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台東区浅草のかわぐち内科・内視鏡クリニックの院長ブログ

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腫瘍マーカーと大腸がん

健康診断の結果に「腫瘍マーカーCEAが高値」と記され、驚きや不安を感じている方も多いのではないでしょうか。「もしかして、がんかもしれない」という心配は、当然のことです。

しかし、その数値だけで一喜一憂するのはまだ早いかもしれません。実は、大腸がんと診断された方のうち、手術前にCEAが高値を示したのは約35%という報告があります。これは、がんの方の約3人に2人はCEAが正常値だったことを意味します。逆に、喫煙や他の病気が原因で数値が上がる「偽陽性」も少なくないのです。

この記事では、腫瘍マーカーCEAの数値が持つ本当の意味を解き明かし、高値を指摘された際に本当に受けるべき精密検査について詳しく解説します。正しい知識を身につけ、ご自身の状態を冷静に理解するための第一歩としましょう。

目次

腫瘍マーカーCEAとは?基準値と検査でわかること

健康診断や人間ドックの結果に「腫瘍マーカーCEAが高値」と書かれていて、驚きや不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。「もしかして、がんなのだろうか」と心配になるのは当然のことです。

しかし、CEAの数値が高いことが、すぐにがんの存在を意味するわけではありません。腫瘍マーカーCEAは、あくまでがんの診断を補助する手がかりの一つです。

この項目では、CEAがどのような物質で、検査によって何がわかるのかを解説します。そして、なぜ数値だけで一喜一憂すべきでないのか、その理由を丁寧にお伝えします。正しい知識を身につけ、ご自身の状態を冷静に理解するための第一歩としましょう。

 

CEAの役割と大腸がんで上昇する仕組み

CEAは「Carcinoembryonic Antigen」の略で、日本語では「がん胎児性抗原」と呼ばれます。これは、本来お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんの消化器で作られているタンパク質の一種です。

健康な大人の体内では、このCEAはほとんど作られません。しかし、がん細胞、特に大腸がんや胃がん、膵臓がんといった消化器系の「腺がん」は、未熟な細胞に戻るような性質を持ち、このCEAを再び作り出すことがあります。

がん細胞が増殖する過程で、作られたCEAが血液中に漏れ出すことで、血液検査の数値が上昇します。これが、大腸がんでCEAが高くなる基本的な仕組みです。

ただし、CEAは特定のがんだけで作られるわけではありません。以下のように、様々な種類のがんで数値が上昇することが知られています。

  • 消化器系のがん
     大腸がん、胃がん、膵臓がん、胆道がん など
  • その他の部位のがん
     肺がん、乳がん、甲状腺がん など

このように、CEAは特定の臓器のがんを指し示すものではないため、「臓器特異性が低い」マーカーと言われます。一般的に、がんが進行して大きくなったり、他の臓器へ転移したりすると、CEAの数値はより高くなる傾向があります。

CEAの基準値と年齢や性別による違い

CEAの基準値は、測定する医療機関や検査会社で多少異なりますが、一般的には「5.0 ng/mL 以下」とされています。年齢や性別によって、この基準値が大きく変わることはありません。

しかし、CEAの数値はがん以外の要因でも変動します。特に注意が必要なのが「喫煙」です。タバコを吸う習慣のある方は、吸わない方に比べてCEAの数値が高くなる傾向があります。

ある日本の研究では、喫煙本数によって基準とすべき値(カットオフ値)が異なると報告されています。

1日の喫煙本数 CEAの基準値の目安(カットオフ値)
吸わない 5.2 ng/mL
1~10本 6.6 ng/mL
11~20本 8.4 ng/mL

このように、喫煙量が多いほどCEAの値も高くなるため、結果を解釈する際には喫煙習慣を考慮する必要があります。このほかにも、加齢や、次に挙げるようながん以外の病気によってもCEAは基準値を超えることがあります。

  • 肝炎、肝硬変
  • 膵炎
  • 潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患
  • 糖尿病
  • 慢性的な肺の病気(慢性気管支炎など)
  • 腎不全

