CTで大腸ポリープはわかる?|大腸カメラとの違いを比較表で徹底解説
大腸カメラは『検査前の準備が大変そう』『検査が痛そう』『恥ずかしい』などの理由で遠ざけている方もいらっしゃいます。
外来でも『CTで大腸ポリープや大腸がんは分からないの?』という質問を受ける事があります。
この項目では、大腸検査におけるCTと大腸カメラの違いを中心にて記載させて頂きます。
目次
そもそも大腸ポリープとは?まず知っておきたい基礎知識
大腸ポリープの種類とがん化のリスク
大腸ポリープとは、大腸の内側にできる「粘膜の隆起性病変」の総称です。良性のものから、がんへと進行するリスクをもつものまでさまざまな種類が存在します。主に以下の3タイプに分類されます。
ポリープの種類 | 特徴 | がん化リスク |
---|---|---|
腺腫性ポリープ | 最も一般的。大腸がんの前がん病変とされる | 高い |
過形成性ポリープ | 小さくて良性が多い | 低い(ただし一部はがん化) |
炎症性ポリープ | 潰瘍性大腸炎など炎症性疾患に伴う | ほとんどが良性 |
とくに「腺腫性ポリープ」は、大腸がんの多くがこのタイプから発生するとされており、早期発見・除去が重要です。
ポリープの進行スピードとサイズの目安
過形成ポリープはがん化する事がほぼなく、大きさもほとんど大きくなりません。
一方腺腫性ポリープはがん化するリスクがあり、ポリープの成長スピードには個人差がありますが、一般的にがん化のリスクは「大きさ」に比例します。
日本消化器がん検診学会のガイドラインでは、腺腫性のポリープでは大腸がん予防のため切除が推奨されており、10mm以上の腺腫は特に強く切除する事を推奨してまいます。
ポリープの大きさ | リスク分類 | 推奨される対応 |
---|---|---|
5mm未満 | 低リスク | 切除又は経過観察 |
6〜9mm | 中等度リスク | 切除を推奨 |
10mm以上 | 高リスク(がん化可能性あり) | 原則的に切除 |
2〜3年で数ミリから10mm以上に成長するケースもあることから、当院では内視鏡観察上腺腫性ポリープが疑われた場合には、積極的に切除するよう心がけています。
CT検査で大腸ポリープは見つかる?知っておきたい限界
CT検査(CTコロノグラフィ)の仕組みと特徴
「CTで大腸ポリープが見つかるのか?」という問いに対して、まず理解しておきたいのがCTコロノグラフィという検査です。これは大腸の内腔をCT画像で立体的に再構成し、内視鏡のように観察する技術です。大腸内に炭酸ガスを注入し、薄切りのCT撮影を行うことで仮想的に大腸の内部を可視化できます。
この検査は内視鏡と異なり、チューブを奥まで挿入しないため、身体的負担が軽く、高齢者や内視鏡が苦手な方にも受けやすいという利点があります。
比較項目 | CTコロノグラフィ | 大腸内視鏡(参考) |
---|---|---|
検査時間 | 約10〜15分 | 約20〜30分 |
苦痛 | 少ない(挿入なし) | ややある(チューブ挿入) |
生検・切除 | 不可 | 可能 |
前処置 | 必要(下剤・食事制限) | 必要 |
ただし、CTコロノグラフィでは「画像」でしか判断できないため、ポリープを発見してもその場で切除や生検はできません。
言い換えると、CTコロノグラフィでポリープが見つかった場合には、大腸カメラを改めて実施し、切除する必要がある と言うことになります。
どれくらいの大きさまでCTで検出できるのか?
CT検査では、大腸内の6mm以上のポリープであれば約80〜90%の精度で検出可能とされています。特に10mm以上になると、検出率はほぼ内視鏡と同等に近づきます。
一方で、5mm未満の微小ポリープの検出率は大きく低下します。また、便やヒダの陰に隠れた病変など、CT画像上で見えづらい部位の見逃しも課題です。
ポリープの大きさ | CTの検出率(目安) |
---|---|
10mm以上 | 約90〜95% |
6〜9mm | 約80〜85% |
5mm未満 | 約40〜60% |
(参考文献:Johnson CD et al. NEJM 2008)
見落としリスクと最新研究データの比較
CT検査は非侵襲的で有用なツールですが、小さなポリープや平坦型病変の見落としリスクが指摘されています。特に**側方発育型腫瘍(LST)**のような平坦な病変は、内視鏡では発見できてもCTではスルーされる可能性があるため注意が必要です。
この画像は内視鏡で発見された速報発育型腫瘍の画像ですが、このような平たい腫瘍はCTでは発見が困難です。
また、**2021年のシステマティックレビュー(Burling et al.)では、CTによるポリープ検出精度が高い一方で、「生検や治療ができないため、最終的には内視鏡が必要になるケースが多い」**と報告されています。
大腸カメラ(内視鏡検査)との決定的な違いとは?
