なぜ下痢になるの?下痢の原因を徹底解説

お腹の調子がすぐれず、突然の下痢や長引く下痢にお困りではありませんか。下痢は日常生活に大きな影響を及ぼし、不安を感じることも少なくない症状です。
単なる食べ過ぎや冷えが原因と思われがちですが、実はその原因は非常に多岐にわたります。食生活や薬の影響といった一時的なものだけでなく、食中毒、さらには過敏性腸症候群や大腸がんといった、体からの大切なサインである病気が隠れている可能性もあるのです。
この記事では、なぜ下痢になるのか、その多様な原因とメカニズムを医師の視点から徹底解説。ご自身の症状に適切な対処をする上で重要な情報を提供し、必要に応じて医療機関を受診する大切なきっかけとなることでしょう。
目次
- 1 なぜ下痢になるの?多様な原因とメカニズム
- 2 危険な下痢のサインを見逃さない!注意すべき症状と受診の目安
- 3 下痢の診断から治療、根本的な改善策
- 4 下痢Q&A
- 5 まとめ
- 6 参考文献
なぜ下痢になるの?多様な原因とメカニズム
お腹の調子がすぐれず、下痢が続いてお困りではありませんか。下痢は日常生活に大きな影響を及ぼし、不安を感じることも少なくない症状です。実は、元気な方でも下痢が続く原因は、非常に多岐にわたります。食生活や薬の影響といった一時的なものから、食中毒、さらには過敏性腸症候群や大腸がんといった、体からの大切なサインである病気が隠れている可能性もあります。
下痢は、便に含まれる水分が異常に多くなった状態を指します。腸内での水分吸収がうまく行われなかったり、逆に水分が過剰に分泌されたりすることで発生する現象です。なぜ下痢になってしまうのか、そのメカニズムや多様な原因を知ることは、ご自身の症状に適切な対処をする上で非常に重要です。また、必要に応じて医療機関を受診する大切なきっかけにもなります。
ご自身の症状と照らし合わせながら、一緒に下痢の原因を探っていきましょう。私たち医師は、患者さんの下痢の原因を突き止めるために、生活習慣から服用している薬、そして隠れた病気まで、多角的に診断を進めていきます。
感染性の下痢:ウイルス・細菌・寄生虫によるもの
感染性の下痢は、最も身近で遭遇しやすいタイプの一つです。ウイルス、細菌、寄生虫といった病原体が、食べ物や飲み物、あるいは人との接触を通じて体内に侵入することで引き起こされます。これらの病原体が腸の中で増殖したり、有害な毒素を出したりすることで、腸の粘膜に炎症が起こります。結果として、腸が水分を過剰に分泌したり、吸収する能力が低下したりして、便の水分量が増えて下痢となるのです。
主な感染性の原因は、以下の通りです。
ウイルス性腸炎
ノロウイルスやロタウイルスが代表的です。特に冬場に流行しやすいという特徴があります。激しい吐き気や嘔吐、発熱を伴うことが多く見られます。感染力が非常に強く、ご家庭内や保育園、学校などの集団生活の場で一気に広がる傾向があります。感染性下痢では、病原体を体外へ排出しようとする身体の防御反応として下痢が起こります。
そのため、自己判断で安易に下痢止め薬を使用すると、病原体が体内に長くとどまってしまい、かえって症状が悪化する可能性があります。
私たち消化器内科医は、ウイルス性の下痢に対しては原則として下痢止め薬を処方せず、水分補給を中心とした対症療法を行うことが多いです。
細菌性腸炎(食中毒)
サルモネラ菌、カンピロバクター、病原性大腸菌(O-157など)、腸炎ビブリオなどが原因となります。加熱が不十分な肉や魚介類、生卵などを介した食中毒としてよく知られています。発熱や激しい腹痛、血便を伴うこともあり、重症化するケースもあるため注意が必要です。
特にO-157のような病原性大腸菌は、溶血性尿毒症症候群という重篤な合併症を引き起こすことがあります。激しい腹痛や血便、高熱を伴う場合は、迷わず医療機関を受診してください。
寄生虫性腸炎
アメーバ赤痢やジアルジア症などが知られています。特に海外旅行中や、衛生環境の整っていない地域での飲食物の摂取が原因となることがあります。長期間にわたって下痢が続いたり、腹部の不快感が伴ったりすることが特徴です。一般的な細菌性やウイルス性の下痢と異なり、治療に時間がかかる場合があります。
食生活や生活習慣が引き起こす下痢(食べ過ぎ、飲み過ぎ、冷えなど)
毎日の食生活や生活習慣は、腸の健康状態に非常に大きな影響を与えます。私たちが経験する一時的な下痢の多くは、このような日常的な要因が原因となっていることが少なくありません。
食べ過ぎ・飲み過ぎ
一度にたくさんの食べ物を摂取すると、消化器官に大きな負担がかかります。特に脂質の多い食事や食物繊維が豊富な食事は、消化に時間がかかったり、腸の動きを活発にしすぎたりして、下痢につながりやすい傾向があります。アルコールの過剰摂取は、腸の粘膜を直接刺激します。
また、腸のぜん動運動(食べ物を送り出す動き)を異常に活発にさせ、腸での水分吸収を阻害するため、下痢の原因となることがあります。飲酒量を減らすだけでも下痢が改善するケースは多く、私たちもよく患者さんに生活習慣の改善点としてお話しします。
冷え
お腹が冷えると、腸への血流が悪くなります。これにより、腸の動きが低下したり、逆に過敏になったりして、下痢を引き起こすことがあります。冷たい飲み物や食べ物の摂りすぎも、同様の影響を及ぼすため注意が必要です。特に夏場でも、エアコンが効いた部屋で冷たいものを摂りすぎると、お腹を壊しやすくなります。
香辛料や刺激物の摂りすぎ
唐辛子などの香辛料や、カフェインを多く含む飲み物(コーヒー、エナジードリンクなど)は、腸の粘膜を刺激します。腸の動きを促進しすぎることで、下痢につながることがあります。「辛いものを食べるとお腹がゆるくなる」という方は、刺激物の摂りすぎに注意が必要です。
不規則な生活習慣
睡眠不足や疲労の蓄積は、自律神経のバランスを乱す大きな要因です。自律神経は、私たちの意思とは関係なく消化吸収をコントロールしているため、そのバランスが乱れると腸の正常な働きに悪影響を与え、下痢を引き起こすことがあります。規則正しい生活を送ることは、腸の健康維持にも繋がります。
このような食生活や生活習慣が原因の下痢は、日頃のちょっとした見直しで改善されることが非常に多いです。ご自身の生活を振り返り、改善できる点がないか確認してみましょう。
ストレスや精神的な要因による心因性の下痢
「緊張するとお腹が痛くなる」「ストレスを感じると決まって下痢になる」といった経験はありませんか。実は、脳と腸は非常に密接な関係にあり、私たちはこれを「脳腸相関(のうちょうそうかん)」と呼んでいます。脳と腸は、互いに影響し合っているため、心の状態が腸の働きにダイレクトに影響を及ぼすことがあります。