したがって、基準値を超えていたとしても、すぐにがんを心配するのではなく、ご自身の生活習慣や他の病気の可能性も踏まえて、総合的に判断することが大切です。

採血だけでわかるCEAの検査方法と結果の見方

CEA検査は、腕の静脈から少量の血液を採るだけです。一般的な血液検査と同じ方法で行われ、食事制限などの特別な準備も必要なく、身体的な負担が少ない検査です。

検査結果を解釈する上で非常に重要なのは、「どのような状況で検査を受けたか」という点です。ここで、「陽性的中率」という考え方が参考になります。これは、「検査で陽性(高値)と出た人のうち、本当にその病気を持っている人がどれくらいの割合いるか」を示す指標です。

  • 一般診療所などでの検診(病気の可能性が低い集団)
     特に症状のない方が人間ドックなどで検査を受けた場合、CEAが高値であっても実際にがんが見つかる確率は非常に低い(陽性的中率が約4%)という試算があります。つまり、陽性と出た100人のうち96人は、がん以外の原因(偽陽性)である可能性が高いのです。

  • 専門病院などでの精密検査(病気の可能性が高い集団)
     腹痛や血便といった何らかの症状があったり、他の検査でがんが疑われたりしている方が検査を受けた場合、CEAが高値であれば、実際にがんである確率が高まります(陽性的中率が約31%に上昇)。

このように、CEA検査は受診者の状態によって結果の持つ意味合いが大きく異なります。そのため、結果の数値だけを見て一喜一憂せず、必ず医師の説明を受けるようにしてください。

CEAの数値だけでがんの診断ができない本当の理由

CEAの数値だけでがんの診断を確定することは、決してありません。その理由は、腫瘍マーカーが持つ2つの限界にあります。

がん以外の原因でも数値が上がることがある(特異度が低い)

前述のとおり、CEAはがん以外の様々な要因で上昇します。

  • 生活習慣
     喫煙
  • 良性の病気
     肝硬変、肝炎、膵炎、糖尿病、潰瘍性大腸炎 など

健康な方でも、体内に何らかの炎症があるだけで一時的に数値が上がることがあります。もしCEAだけでがんの診断をしてしまうと、実際にはがんでない多くの方に、不必要な心配や精密検査の負担をかけてしまうことになります。

がんがあっても数値が上がらないことがある(感度が低い)

特に、早期のがんではCEAの数値が基準値内に収まっていることが少なくありません。ある研究では、初めて大腸がんと診断された患者さんのうち、手術前にCEAが高値を示したのは約35%だったという報告があります。

これは、大腸がんの方の約3人に2人は、CEAが正常値のままだったことを意味します。もしCEAの数値だけで「がんではない」と判断してしまうと、早期のがんを見逃してしまう危険性があるのです。

これらの理由から、CEAはあくまで診断の「補助」として用いられます。最終的な診断のためには、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)やCT検査などの画像検査、そして病変の一部を採って調べる組織検査(生検)の結果などを総合的に評価することが不可欠です。

早期の大腸がんでもCEAは上昇するの?

結論から言うと、早期の大腸がんでCEAの数値が上昇することは稀です。CEAは、がんの早期発見を目的としたスクリーニング検査としては、あまり有効ではないと考えられています。

CEAの値は、がんの進行度と関連する傾向があります。一般的にがんが進行して大きくなったり、肝臓などの他の臓器に転移したりすると、数値が高くなりやすいことがわかっています。

では、CEAは何のために測定するのでしょうか。その主な目的は、がんの診断後や治療経過の観察にあります。

  • がんの進行度の推定
     手術前のCEAの値が、がんの広がり具合を予測する一つの目安になります。
  • 治療効果の判定
     手術や抗がん剤治療によってCEAの値が下がれば、「治療が効いている」と判断する材料になります。
  • 再発の早期発見
     手術でがんを取り除いた後にCEAの値が正常化し、その後の定期的な検査で再び上昇してきた場合、がんの再発を疑うきっかけになります。実際、初めて見つかった大腸がんよりも、再発した大腸がんの方がCEAは高値を示しやすい(陽性率約82%)と報告されています。

このように、CEAはがんの早期発見のためではなく、主にがんと診断された後の治療方針の決定や、治療後の経過観察において重要な役割を果たしています。大腸がんの早期発見のためには、CEAの数値を気にするよりも、定期的に便潜血検査や大腸内視鏡検査を受けることが最も重要です。

CEA以外の大腸がん腫瘍マーカーは?