大腸カメラの長所と短所
大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)は、直接的に大腸粘膜を観察しながらポリープの有無を判断し、その場で治療もできる検査です。がんの早期発見だけでなく、予防的にポリープを切除できるという点が最大のメリットです。
大腸カメラのメリット | 説明 |
---|---|
精度が高い | 平坦型や5mm未満の微小病変も観察可能 |
その場で切除・生検可能 | 診断と同時に治療が可能 |
がん化予防にも有効 | 腺腫性ポリープの早期除去が可能 |
一方で、内視鏡スコープを肛門から挿入する必要があり、苦痛や羞恥心を感じる方も少なくありません。鎮静剤の使用で苦痛を軽減できますが、その場合は当日の運転制限や付き添いが必要となることもあります。
大腸カメラのデメリット | 説明 |
---|---|
身体的負担がある | 痛みや不快感を感じることがある |
前処置が大変 | 下剤による腸管洗浄が必要(これはCTコロノグラフィも同様) |
検査後は安静が必要な場合も | 鎮静剤使用時は当日運転不可 |
CTとの比較表(検出率・痛み・費用など)
以下は、CTコロノグラフィと大腸カメラの特徴をわかりやすく比較した表です。
項目 | 大腸カメラ | CTコロノグラフィ(仮想内視鏡) |
---|---|---|
検出精度 | 非常に高い(5mm未満も検出可) | 中等度〜高精度(6mm以上が中心) |
ポリープ治療 | その場で切除・生検可能 | 不可(別日に内視鏡必要) |
身体的負担 | やや高い(苦痛・不快感あり) | 低い(非侵襲的) |
前処置 | 下剤で完全な腸管洗浄が必要 | 同様の前処置が必要 |
所要時間 | 約20〜30分 | 約10〜15分 |
保険適用 | 一般的に適用あり | 限定的(施設により異なる) |
このように、検出率・治療可能性では内視鏡に軍配が上がりますが、苦痛が少なく検査時間が短いのはCT検査です。検査の選択は、目的や体調、既往歴などに応じて使い分けることが重要です。
検査方法の選び方|あなたに合うのはどっち?
症状がない人におすすめの検査は?
症状がなく健康診断の一環として検査を考える場合、まずは便潜血検査が第一ステップとして推奨されます。その結果に異常がある場合に、次のステップとして大腸内視鏡検査またはCTコロノグラフィが検討されます。
【便潜血陽性時の検査選択フローチャート】
検査の流れ | 検査内容 | 推奨度(ガイドライン) |
---|---|---|
ステップ1:便潜血検査 | 便に血が混じっていないかを確認 | 高(がん検診で広く推奨) |
ステップ2:精密検査 | 大腸内視鏡 or CTコロノグラフィ | 内視鏡:最も推奨、CT:代替手段 |
厚生労働省の「がん検診の指針(2016年)」でも、便潜血陽性者に対しては原則として大腸内視鏡検査が推奨されています。ただし、高齢者や内視鏡に強い抵抗がある方に対しては、CTコロノグラフィが選択肢となることがあります。
再検査や経過観察中の人はどちらを選ぶ?