脳と腸の密接な関係
脳と腸は、自律神経やホルモン、さらには免疫細胞などを介して常に情報交換をしています。脳がストレスを感じると、その情報が自律神経を通じて瞬時に腸に伝わります。これにより、腸の動きが過剰になったり、逆に動きが鈍くなったりすることがあります。また、腸の感覚が過敏になり、わずかな刺激でも痛みや不快感を感じやすくなることもあります。
自律神経の乱れ
私たちの体内には、活動時に優位になる「交感神経」と、リラックス時に優位になる「副交感神経」という二つの自律神経があります。ストレスによってこの自律神経のバランスが崩れると、腸の正常な働きが妨げられます。特に、副交感神経が優位になりすぎると腸の動きが活発になりすぎて、下痢を引き起こしやすくなります。
心因性下痢の具体例
大事な会議や試験の前、あるいは通勤中の満員電車の中など、特定の状況で急にお腹が痛くなり、下痢をしてしまう。精神的な緊張や不安が長期間続いている時に、慢性的にお腹の調子を崩しやすい。このような症状が長期間続き、検査で特に異常が見られない場合、過敏性腸症候群(IBS)という病気が考えられます。過敏性腸症候群については、別の項目で詳しく解説します。
ストレスを完全に避けることは難しいですが、ご自身なりのストレス管理法を見つけることが、心因性の下痢の改善につながることがよくあります。
消化酵素の異常による下痢(慢性膵炎など)
私たちが食べたものは、栄養として体に吸収されるまでに「消化酵素」によって細かく分解されます。この消化酵素の働きが低下すると、食べ物が十分に消化されず、未消化のまま腸に運ばれてしまいます。これが下痢の原因となることがあります。
消化酵素の重要な役割
消化酵素は、食べ物に含まれる三大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)を、体が吸収しやすい小さな分子に分解する働きをします。これらの消化酵素は、主に膵臓から分泌される「膵液(すいえき)」に豊富に含まれています。
消化酵素異常による下痢のメカニズム
膵臓の機能が低下するなどして消化酵素の分泌量が減ると、食べたものが十分に消化されずに腸に送られてしまいます。特に脂質は、消化酵素である「リパーゼ」という酵素によって分解されないと、そのままの形で腸を通過してしまいます。未消化の脂質が大量に腸内に存在すると、腸が水分を吸収しにくくなったり、逆に水分を多く分泌したりするため、結果として下痢を引き起こします。このタイプの下痢は、便が白っぽく、脂っこく、水に浮くような「脂肪便」となることが特徴です。
主な原因疾患:慢性膵炎
慢性膵炎は、膵臓に繰り返し炎症が起こり、徐々に膵臓の組織が破壊されていく病気です。膵臓の機能が低下することで消化酵素の分泌が減少し、脂肪便を伴う下痢がよく見られます。慢性膵炎の主な原因としては、長期間にわたるアルコールの過剰摂取や胆石などが挙げられます。
消化酵素の異常による下痢は、ご自身で判断するのが難しいため、脂っこい便が続く、体重が減少してきたなどの気になる症状があれば、消化器内科での検査が非常に重要です。
薬の副作用が原因で起こる下痢(抗生物質など)
薬は病気を治療するために大変役立つものですが、時に思わぬ副作用として下痢を引き起こすことがあります。特に抗生物質による下痢は、診療の現場でもよく見られるケースです。
抗生物質による下痢のメカニズム
抗生物質は、体内の細菌を殺すことで感染症を治療する薬です。しかし、病気を引き起こす「悪い細菌」だけでなく、腸の中にいる「善玉菌」と呼ばれる良い働きをする細菌まで殺してしまうことがあります。これにより、腸内の細菌のバランス(これを「腸内フローラ」と呼びます)が崩れてしまいます。腸内フローラのバランスが乱れると、消化吸収の働きが低下したり、下痢を引き起こす特定の悪い細菌が増殖しやすくなったりして、下痢につながるのです。ひどい場合には、「クロストリジウム・ディフィシル」という特定の細菌が増殖し、「偽膜性腸炎(ぎまくせいちょうえん)」という重い腸炎を引き起こすこともあります。
その他の薬剤による下痢
- マグネシウム製剤:便秘薬としてよく使われますが、必要以上に服用すると腸内の水分量を増やしすぎて下痢になります。
- 糖尿病治療薬:一部の血糖値を下げる薬は、腸の動きを活発にしたり、消化吸収に影響を与えたりして下痢を引き起こすことがあります。
- 高血圧治療薬:特定の種類の降圧剤(例:ACE阻害薬)でも、稀に下痢が報告されることがあります。
- 抗がん剤:抗がん剤は全身の細胞に作用するため、腸の粘膜にもダメージを与え、激しい下痢を引き起こすことがよくあります。
薬を飲み始めてから下痢が続く場合は、自己判断で服用を中止せず、必ず薬を処方した医師や薬剤師に相談してください。私たち医師や薬剤師は、患者さんの症状に合わせて薬の種類や量を調整したり、整腸剤を併用したりすることで改善できる場合があることを知っています。
食物アレルギーや乳糖不耐症による下痢
特定の食べ物を摂取した後に、いつも下痢をするという経験はありませんか。もしかしたら、その原因は食物アレルギーや乳糖不耐症かもしれません。これらは、体が特定の成分をうまく消化できなかったり、あるいは異物と認識して過剰に反応してしまったりすることで起こる下痢です。
食物アレルギーによる下痢
食物アレルギーは、本来は身体にとって無害なはずの食べ物の成分(これを「アレルゲン」と呼びます)に対して、体の免疫システムが過剰に反応してしまう状態です。アレルゲンを摂取すると、免疫細胞から「ヒスタミン」などの化学物質が放出されます。これらの物質が腸の炎症や蠕動(ぜんどう)運動(腸が収縮して内容物を送る動き)の亢進を引き起こし、下痢や腹痛などの消化器症状を招きます。
代表的なアレルゲンには、卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツ、甲殻類(エビ、カニ)などがあります。下痢だけでなく、皮膚のかゆみやじんましん、喘息のような呼吸器症状、時には「アナフィラキシー」と呼ばれる重い全身症状を引き起こすこともあります。食物アレルギーは、適切な診断とアレルゲンの特定が非常に重要です。
乳糖不耐症による下痢
乳糖不耐症は、牛乳や乳製品に含まれる「乳糖(ラクトース)」という糖を分解する酵素「ラクターゼ」が不足しているために起こります。ラクターゼが不足していると、摂取した乳糖が小腸で十分に消化・吸収されません。未消化の乳糖はそのまま大腸に運ばれてしまいます。大腸にたどり着いた乳糖は、腸内細菌によって分解される過程でガスを大量に発生させます。