健康診断などで腫瘍マーカーCEAの数値を指摘され、ご不安な気持ちでいらっしゃるかもしれません。CEAは大腸がんの診療で最も一般的に用いられますが、これだけですべてがわかるわけではありません。

実際には、CEAの数値が正常でもがんが隠れていることがあります。逆に、CEAが高くてもがんではないケースも少なくありません。そこで医師は、性質の異なる複数の腫瘍マーカーを組み合わせ、診断の精度を高める「合わせ技」で評価することがあります。

ここでは、CEA以外に大腸がんの診療で用いられる代表的な腫瘍マーカーについて、それぞれの特徴と役割を詳しく解説します。

CA19-9とは?大腸がんでも上昇する可能性のある腫瘍マーカー

CA19-9(Carbohydrate Antigen 19-9)は、主に膵臓がんの腫瘍マーカーとして広く知られています。しかし、大腸がんや胃がん、胆道がんといった消化器系のがんでも数値が上昇することがあります。

CEAとCA19-9を同時に測定することで、診断の手がかりを増やすことができます。例えば、CEAは正常値なのにCA19-9が高い場合、がんの存在を疑うきっかけになるなど、異なる角度からの情報が得られるのです。

大腸がんの進行度とCA19-9陽性率の関係

CA19-9もCEAと同じように、がんが進行するほど血液検査で陽性となる方の割合が高くなる傾向にあります。

大腸がんの進行度(ステージ) CA19-9が陽性になる方の割合(目安)
ステージⅠ(早期) 約17%
ステージⅡ(筋肉の層まで浸潤) 約17%
ステージⅢ(リンパ節に転移) 約47%
ステージⅣ(遠隔転移) 約74%

CA19-9の結果を解釈する上での重要な注意点

CA19-9の数値を評価する際には、いくつか知っておくべき大切なポイントがあります。

  • 体質的にCA19-9が作られない人がいる
     日本人の約10%は、遺伝的にCA19-9を産生できない「ルイス陰性」という体質です。この方々は、たとえがんがあったとしてもCA19-9の数値は上昇しないため、このマーカーでの評価はできません。
  • がん以外の良性の病気でも数値が上がる
     膵炎、胆石症、胆管炎、肝硬変といった良性の病気や、糖尿病でも数値が高くなることがあります。体内に炎症があるだけでも一時的に上昇することがあります。

このように、CA19-9は診断の補助として有用な情報ですが、この数値だけでがんの有無を判断することはできません。

p53抗体とは?これまでとは少し違う「がんのサイン」

p53抗体は、これまで解説してきたCEAやCA19-9とは少し性質の異なる腫瘍マーカーです。がん細胞そのものが作り出す物質ではなく、がんに対して体が起こす「免疫反応」をみています。

p53抗体ができる仕組み

私たちの体には、細胞ががん化するのを防ぐ「ブレーキ役」として働く「p53」という遺伝子(がん抑制遺伝子)があります。

  1. がん細胞では、このブレーキ役であるp53遺伝子に変異が起こり、異常なp53タンパク質が大量に作られることがあります。
  2. 体は、この異常なp53タンパク質を「自分のものではない異物」と認識します。
  3. そして、異物を攻撃するための「抗体(p53抗体)」を血液中に作り出します。

この血液中のp53抗体を測定するのが、p53抗体検査です。つまり、p53抗体が陽性ということは、体内にp53遺伝子の変異を伴うがんが存在する可能性を示唆するサインとなります。

大腸がんにおけるp53抗体の特徴

  • 比較的早期のがんから陽性になることがある
     がんがまだ小さい段階でも陽性を示すことがあると報告されており、早期発見の一つの手がかりになる可能性を秘めています。
  • 他のマーカーを補う役割
     CEAやCA19-9が正常値であっても、p53抗体が陽性となることがあります。そのため、他のマーカーを補完する目的で検査されることがあります。
  • 対象となるがんの種類
     大腸がんのほか、食道がん、乳がん、頭頸部のがんなどでも陽性になることが知られています。