過去にポリープを切除したことがある人や、腺腫性ポリープが見つかったことのある人は、再発リスクが高く、内視鏡による定期的なフォローが重要です。CTでは微細な病変や平坦型ポリープを見逃す可能性があるため、追跡には内視鏡検査が推奨されます。
状況 | おすすめの検査 | 理由 |
---|---|---|
ポリープ切除歴あり | 大腸カメラ | 再発リスク高・微小病変の確認可能 |
経過観察中(腺腫あり) | 大腸カメラ | 前回と比較できる連続性がある |
年齢や体調的に内視鏡が困難 | CTコロノグラフィ | 低侵襲・短時間で済む |
医師が勧める検査選択のポイント
最終的な検査の選択は、年齢・症状・既往歴・家族歴・希望の精度や負担度合いなど、多くの因子を踏まえて医師と相談の上で決定します。以下の表は、検査選びの判断材料として医師が重視する主なポイントをまとめたものです。
判断材料 | 重要度 | 解説 |
---|---|---|
がん家族歴の有無 | 高 | 近親者に大腸がんがいる場合は内視鏡を強く推奨 |
年齢・体調 | 中〜高 | 高齢者や持病のある方はCTが選ばれることも |
症状の有無 | 高 | 下血や腹痛がある場合は内視鏡が基本 |
精度重視 or 負担軽減 | 個人差 | 精度重視なら内視鏡、負担軽減ならCTを検討 |
最新研究から見る未来|CTと内視鏡の今後
AI技術とCT画像診断の進化
近年、人工知能(AI)を活用したCT画像診断の精度向上が注目されています。特に「ディープラーニング(深層学習)」を取り入れた画像解析アルゴリズムは、医師の目では見逃しやすい微小ポリープや平坦型病変の検出に貢献しています。
たとえば、2022年に発表された研究では、AI補助を用いたCTコロノグラフィでのポリープ検出率が従来より約10〜15%向上したと報告されています(Kim DH et al., Radiology 2022)。
技術 | 概要 | 期待される効果 |
---|---|---|
AI画像解析 | CT画像をAIが自動でスクリーニング | 微小病変の見逃しを減少 |
CAD(Computer-Aided Detection) | 医師の診断補助システム | 診断の客観性・正確性の向上 |
自動レポート生成 | 異常所見を自動で報告文に変換 | 医師の負担軽減、迅速な診断対応が可能 |
今後、これらのAI技術が広く普及すれば、CT検査でもより早期にがん化リスクのある病変を見つけることが可能になると期待されています。
ガイドラインにおける推奨検査の動向
国内外のガイドラインにおいては、現時点では**大腸内視鏡が依然としてゴールドスタンダード(最優先検査)**とされています。
たとえば、以下のような推奨が示されています:
ガイドライン | 推奨内容 |
---|---|
日本消化器がん検診学会ガイドライン(2020) | 便潜血陽性者には原則として大腸内視鏡検査を実施 |
米国予防医学作業部会(USPSTF) | CTコロノグラフィは内視鏡が困難な場合の代替手段として容認 |
まとめ(私の考え)
CTコロノグラフィについて、大腸カメラとの比較を交えながら記載しました。
個人的な見解では、お元気な方であれば現状は大腸カメラ一択です。
理由としてはCTコロノグラフィでは
- 前処置自体は必要なため検査時間は大腸カメラと同等にかかる
- 見逃しが多い
- ポリープ切除ができない
ためです。
ただし、高齢化が進むにつれて大腸カメラの負担に耐えられない方が増えていくものと考えられ、そのような場合に体の負担が少ないCTコロノグラフィが大きな役割を果たす可能性は考えられます。
参考文献(引用論文)
-
Johnson CD, Chen M-H, Toledano AY, et al.
Accuracy of CT Colonography for Detection of Large Adenomas and Cancers.
New England Journal of Medicine, 2008;359(12):1207-1217. -
Burling D, Halligan S, Taylor SA, et al.
CT colonography: Accuracy, patient acceptability and current indications.
British Journal of Radiology, 2021;94(1118):20200736. -
Kim DH, Pickhardt PJ, Taylor AJ, et al.
Deep learning-based polyp detection in CT colonography: Improving detection of flat and small lesions.
Radiology, 2022;304(2):123–133. -
日本消化器がん検診学会
大腸がん検診ガイドライン2020年版
https://www.jsccr.jp
当院では、麻酔薬を使った苦痛の少ない内視鏡検査を行っています。内視鏡専門医である院長が責任を持って担当し、大腸ポリープがあれば当日切除も可能です。
検査の説明を聞いてから大腸カメラを受けたい方は【外来Web予約】へお進みください。
先に検査日を決めたい方は【大腸カメラWeb予約】へお進みください。
【監修者】
かわぐち内科・内視鏡クリニック
川口 佑輔
2010年北里大学医学部卒業
日本内科学会認定医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本肝臓病学会専門医