また、乳糖の強い浸透圧によって、大腸内に水分が引き込まれてしまうため、お腹の張りや「ゴロゴロ」といった不快感、そして下痢を引き起こします。乳糖不耐症には、生まれつき酵素が少ない「先天性」と、加齢とともに酵素が減る「後天性」がありますが、多くの場合が後天性です。特定の乳製品を避けることで症状は改善することが多いため、心当たりのある方は、どの食品が原因になっているか確認してみることをお勧めします。
危険な下痢のサインを見逃さない!注意すべき症状と受診の目安
お腹の不調で下痢が続くと、日常生活に大きな影響が出ますよね。多くの場合、下痢は一時的なもので、自然に治まることも少なくありません。しかし、中には体のSOSサインとして、重大な病気が隠れている可能性もあります。私たち医師は、患者さんの下痢の症状と向き合う際、ただの「お腹の不調」として片付けることはありません。皆さんの大切な体を守るため、どのような場合に注意が必要なのか、また、どのような時に医療機関を受診すべきなのかをしっかりとお伝えします。ご自身の症状と照らし合わせながら、一緒に確認していきましょう。
急性の下痢と慢性の下痢、それぞれの特徴や原因疾患とリスク
下痢は症状が続く期間によって、「急性(きゅうせい)」と「慢性(まんせい)」に分類されます。ご自身の症状がどちらに当てはまるのかを知ることは、適切な対処や受診を考える上でとても大切です。
急性の下痢
- 特徴:比較的短い期間で症状が現れ、数日から1週間程度で治まることが多いです。多くは、いわゆる「食あたり」や「胃腸炎」として経験するものです。
- 主な原因:
- 感染性:ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルスなど)や細菌(サルモネラ菌、病原性大腸菌O-157など)による胃腸炎や食中毒が一般的です。
- 非感染性:食べ過ぎや飲み過ぎ、冷たいものの摂りすぎ、体調不良、特定の薬の副作用など、日常的な要因も多くあります。
- リスク:短期間でも水分と電解質(体に必要なミネラル)が大量に失われるため、脱水症状や電解質バランスの乱れを引き起こすことがあります。特に小さなお子さんやご高齢の方、心臓や腎臓などに持病がある方は、急激に体調が悪化する危険があるため注意が必要です。
慢性の下痢
- 特徴:2週間以上下痢が続いている場合や、良くなったり悪くなったりを長期間繰り返す場合を指します。「元気なのに下痢が続く」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
- 主な原因:
- 過敏性腸症候群(IBS):ストレスや自律神経の乱れが関係すると考えられています。
- 検査をしても腸に炎症や異常は見つからないことが多いです。
- 炎症性腸疾患:腸に炎症が起こる病気で、潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)やクローン病などが代表的です。
- 大腸がん:進行した大腸がんが原因で下痢や便秘を繰り返したり、便が細くなったりすることもあります。
- 甲状腺機能亢進症:甲状腺ホルモンが過剰になることで、腸の動きが活発になり下痢を引き起こすことがあります。
- その他の病気:消化酵素の異常(膵臓の病気など)、特定の薬の長期服用なども原因となります。
- リスク:長引く下痢は、脱水や栄養不良だけでなく、貧血や意図しない体重減少を招くことがあります。また、過敏性腸症候群や大腸がんといった、潜在的な病気の発見が遅れるリスクがあるため、自己判断せずに医療機関を受診することが非常に重要です。
下痢と同時に現れる危険な随伴症状(発熱、吐き気、血便、激しい腹痛など)
下痢だけでなく、他の症状も同時に現れている場合は、さらに注意が必要です。これらの症状は、体が発する危険なサインかもしれません。放置せずに、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
高熱(38℃以上)
細菌やウイルスによる急性胃腸炎や食中毒の可能性が高まります。また、炎症性腸疾患の病状が悪化している場合や、まれに全身に感染が広がる「敗血症(はいけつしょう)」といった重篤な状態の可能性も考えられます。
強い吐き気・嘔吐
下痢と同時に激しい吐き気や嘔吐がある場合、感染性胃腸炎や食中毒が疑われます。水分が摂りにくくなるため、脱水症状を引き起こしやすくなります。
血便
便に鮮やかな赤色の血液が混じっている場合、大腸からの出血が考えられます。炎症性腸疾患、大腸がん、大腸ポリープなどが原因となることがあります。また、黒っぽくネバネバしたタール状の便(コールタルのように黒く粘り気のある便)は、胃や十二指腸など、上部消化管からの出血を示している可能性があります。胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんなどで見られることもあります。
激しい腹痛
お腹を抱え込むような強い痛みや、体を動かせないほどの痛みがある場合は要注意です。食中毒、感染性胃腸炎、虚血性大腸炎(腸への血流が悪くなる病気)、腸閉塞、急性膵炎(きゅうせいすいえん)など、緊急性の高い病気が考えられます。下痢と腹痛が同時に起こり、それが一過性でない場合は、特に何らかの身体的な病気が隠れている可能性が高く、専門医の受診を強くお勧めします。
意図しない体重減少
特にダイエットなどをしているわけではないのに、体重が減り続けている場合は注意が必要です。がん、炎症性腸疾患、甲状腺機能亢進症など、体全体に影響を及ぼす病気が隠れている可能性があります。
黄疸(おうだん)
皮膚や白目(眼球の白い部分)が黄色くなる症状です。肝臓や胆のう、膵臓といった臓器の病気も、下痢と関連して現れることがあります。
意識障害やけいれん
脱水症状が極度に進行した場合や、重度の感染症が原因で起こることがあります。これらは非常に危険な状態であり、直ちに救急車を呼ぶ必要があります。
これらの症状が一つでも見られる場合は、放置せずに早めに医療機関を受診するようにしましょう。
脱水や栄養不良のリスクと、ご自宅でできる適切な対処法
下痢が続くと、体から水分だけでなく、ナトリウムやカリウムといった大切な電解質(でんかいしつ)も大量に失われてしまいます。これにより、脱水症状や電解質バランスの乱れを引き起こす危険性があります。特に小さなお子さんやご高齢の方、持病のある方は、これらのリスクがさらに高まります。
脱水のリスクとそのサイン
- 口の中や唇がひどく渇く。
- 尿の量が減る、または全く出ない。尿の色が普段より濃くなる。