近年では、これまでのマーカーよりも高い精度で大腸がんを発見できる可能性のある、新しいタイプのマーカー研究も進んでいます。血液中の「マイクロRNA」という非常に小さな物質を調べる検査は、CEAやCA19-9よりも高い感度と精度を示すという研究報告もあり、今後の実用化が期待されています。

どの腫瘍マーカーも、単独でがんを確定診断することはできません。これらの検査は、あくまで体の中の状態を知るための「手がかり」です。最終的な診断には、大腸内視鏡検査などの画像検査が不可欠であることをご理解ください。

CEA高値を指摘されたら受けるべき精密検査

健康診断の結果で「CEA高値」と指摘されると、どなたでも不安になるものです。しかし、この数値が高いことが、すぐにがんの診断を意味するわけではありません。大切なのは、この結果を冷静に受け止め、原因を正確に突き止めるための精密検査へ進むことです。

腫瘍マーカーCEAは、いわば体からの「異常のサイン」かもしれません。しかし、そのサインが何を意味するのかは、より詳しい検査をしなければわかりません。精密検査は、そのサインの正体を探り、ご自身の体の状態を正しく理解するための重要なステップなのです。

 

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の目的と流れ

CEAは様々ながんで上昇しますが、特に大腸がんと関連が深いため、CEA高値を指摘された場合、まず大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が推奨されます。この検査は、大腸の内部を直接観察できる、最も確実な診断方法です。

大腸内視鏡検査の3つの重要な目的

  1. がんやポリープの直接観察
     大腸の粘膜を隅々まで詳細に観察します。
     ミリ単位の小さながんや、将来がんになる可能性のあるポリープを発見できます。

  2. 確定診断のための組織採取(生検)
     がんが疑われる病変が見つかった場合、その組織の一部を採取します。
     採取した組織を顕微鏡で調べることで、がん細胞の有無を確定できます。

  3. がんの予防(ポリープ切除)
     がん化する可能性のあるポリープはその場で切除することが可能です。
     ポリープを切除することは、将来の大腸がんを予防する最も効果的な方法です。

検査当日の一般的な流れ

心して検査を受けていただくための、一般的な流れをご説明します。

ステップ 内容
検査前日 消化の良い食事を心がけ、指定された時間に下剤を服用します。
検査当日 朝から絶食です。ご来院後、腸内を洗浄するための洗腸剤(約1〜2リットル)を数回に分けて飲みます。
検査直前 検査着に着替えます。ご希望に応じて、苦痛を和らげるための鎮静剤を使用し、リラックスした状態で検査を始めます。
検  査 肛門から細く柔軟な内視鏡を挿入し、大腸の一番奥まで丁寧に観察します。検査時間は通常10分〜20分程度です。
検査後 鎮静剤を使用した場合は、15分〜30分ほど専用のリカバリールームで休みます。その後、医師から画像をお見せしながら結果説明を行います。

胃カメラやCT検査を追加で行うケースとは

CEAは「臓器特異性が低い」マーカーです。これは、大腸がん以外のがんや、がん以外の病気でも数値が上がることがある、という意味です。そのため、状況に応じて他の検査を追加し、原因を多角的に探ることがあります。

追加検査が検討される主なケース

  • ケース1:大腸内視鏡検査で異常が見つからなかった場合
     CEAが高い原因が、大腸以外の場所にある可能性を考えます。
     胃がんや膵臓がんなどの消化器がん、あるいは肺がんなどの可能性を調べるために、追加検査を行います。

  • ケース2:大腸がんと診断された場合
     発見されたがんが、どの程度広がっているか(進行度)を正確に把握するために行います。
     特に、肝臓や肺などへの転移の有無を確認することは、治療方針を決める上で極めて重要です。

主な追加検査の種類と目的

それぞれの検査で、体の異なる部分を詳しく調べることができます。

検査の種類 主な目的とわかること
胃内視鏡検査(胃カメラ) 食道、胃、十二指腸の粘膜を直接観察し、胃がんなどの病気の有無を調べます。
CT検査(胸部・腹部) X線を用いて体の断面を撮影します。肺や肝臓、膵臓などへの転移や、他の臓器のがんの有無を広範囲に確認できます。リンパ節の腫れなども評価します。
腹部超音波(エコー)検査 超音波を使い、肝臓、胆のう、膵臓、腎臓などの状態を調べます。特に肝臓への転移を見つけるのに有用な検査です。

