセスにも関与している可能性が示唆されています。
- 炎症性腸疾患(IBD)と大腸がん(CRC)との関連
- 炎症性腸疾患(IBD)と大腸がんは密接に関連していることが知られています。
- 研究では、LXRがIBDや大腸がんの両方の病因の調節に関わっている可能性が示されています。
LXRの働きをさらに詳しく理解することで、将来的にSSLや大腸がんの予防・治療に繋がる新しい治療法の開発が期待されています。このような基礎研究の進展は、より効果的な診断や治療戦略を患者さんに提供するための重要な一歩となります。
まとめ
今回は、見過ごされやすい大腸がんのリスク、SSL(鋸歯状病変)についてご紹介しました。SSLは平坦な形状や色調の特徴から発見が難しい病変ですが、放置すると大腸がんへ進行する可能性があるため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。
近年、内視鏡技術は進化し、NBIなどの特殊光やAI支援診断により、以前より楽に検査を受けられるようになりました。万が一SSLが見つかっても、内視鏡での切除が可能であり、切除後も定期的な検査で再発や新たな病変を早期に発見できます。不安を感じたら、消化器内視鏡専門医に相談し、質の高い検査を受けることが大切です。ご自身の健康を守るためにも、定期的な大腸内視鏡検査をぜひご検討ください。
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