- 体がだるい、倦怠感が強い。
- 頭が重い、頭痛がする。
- 立ち上がった時にめまいや立ちくらみがする。
- 皮膚の弾力性がなくなる(つまんだ皮膚が元に戻りにくい)。
- 意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が鈍い(重度の場合)。
- これらのサインに気づいたら、すぐに適切な水分補給が必要です。
栄養不良のリスク
下痢が長く続くと、食事から十分な栄養が吸収できなくなります。体力が落ちたり、体の抵抗力(免疫力)が低下したりするため、他の病気にかかりやすくなるリスクも高まります。
ご自宅でできる適切な対処法
- 水分・電解質補給をこまめに最も大切なのは、失われた水分と電解質を補給することです。水やお茶だけでなく、経口補水液やスポーツドリンクを少しずつ、こまめに飲むようにしましょう。特に経口補水液は、体に必要な電解質もバランス良く含まれており、脱水対策として非常に有効です。
- 消化に良い食事を摂る腸に負担をかけないよう、消化の良いものを摂りましょう。おかゆ、うどん、よく煮込んだ野菜スープ、すりおろしたりんごなどがおすすめです。脂っこいもの、香辛料の効いたもの、食物繊維が多いものは避けるようにしてください。腸を休ませることを意識しましょう。
- 体を安静にする
体力を消耗しないよう、十分に体を休ませることが大切です。無理な運動や仕事は避け、体を温めて安静に過ごしましょう。 - 止痢薬(下痢止め)の使用は慎重に
市販の止痢薬は、腸の動きを一時的に抑える効果がありますが、注意が必要です。特に感染性の下痢の場合、原因となるウイルスや細菌を体外に排出するのを妨げてしまい、かえって症状を悪化させるリスクがあるため、自己判断での使用は避けるべきです。止痢薬の使用については、必ず薬剤師や医師に相談するようにしてください。下痢の基本的な対処法は、何よりも十分な水分補給と消化の良い食事です。
これらの対処法を試しても症状が改善しない場合や、症状が悪化する場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。
すぐに病院に行くべき下痢の症状と判断基準
下痢はご自身の判断が難しい症状の一つです。私たち医師は、患者さんの下痢の症状を詳しく伺い、隠れた危険な病気のサインを見逃さないように努めています。以下のチェックリストに一つでも当てはまる場合は、自己判断せずにすぐに医療機関を受診するようにしましょう。
すぐに病院に行くべき下痢の症状チェックリスト
38℃以上の高熱がある。
便に血が混じっている(鮮血、黒っぽいタール状の便)。
お腹を抱え込むほどの激しい腹痛がある。
吐き気や嘔吐が止まらない。
脱水症状が強い(尿がほとんど出ない、口がひどく乾く、意識がぼんやりするなど)。
意識障害やけいれんを起こしている。
乳幼児やご高齢の方で、ぐったりしている、元気がない。
下痢が3日以上続いている(特に急性の下痢の場合)。
市販薬を服用しても症状が改善しない、または悪化する。
最近、海外渡航歴がある。
持病(糖尿病、心臓病、腎臓病など)があり、体調が悪化している。
急に体重が減ってきた。
皮膚や白目が黄色くなってきた。
これらの症状が一つでも当てはまる場合は、迷わず医療機関を受診してください。特に、長期間続く下痢や激しい下痢、または高熱、吐き気、血便、強い腹痛などの症状を伴う場合は、潜在的な病気が隠れている可能性が非常に高いです。速やかな医療機関の受診が、早期発見・早期治療につながります。
何科を受診すべき?消化器内科の専門医を選ぶ理由
下痢の症状で医療機関を受診する際、「何科に行けば良いのだろう?」と迷う方もいらっしゃるかもしれません。一般の内科でも診察は可能ですが、下痢の原因を正確に特定し、適切な治療を受けるためには、消化器内科の専門医を受診することをお勧めします。
消化器全般の専門知識
消化器内科の医師は、食道から胃、小腸、大腸、そして肝臓、胆のう、膵臓といった消化器全体の臓器に関する深い専門知識を持っています。下痢の原因は非常に多岐にわたるため、幅広い知識を持つ専門医の診断が非常に重要になります。
的確な診断と検査
下痢の原因を特定するためには、丁寧な問診だけでなく、血液検査、便検査、腹部超音波検査、レントゲン検査など、様々な検査が必要になることがあります。特に重要なのが、胃カメラ検査や大腸カメラ検査といった内視鏡検査です。私たち消化器内科医は、これらの検査を適切に判断し、精密な検査を実施することができます。
例えば、潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸がん、大腸ポリープなどの病気は、内視鏡で直接腸の内部を観察することで初めて正確に診断できることが多くあります。下痢と腹痛が同時に発生し、一過性でない場合は、身体的な要因や疾患が背景にある可能性が高いため、大腸カメラ検査や胃カメラ検査といった内視鏡検査は、原因を特定するために極めて有効な診断手法です。
専門的な治療計画
原因疾患が特定された場合、消化器内科の専門医は、その病状に合わせた専門的な治療計画を立てることができます。薬物療法だけでなく、食生活の指導や生活習慣のアドバイスなど、総合的なサポートを提供し、患者さんの回復を支えます。
再発予防へのアプローチ
慢性的な下痢の場合、根本的な原因を見つけ出し、再発を防ぐための長期的な視点での治療や管理が必要となります。専門医であれば、患者さん一人ひとりの状態に応じた再発予防策を提案し、下痢と上手に付き合いながら快適な生活を送れるようサポートします。
下痢の症状でお悩みの場合、特に症状が長引いたり、他の気になる症状を伴ったりする場合は、迷わず消化器内科を受診し、専門医の診察を受けるようにしましょう。
下痢の診断から治療、根本的な改善策
突然の下痢や、長く続く下痢に悩まされていると、日常生活に大きな支障が出て、本当につらい思いをされていることでしょう。下痢は、単なるお腹の不調ではなく、体からの大切なサインであり、その原因は非常に多岐にわたります。適切な診断を受けて原因を特定し、ご自身に合った治療法や生活習慣の改善に取り組むことで、下痢の症状は良くなり、快適な毎日を取り戻せる可能性が高まります。ここでは、下痢の診断から、症状を和らげるお薬、食事の工夫、そして根本的な改善策までを、消化器内科の専門医の視点からわかりやすく解説いたします。
病院での下痢の診断方法と各種検査(内視鏡検査、血液検査など)