精密検査でわかる大腸がんの進行度(ステージ)とCEAの関係

もし精密検査で大腸がんと診断された場合、次に重要になるのが「進行度(ステージ)」です。CEAの数値は、このステージとある程度の相関関係があることが知られています。

一般的に、がんが進行し、大きくなったり転移したりするほどCEAの数値は高くなる傾向があります。しかし、これはあくまで傾向であり、個人差が非常に大きいことを理解しておく必要があります。

大腸がんの進行度(ステージ)とCEA陽性率の目安

がんの進行度は、がんの深さや転移の有無によって分類されます。

進行度(ステージ) がんの状態の目安 CEAが基準値を超える方の割合(陽性率)
ステージⅠ(早期) がんが腸の壁の浅い層にとどまっている状態 約27%
ステージⅡ がんが腸の壁の深い層まで達している状態 約67%
ステージⅢ がんがリンパ節に転移している状態 約74%
ステージⅣ がんが肝臓や肺など他の臓器に転移している状態(遠隔転移) 約88%

この表が示す通り、早期がんでは3人に2人以上がCEA正常値です。そのため、「CEAが低いから安心」とは言えません。逆に、数値が高くても必ずしも進行がんとは限らず、最終的な診断は内視鏡やCTなどの画像検査で総合的に判断します。

CEAが高くても異常なし(偽陽性)の可能性と割合

精密検査をすべて行っても、がんなどの重大な病気が見つからないケースは珍しくありません。これを「偽陽性(ぎようせい)」と呼びます。CEAの数値は非常にデリケートで、がん以外の様々な要因で上昇します。

CEAが上昇するがん以外の主な原因

  • 良性の病気

    • 消化器系の病気
       肝硬変、慢性肝炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、胃潰瘍など
    • その他の病気
       慢性的な肺の病気(COPD)、糖尿病、腎不全、甲状腺の病気など
       体内に何らかの炎症があるだけでも、一時的に数値が上がることがあります。
  • 生活習慣や体の状態

    • 喫煙
       CEAの値を上昇させる最も代表的な要因です。禁煙することで数値が低下することも期待できます。
    • 加齢
       年齢とともに、わずかに数値が上昇する傾向が見られます。
    • 妊娠中
       妊娠によっても一時的に高くなることがあります。

また、CEAの測定は複雑で、検査機関が用いる測定法によって結果にわずかなばらつきが生じることも知られています。そのため、一度の検査結果だけで判断せず、必要に応じて再検査を行い、数値の推移を見ることが大切です。

特に、自覚症状のない方が検診でCEA高値を指摘された場合、実際にがんが見つかる確率(陽性的中率)は数%程度という報告もあります。これは、CEAが高値と出た方の多くは、がん以外の原因である可能性が高いことを示しています。

したがって、CEA高値を指摘された際は、過度に心配しすぎないでください。しかし、「どうせ偽陽性だろう」と自己判断して精密検査を受けないのは危険です。「CEAが高い=がん」ではありませんが、ご自身の体を詳しく知るための大切な機会と捉え、必ず専門医に相談しましょう。

内視鏡検査を受ける上で知ってほしい事

腫瘍マーカーCEAが高いと指摘され、精密検査を勧められると、多くの方が「検査は苦しいのでは」と不安に思われることでしょう。特に内視鏡検査に対して、過去につらい経験をされたり、良くない評判を耳にしたりして、怖いイメージをお持ちかもしれません。

しかし、ご安心ください。近年の内視鏡技術は大きく進歩しており、患者さんの負担を最小限に抑えるための様々な工夫が凝らされています。CEAの数値だけではわからない「答え」を確かめるためにも、安心して検査に臨める環境が整っています。

ここでは、精密検査の主役である内視鏡検査を、より安心して受けていただくために知っておいてほしい大切なポイントを、専門医の視点から詳しく解説します。

鎮静剤を使用して苦しくない内視鏡検査が可能

内視鏡検査への不安の多くは、「吐き気」や「お腹の張り」といった身体的な苦痛から生じます。この苦痛を和らげるため、現在多くの医療機関では鎮静剤(静脈麻酔)を用いた内視鏡検査を標準的に行っています。

鎮静剤は、点滴から薬剤を投与する方法です。うとうととリラックスした、あるいは浅く眠っているような状態で検査を受けることができます。全身麻酔とは異なり、完全に意識がなくなるわけではありませんが、不安や緊張が和らぎ、検査に伴う苦痛をほとんど感じることなく終えることが可能です。

項目 鎮静剤を使用しない場合 鎮静剤を使用する場合
検査中の意識 はっきりしている うとうとしている、または眠っている
苦痛の感じ方 吐き気やお腹の張りを感じやすい ほとんど感じないことが多い
身体の緊張 緊張で無意識に体に力が入りやすい 全身がリラックスしている
検査後の制限 特になし 30分~1時間程度の休憩が必要
当日の車・バイク・自転車の運転は不可

鎮静剤の使用は、患者さんの負担を軽減するだけでなく、実は診断の精度を高める上でも大きなメリットがあります。患者さんの体の力が抜けていると、内視鏡の挿入がスムーズになり、医師はより丁寧な観察に集中できるのです。

特に、粘膜表面の微細な血管の模様などを特殊な光で強調して観察する**画像強調内視鏡(IEE)**という技術を用いる際、このリラックスした状態が非常に重要になります。従来の白色光では見逃されがちだった平坦な病変や微小ながんを発見する上で、IEEは強力な武器となります。鎮静剤は、この高度な観察技術の能力を最大限に引き出し、見落としを防ぐためにも役立っているのです。

胃カメラと大腸カメラは同日に行う事が可能

CEAは、大腸がんだけでなく胃がんなど他の消化器のがんでも上昇するため、原因を特定するために胃と大腸の両方を詳しく調べる内視鏡検査が必要になることがあります。通常であれば、2回に分けて来院していただく必要がありますが、医療機関によっては胃カメラと大腸カメラを同じ日に行うことが可能です。

同日検査には、患者さんにとって多くのメリットがあります。

  • 時間的な負担の軽減
     通院が1回で済むため、お仕事や家庭の都合がつきやすくなります。
  • 身体的な負担の軽減
     検査前の食事制限や、大腸カメラのために約2リットルの下剤を飲むのが1回で済みます。
  • 精神的な負担の軽減
     検査に対する不安や緊張を、2回に分けて経験する必要がありません。

近年、血液中のマイクロRNAという微小な物質を調べることで、CEAよりも高い精度で大腸がんを発見できる可能性を示唆する研究も進んでいます。しかし、現時点ではこれらの新しい検査はまだ研究段階です。

がんを最終的に確定診断するためには、内視鏡で消化管の内部を直接目で見て、必要に応じて組織を採取し顕微鏡で調べる病理検査が、今も最も確実で重要な方法です。

だからこそ、検査の負担を減らし、効率的に診断を進められる同日検査は、非常に理にかなった選択肢と言えるでしょう。ご希望の場合は、検査を予約される際に、実施可能かどうか医療機関へお気軽にご確認ください。

大腸がんと腫瘍マーカーQ&A

大腸がんや腫瘍マーカーについて、患者さんから日々の診療でよくいただくご質問に、専門医の立場からお答えします。

Q1. CEAが高いと言われました。やはり大腸がんでしょうか?

A. いいえ、CEAの数値が高いことが、直ちに大腸がんを意味するわけではありません。

CEAは、がん以外の様々な体の状態に反応して数値が上がることがあります。これを「偽陽性(ぎようせい)」と呼びます。

  • がん以外の病気
     肝炎、膵炎、糖尿病、潰瘍性大腸炎などの炎症性の病気
  • 生活習慣など
     特に長期間の喫煙は、CEAの数値を上昇させる代表的な要因です。

健康診断などでCEAの高値を指摘されても、がんと決まったわけではありません。まずは落ち着いて専門医に相談し、原因を特定するための大腸内視鏡検査(大腸カメラ)などの精密検査を受けることが大切です。

Q2. CEAで大腸がんの早期発見はできますか?