下痢の原因を正確に突き止めるためには、まず医療機関を受診し、私たち医師による診断を受けることが非常に大切です。診察は、患者さんのお話をじっくり伺う「問診」から始まります。いつから下痢が始まったのか、どんな症状があるのか、便の性状はどうか、最近何を食べたか、あるいは現在服用しているお薬はないかなど、詳しくお聞きします。
特に、下痢と腹痛が同時に発生し、一過性ではない場合は、身体的な要因や疾患が背景にある可能性が高いため、私たち医師はより慎重に診察を進めます。
問診に加えて、以下のような検査を組み合わせて、下痢の原因を多角的に探っていきます。
身体診察
お腹を軽く押さえて痛みがないか、お腹の張りがないかなどを確認します。体の状態を総合的に把握するために行います。
便検査(便潜血検査・便培養検査など)
便の中に目に見えない血液が混じっていないか(便潜血検査)を確認します。特定の細菌やウイルス、寄生虫がいないか(便培養検査)などを調べます。感染性の下痢が疑われる場合に特に有効な検査です。原因菌の特定は、適切な治療薬の選択に直結します。
血液検査
体全体の炎症の程度や、貧血の有無、脱水や電解質のバランスを確認します。肝臓や腎臓の機能、甲状腺ホルモンの数値なども調べ、全身の状態を評価します。特定の病気が隠れていないかを探る手がかりにもなります。
腹部超音波検査(エコー検査)
お腹の中にある肝臓、胆のう、膵臓、腎臓などの臓器に異常がないかを、超音波を使って確認します。痛みもなく、手軽に行える検査です。
内視鏡検査(大腸カメラ検査、必要に応じて胃カメラ検査)
- これが下痢の原因を特定する上で、最も重要で決定的な検査の一つです。
- 細いカメラを直接腸の中に入れ、粘膜の状態を詳細に観察します。
- 大腸カメラ検査では、大腸ポリープや大腸がんの有無、潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)やクローン病といった炎症性腸疾患(ちょうしっかん)がないかを詳細に確認できます。
- 元気な体なのに下痢が続く場合、潜在的な病気が隠れている可能性があり、大腸内視鏡検査はその原因特定に非常に重要です。
- 胃潰瘍(いかいよう)や十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう)、胃がんなど、上部消化管の病気が疑われる場合には胃カメラ検査も考慮されます。
- これらの精密検査によって、長引く下痢の背景にある重大な病気を早期に見つけ出し、適切な治療へと繋げることができるのです。
- 当クリニックでは、患者さんの不安を軽減できるよう、苦痛の少ない内視鏡検査を心がけています。
下痢を和らげる薬の種類と選び方(市販薬と処方薬)
下痢の症状は本当につらいものですから、少しでも早く和らげたいと考えるのは当然のことです。お薬は症状緩和に役立ちますが、その選び方には注意が必要です。市販薬と病院で処方される薬には、それぞれ特徴があります。
市販薬
薬局などで手軽に購入できる市販薬には、主に次の二種類があります。
- 整腸剤(プロバイオティクス)
乳酸菌やビフィズス菌など、腸にとって良い働きをする「善玉菌」を補給します。
腸内環境のバランスを整え、下痢だけでなく便秘にも効果が期待できます。
比較的穏やかな作用で、副作用のリスクも少ないです。 - 止痢薬(しりやく)
腸の動きを一時的に抑えたり、腸からの水分分泌を減らしたりして、下痢の症状を止めます。
しかし、感染性の下痢(ウイルスや細菌によるもの)の場合、止痢薬を使うと、体に悪い病原体を体外へ出すのを妨げてしまいます。
結果として、病原体が体内に長くとどまってしまい、かえって症状が悪化する可能性もあります。
自己判断での使用は控え、心配な場合は必ず薬剤師や医師にご相談ください。
処方薬
病院で処方されるお薬は、下痢の原因や症状に合わせて、私たち医師がより専門的な視点で慎重に選びます。
- 整腸剤
市販薬と同様に、腸内フローラを整える目的で使用されます。
より効果の高い種類の菌が配合されているものや、他の成分と組み合わせて処方されることもあります。 - 抗菌薬(抗生物質)
細菌感染が原因の下痢の場合に、原因菌を減らすために使用されます。
例えば、食中毒の原因菌に対して有効です。
ただし、抗生物質は腸内細菌のバランスを崩すことがあるため、慎重に処方されます。 - 消化管運動調整薬
腸の過剰な動きを穏やかにし、下痢を抑える効果があります。
過敏性腸症候群など、腸の動きが過敏になっている場合によく用いられます。 - 炎症性腸疾患治療薬
潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸の粘膜に炎症が起こる病気が原因の場合に使われるお薬です。
ステロイド剤や免疫抑制剤など、炎症を強力に抑える作用を持つものが選択されます。
下痢の症状が長引いたり、激しくなったりする時は、自己判断で市販薬を使い続けるのではなく、医療機関を受診して、適切な診断と処方を受けることが、回復への近道です。
下痢の時に避けるべき食べ物と、積極的に摂りたい食事・水分
下痢の時は、消化管がとてもデリケートな状態になっています。体への負担を減らし、回復を助けるために、食事や水分補給には特に気を配る必要があります。下痢の基本的な対処法として、十分な水分補給と消化の良い食事がとても大切だと、私たち医師はいつもお伝えしています。
下痢の時に避けるべき食べ物・飲み物
腸に刺激を与えたり、消化に負担をかけたりするものは避けるのが賢明です。
- 脂っこい食事
天ぷら、フライ、ラーメン、豚の角煮など。
脂肪は消化に時間がかかり、腸に負担をかけるため、下痢を悪化させる可能性があります。 - 刺激物
唐辛子などの香辛料、カフェインを多く含む飲み物(コーヒー、エナジードリンク)、炭酸飲料など。
腸の粘膜を刺激し、下痢を誘発する可能性があります。 - 冷たいもの
冷たい飲み物やアイスクリームなどは、腸を冷やして動きを活発にさせることがあります。
特に夏場でも、お腹の冷えには注意が必要です。 - アルコール
腸を直接刺激するだけでなく、脱水を進める原因にもなります。
下痢の期間中は完全に控えるようにしましょう。 - 乳製品
牛乳、チーズ、生クリームなど。
乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)の方はもちろん、そうでない方も、下痢の時は消化しにくく症状を悪化させることがあります。 - 食物繊維の多いもの(一時的に)
きのこ類、ごぼう、さつまいも、海藻類など、不溶性食物繊維が多いものは、症状が落ち着くまでは避けるほうが良い場合があります。
特に生の野菜や果物も一時的に控えることをお勧めします。
下痢の時に積極的に摂りたい食事・水分
脱水を防ぎ、腸に負担をかけずに栄養を補給できるものがおすすめです。
- 水分補給
最も大切です。下痢によって大量の水分と電解質(体に必要なミネラル)が失われます。
水、白湯(さゆ)、番茶、ほうじ茶などを、一度にがぶ飲みせず、少しずつこまめに飲みましょう。
特に、体から失われた水分や電解質を効率よく補給できる経口補水液が非常に有効です。
薬局などで購入できるので、常備しておくことをお勧めします。 - 消化の良い食べ物
主食:おかゆ、軟飯、うどん(煮込みうどんなど)、食パン(耳なし)、素麺など。
野菜:くたくたに煮込んだ大根、にんじん、かぶ、じゃがいもなど、柔らかく調理したもの。
たんぱく質:鶏ささみ、鶏むね肉、白身魚(タラ、カレイなど)、豆腐、卵など、脂質の少ないものを柔らかく調理したもの。
果物:リンゴ(すりおろし)、バナナなど。 - 調理法
煮る、蒸す、ゆでるなど、油を使わないシンプルな調理法を選びましょう。
味付けも薄味を心がけ、香辛料は避けてください。
症状が改善してきたら、少しずつ、様子を見ながら食べる量を増やしていくことが大切です。腸を休ませることを最優先に考えましょう。
根本原因の特定と生活習慣の見直しによる下痢の予防
下痢の症状が一時的に治まっても、同じような原因が続けば、また繰り返してしまうことがあります。下痢を予防し、健やかな腸の状態を保つためには、その根本原因を特定し、日々の生活習慣を見直すことが非常に重要です。
下痢の原因は、食生活の乱れ、精神的なストレス、体の冷え、あるいは何らかの身体的な要因など、多様です。症状の改善には、根本的な原因疾患の治療に加え、食生活の是正、ストレス管理、十分な休養、水分補給といった生活習慣の総合的な見直しが重要となります。これらを改善することで、下痢が起こりにくい体づくりを目指せます。
生活習慣の見直しポイント
- 規則正しい食生活
一日三食、なるべく決まった時間に食事を摂るように心がけましょう。
暴飲暴食を避け、一口ずつゆっくりとよく噛んで食べることが大切です。
消化に良い食事を心がけ、刺激物や脂質の多い食事は控えめにしましょう。 - ストレス管理
ストレスは、自律神経の乱れを通じて腸の働きに大きく影響します。これを「脳腸相関(のうちょうそうかん)」と呼びます。
適度な運動、趣味の時間、十分な睡眠など、ご自身に合ったリラックス方法を見つけることが重要です。
仕事や人間関係などで強いストレスを感じている場合は、一人で抱え込まず、専門家への相談も検討してみましょう。 - 十分な休養
体が疲れていると、腸の働きも低下しやすくなります。
質の良い睡眠をしっかりと摂り、疲労をため込まないことが大切です。 - 体の冷え対策
お腹周りを冷やさないように、腹巻や温かい衣類で調整したり、温かい飲み物を摂ったりしましょう。
特に夏場でも、冷房の効いた場所での過ごし方には注意が必要です。 - 腸内環境を整える
発酵食品(ヨーグルト、納豆、味噌など)や食物繊維をバランス良く摂ることで、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を良好に保つことができます。
食物繊維は、水溶性と不溶性の両方をバランス良く摂取することが望ましいです。
これらの生活習慣の改善は、時間をかけて継続的に取り組むことで、下痢の予防だけでなく、全身の健康にもつながります。
下痢を繰り返す場合に考えられる病気とその専門治療(過敏性腸症候群、炎症性腸疾患など)
一時的な下痢であれば心配ないことが多いですが、下痢を繰り返したり、長期間症状が続いたりする場合は、背景に何らかの病気が隠れている可能性を考える必要があります。特に、下痢と腹痛が同時に発生し、それが一過性でない場合は注意が必要です。私たち消化器内科の専門医にご相談ください。
下痢を繰り返す場合に考えられる主な病気とその専門治療
- 過敏性腸症候群(IBS)
腸には炎症や腫瘍(しゅよう)などの明らかな異常が見られないにもかかわらず、便秘や下痢、腹痛などの症状が慢性的に続く病気です。
ストレスや自律神経の乱れが関係していると考えられています。
治療の中心は、生活習慣の改善、食事療法、薬物療法(消化管運動調整薬など)、精神療法(カウンセリングなど)を組み合わせるのが一般的です。 - 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気で、国の指定難病にもなっています。
下痢、腹痛、血便、発熱、体重減少などの症状が見られます。
私たちのクリニックでは、内視鏡検査で腸の内部を直接観察し、診断を行います。
治療としては、炎症を抑える薬(ステロイド、免疫抑制剤など)や生物学的製剤の使用、食事療法、場合によっては手術が必要になることもあります。 - 大腸ポリープ・大腸がん
初期には自覚症状が少ないこともありますが、進行すると下痢や便秘、便が細くなる、血便などの症状が現れることがあります。
元気なのに下痢が続く場合、このような潜在的な病気が隠れていることもあります。
早期発見・早期治療が非常に重要で、内視鏡による切除や外科手術が行われます。 - 感染性胃腸炎の慢性化
特定の細菌や寄生虫による感染が長引き、慢性的な下痢につながる場合があります。
適切な抗菌薬や抗寄生虫薬による治療が必要です。 - その他
- 甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう):甲状腺ホルモンが過剰になることで、腸の動きが活発になり下痢を引き起こすことがあります。
- 糖尿病性神経障害(とうにょうびょうせいしんけいしょうがい):糖尿病の合併症として、自律神経が障害され、下痢や便秘を引き起こすことがあります。
これらの病気は、専門的な診断と適切な治療が不可欠です。症状を放置せず、できるだけ早めに医療機関を受診して、ご自身の体の状態を知り、適切な治療計画を立てることが、健康な生活を取り戻す第一歩となります。
下痢Q&A
お腹の不調で下痢が続くと、日常生活に大きな影響が出ますよね。多くの場合、下痢は一時的なもので、自然に治まることも少なくありません。しかし、中には体からのSOSサインとして、重大な病気が隠れている可能性もあります。私たち医師は、患者さんの下痢の症状と向き合う際、ただの「お腹の不調」として片付けることはありません。皆さんの大切な体を守るため、よくある疑問にお答えしながら、どのような場合に注意が必要なのか、また、どのような時に医療機関を受診すべきなのかをしっかりとお伝えします。ご自身の症状と照らし合わせながら、一緒に確認していきましょう。
Q1: 下痢が長引くときや、どんな症状があったら病院へ行くべきですか?