A. 残念ながら、CEAは早期のがんを発見する目的にはあまり向いていません。

ある研究では、初めて大腸がんと診断された方のうち、手術前にCEAが高値を示したのは約35%だったと報告されています。これは、早期がんの約3人に2人は、CEAが正常値のまま見逃されてしまう可能性があるということです。

大腸がんの早期発見において最も確実な方法は、大腸内視鏡検査です。近年の内視鏡技術は進歩しており、特殊な光で粘膜を観察する**画像強調内視鏡(IEE)**などを用いることで、ごく初期の微小ながんや、がんになる前のポリープを見つけることが可能になっています。

Q3. 大腸がんの治療中にCEAを測るのはなぜですか?

A. 治療の効果を確認し、再発をいち早く見つけるための重要な「道しるべ」になるからです。

大腸がんの治療において、CEAは非常に有用な指標となります。

  • 治療効果の判定
     手術や抗がん剤治療によってがんが小さくなると、CEAの数値も下がることが多く、治療が効いているかどうかの客観的な目安になります。

  • 再発の監視(モニタリング)
     手術でがんを取り除いた後にCEAの数値が再び上昇してきた場合、目に見えない小さながんが再発したサインである可能性があります。実際、再発した大腸がん患者さんの約82%でCEAが上昇したという研究報告もあり、再発の早期発見に大きく貢献します。

Q4. 大腸がんは治りますか?

A. はい、早期に発見し、適切な治療を受ければ治る可能性が非常に高い病気です。

大腸がんの治りやすさは、がんの進行度(ステージ)によって大きく変わります。以下の表は、治療開始から5年後に生存されている方の割合を示したものです。

ステージ 5年相対生存率の目安
Stage Ⅰ 94.5%
Stage Ⅱ 88.4%
Stage Ⅲ 77.3%
Stage Ⅳ 18.7%

この表が示すように、がんが腸の壁の浅い層にとどまっているステージⅠの段階で発見できれば、9割以上の方が治癒を目指せます。だからこそ、症状がなくても定期的に検査を受けることが非常に重要なのです。

Q5. 大腸がんを予防する方法はありますか?

A. はい、生活習慣の改善と定期的な内視鏡検査が、科学的に証明されている有効な予防法です。

  • 生活習慣の見直し

    • バランスの取れた食事(食物繊維を多く摂る)
    • 赤身肉や加工肉(ベーコン、ソーセージなど)の摂取を控える
    • 適度な運動を習慣にする
    • 禁煙し、お酒は適量にする
  • 大腸内視鏡検査によるポリープ切除
     大腸がんの多くは、「ポリープ」という良性のイボが時間をかけてがん化することで発生します。内視鏡検査でこのポリープを発見し、がんになる前に切除することが、最も確実な大腸がんの予防法と言えます。

近年、血液中の「マイクロRNA」という微小な物質を調べることで、CEAよりも高い精度で大腸がんを見つけられる可能性を示唆する研究も進んでいます。しかし現時点では、生活習慣の見直しと定期的な内視鏡検査が、ご自身でできる最も有効な予防策です。

 

まとめ

今回は、腫瘍マーカーCEAと大腸がんの関係について詳しく解説しました。

健康診断などでCEAが高値を指摘されると、誰もが不安になるものです。しかし、最も大切なことは、その数値だけで一喜一憂しないことです。CEAはあくまでがんの診断を助ける「手がかり」の一つであり、喫煙や他の病気でも上昇します。逆に、早期のがんでは数値が上がらないことも少なくありません。

CEA高値という結果は、ご自身の体と向き合うための大切な機会です。不安を抱えたままにせず、まずは専門医に相談し、原因を正確に突き止めるための大腸内視鏡検査を受けましょう。近年の内視鏡検査は、鎮静剤を使うことで楽に受けられます。正しい知識を持って精密検査に臨むことが、あなたご自身の健康を守るための最も確実な一歩となります。

参考文献

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  4. Sakamoto T, Akiyama S, Narasaka T, Tuchiya K. Advancements and limitations of image-enhanced endoscopy in colorectal lesion diagnosis and treatment selection: A narrative review. DEN open 6, no. 1 (2026): e70141.
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