下痢が続くと、本当に不安になりますよね。一時的なものであれば心配いりませんが、体からの大切なサインとして、すぐに医療機関を受診すべき症状がいくつかあります。特に、以下の項目に一つでも当てはまる場合は、迷わず受診してください。
38℃以上の高熱がある場合
細菌やウイルスによる感染症の可能性が高く、体への負担が大きくなります。まれに、全身に感染が広がる重篤な状態の可能性も考えられます。
便に血が混じっている場合
鮮やかな赤色の血液や、黒っぽくネバネバしたタール状の便は、消化管からの出血を示します。潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患や、大腸がんなどの病気が隠れているかもしれません。
お腹を抱え込むほどの激しい腹痛がある場合
食中毒、虚血性大腸炎(腸への血流が悪くなる病気)、急性膵炎(膵臓の炎症)など、緊急性の高い病気が潜んでいる可能性があります。
強い吐き気や嘔吐が止まらない場合
感染性胃腸炎や食中毒が疑われ、水分が摂りにくくなるため、脱水症状を急速に進行させることがあります。
強い脱水症状が見られる場合
口の中や唇がひどく渇く、尿がほとんど出ない、意識がぼんやりするなどのサインです。特に乳幼児やご高齢の方、心臓や腎臓などに持病がある方は、急激に体調が悪化する危険があるため注意が必要です。
下痢が3日以上続いている場合
感染症の長期化や、過敏性腸症候群、あるいは他の病気が背景にある可能性が考えられます。
持病(糖尿病、心臓病、腎臓病など)があり、体調が悪化している場合
下痢が持病に悪影響を及ぼし、病状を悪化させる危険性があります。
急に体重が減ってきた場合
特にダイエットなどをしているわけではないのに体重が減少している場合は、がん、炎症性腸疾患、甲状腺機能亢進症など、体全体に影響する病気が隠れている可能性を示唆します。
皮膚や白目(眼球の白い部分)が黄色くなってきた(黄疸)場合
肝臓や胆のう、膵臓といった臓器の病気が下痢と関連して現れることがあります。
最近、海外への渡航歴がある場合
日本ではあまり見られない特殊な感染症にかかっている可能性も考えられます。
これらの症状が見られる場合は、脱水や電解質バランスの乱れだけでなく、より深刻な病気が隠れていることがあります。私たち医師は、患者さんの症状を詳しく伺い、適切な診断と治療を迅速に行います。迷わずに医療機関を受診してください。
Q2: 下痢の症状が出た場合、何科を受診すれば良いですか?
下痢の症状でお困りの際は、ぜひ消化器内科を受診してください。一般内科でも診察は可能ですが、下痢の原因を正確に特定し、適切な治療を受けるためには、消化器内科の専門医を選ぶことには、大きなメリットがあります。
消化器全般の専門知識を持っています
消化器内科の医師は、食道から胃、小腸、大腸、そして肝臓、胆のう、膵臓といった消化器全体の臓器に関する深い知識と経験を持っています。下痢の原因は非常に多様なため、幅広い知識を持つ専門医の診断が極めて重要になります。
的確な診断と専門的な検査を実施できます
丁寧な問診に加えて、便検査、血液検査、腹部超音波検査、そして必要に応じて大腸カメラ検査や胃カメラ検査といった内視鏡検査を行います。特に内視鏡検査は、潰瘍性大腸炎、クローン病のような炎症性腸疾患、大腸がん、大腸ポリープなど、目には見えない腸の内部の異常を直接観察し、正確に診断するために不可欠な検査です。下痢と腹痛が同時に発生し、一過性でない場合は、身体的な要因や疾患が背景にある可能性が高く、内視鏡検査は原因を特定するために極めて有効な診断手法です。
病状に合わせた専門的な治療計画を立てます
原因疾患が特定された場合、消化器内科の専門医は、個々の患者さんの病状に最適な治療法を提案できます。薬物療法はもちろん、食生活の指導や生活習慣のアドバイスなど、総合的なサポートを提供し、患者さんの回復を支えます。
再発予防にも力を入れています
慢性的な下痢の場合、根本原因を見つけ出し、再発を防ぐための長期的な視点での管理が重要となります。専門医として、患者さんが下痢と上手に付き合い、快適な生活を送れるよう継続的にサポートいたします。
下痢の症状が長引いたり、他の気になる症状を伴ったりする場合は、迷わずに消化器内科を受診し、専門医の診察を受けることが早期改善への第一歩です。
Q3: 下痢の診断では、どのような検査を行いますか?
下痢の原因を正確に特定するために、私たちは患者さんのお話をじっくり伺う「問診」から始めます。問診では、下痢がいつから始まったのか、便の性状はどうか、どんな症状があるのか、最近何を食べたか、あるいは現在服用しているお薬はないかなど、あらゆる情報が診断の手がかりとなります。その後、症状や疑われる病気に応じて、いくつかの検査を組み合わせて行います。
身体診察
お腹を軽く押さえて痛みがないか、お腹の張りがないかなどを確認し、体の状態を総合的に把握します。
便検査
- 便潜血検査
便の中に目に見えない血液が混じっていないかを調べ、消化管からの出血がないかを確認します。 - 便培養検査
特定の細菌やウイルス、寄生虫が下痢の原因となっていないかを調べます。感染性の下痢が疑われる場合に特に有効で、原因菌の特定は適切な治療薬の選択に直結します。
血液検査
体全体の炎症の程度、貧血の有無、脱水や電解質のバランスを確認します。肝臓や腎臓の機能、甲状腺ホルモンの数値なども調べ、全身の状態を評価します。特定の病気が隠れていないかを探る大切な手がかりにもなります。
腹部超音波検査(エコー検査)
お腹の中にある肝臓、胆のう、膵臓、腎臓などの臓器に異常がないかを、超音波を使って確認します。痛みもなく、体への負担が少ない手軽に行える検査です。
内視鏡検査(大腸カメラ検査、必要に応じて胃カメラ検査)
- これが下痢の原因を特定する上で、最も重要で決定的な検査の一つです。
- 細いカメラを直接腸の中に入れ、粘膜の状態を詳細に観察します。
- 大腸カメラ検査では、大腸ポリープや大腸がんの有無、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患がないかを詳細に確認できます。
- 特に、元気なのに下痢が続く場合、潜在的な病気が隠れている可能性があり、大腸内視鏡検査はその原因特定に非常に重要です。
- 胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんなど、上部消化管の病気が疑われる場合には胃カメラ検査も考慮されます。
- これらの精密検査によって、長引く下痢の背景にある重大な病気を早期に見つけ出し、適切な治療へと繋げることができるのです。
私たち消化器内科医は、これらの検査結果を総合的に判断し、患者さん一人ひとりに最適な診断と治療を提供します。
Q4: 下痢と腹痛が同時に起こる場合、どのような原因が考えられますか?
下痢と腹痛が同時に現れると、日常生活に大きな支障が出ますよね。このような症状は、様々な原因が考えられますが、特に一過性でない、つまり症状が長引く場合は、何らかの身体的な要因や疾患が背景にある可能性が高く、注意が必要です。
精神的な要因
- 過敏性腸症候群(IBS)
強いストレスや緊張によって脳と腸の連携が乱れ、腹痛を伴う下痢が起こります。
検査では腸に炎症や潰瘍などの明らかな異常は見られません。
私たちのクリニックでも、ストレスが原因でお腹を壊す患者さんは非常に多く見られます。
飲食による要因
- 食べ過ぎや飲み過ぎ
消化器官に大きな負担がかかり、下痢や腹痛を引き起こすことがあります。
特に脂質の多い食事やアルコールの過剰摂取は、腸への刺激が大きく影響します。 - 食中毒や感染性胃腸炎
サルモネラ菌、カンピロバクター、ノロウイルス、ロタウイルスなどによって、激しい腹痛や吐き気、発熱を伴う下痢が起こります。これらは、病原体を体外へ排出しようとする体の防御反応として起こる症状です。
身体的な要因
- 体の冷え
お腹が冷えると、腸への血流が悪くなったり、腸の動きが過敏になったりして、下痢や腹痛につながることがあります。 - 月経(生理)
女性の場合、生理前や生理中にホルモンバランスの変化で腸の動きが活発になり、下痢や腹痛を伴うことがあります。
消化管の病気
- 炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気です。腹痛、血便、発熱などを伴う下痢が特徴で、国の指定難病にもなっています。 - 大腸ポリープ・大腸がん
進行すると、下痢や便秘を繰り返したり、腹痛や血便が現れたりすることがあります。 - 虚血性大腸炎
大腸への血流が悪くなることで炎症が起こり、突然の激しい腹痛と下痢、血便を伴うことがあります。 - 胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がん
これらの上部消化管の病気が原因で、黒っぽいタール状の便を伴う下痢が見られることもあります。
下痢と腹痛が同時に発生し、それが一過性でない場合は、身体的な要因や疾患が背景にある可能性が高く、早期の専門医受診が推奨されます。ご自身の症状に心当たりがある場合は、私たち消化器内科医にご相談ください。
Q5: 元気なのに下痢が続くのはなぜですか?
体は元気だと感じているのに、なぜか下痢が続くという方は少なくありません。このような場合、ご自身では気づきにくい、様々な原因が隠れていることがあります。長引く下痢は、脱水や電解質不足、栄養不良のリスクも高めるため、決して放置せずに原因を探ることが大切です。
食生活や生活習慣の影響
- 食べ過ぎ・飲み過ぎ、体の冷え
一度にたくさんの食べ物を摂取したり、お腹が冷えたりすると、消化器官に負担がかかり、腸の動きが乱れることがあります。 - 香辛料や刺激物の摂りすぎ
唐辛子などの香辛料やカフェインは腸の粘膜を直接刺激し、下痢を誘発することがあります。 - 不規則な生活習慣や睡眠不足
自律神経のバランスを乱す大きな要因となり、腸の正常な働きを妨げることがあります。
薬の副作用
- 抗生物質
病原菌だけでなく、腸内の良い働きをする細菌(善玉菌)まで減らしてしまい、腸内環境のバランスを崩すことがあります。 - マグネシウム製剤
便秘薬としてよく使われますが、必要以上に服用すると腸内の水分量を増やしすぎて下痢になります。 - その他
一部の糖尿病治療薬や高血圧治療薬など、特定の薬が下痢の原因となることもあります。薬を飲み始めてから下痢が続く場合は、処方医や薬剤師に相談しましょう。
食物アレルギーや乳糖不耐症
- 食物アレルギー
特定の食べ物(卵、牛乳、小麦、そばなど)に対して体の免疫システムが過剰に反応し、下痢を引き起こすことがあります。 - 乳糖不耐症
牛乳や乳製品に含まれる「乳糖」を分解する酵素「ラクターゼ」が不足していると、消化不良を起こして下痢につながります。
多くは加齢とともに酵素が減る「後天性」です。
ストレスや精神的な要因
- 過敏性腸症候群(IBS)
強いストレスが原因で、腸に明らかな異常がないにもかかわらず、腹痛を伴う下痢や便秘が繰り返されます。「脳腸相関」と呼ばれる脳と腸の密接な関係が影響しています。
消化酵素の異常
- 慢性膵炎など
膵臓の機能が低下すると、食べ物を消化する酵素が不足し、特に脂質がうまく分解されずに、脂っこく水に浮くような下痢(脂肪便)となることがあります。
潜在的な病気
ごくまれにですが、大腸ポリープや大腸がん、甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが過剰になる病気)といった病気が、元気に見えても下痢の症状として現れることがあります。
このように、元気なのに下痢が続く原因は多岐にわたります。気になる下痢が続くようでしたら、脱水や栄養不良のリスクを避けるためにも、一度医療機関を受診し、私たち消化器内科医と一緒に原因を特定し、適切な対処法を見つけていきましょう。
まとめ
今回は、下痢が起こる様々な原因と、それぞれの対処法について詳しくご紹介しました。下痢は、食べ過ぎやストレスといった一時的なものから、食中毒、過敏性腸症候群、さらには大腸がんなどの重大な病気が隠れている可能性もあります。
多くは自然に治まりますが、38℃以上の高熱や血便、激しい腹痛、強い吐き気・嘔吐、脱水症状など、危険なサインを見逃さないことが大切です。ご自宅でできる水分補給や消化に良い食事も重要ですが、これらの症状がある場合や、下痢が3日以上続く場合は、迷わず消化器内科を受診しましょう。
私たち医師は、あなたの体の状態を詳しく診断し、適切な治療と生活習慣の見直しを通じて、下痢の根本的な改善をサポートします。一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談くださいね。
参考文献
- 下痢と腹痛が同時に起こる原因と考えられる病気について医師が解説
- 元気なのに下痢が続く原因とは | えぞえ消化器内視鏡クリニック