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台東区浅草のかわぐち内科・内視鏡クリニックの院長ブログ

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潰瘍性大腸炎になると大腸がんになりやすい?専門医が徹底解説

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「忙しい人向け|1分要約スライド」

 

潰瘍性大腸炎と診断された方にとって、将来的な大腸がんへの進行は大きな不安ではないでしょうか。実際に、潰瘍性大腸炎を患う方の中には、そのリスクを心配されている方も少なくありません。世界的に悪性腫瘍で3番目に多い大腸がんは、潰瘍性大腸炎患者さんでは「潰瘍性大腸炎関連大腸がん(CAC)」として発生しやすいことが知られています。

しかし、このリスクを正しく理解し、適切な対策を講じることで、がんの早期発見や予防は可能です。本記事では、潰瘍性大腸炎が大腸がんに進行するメカニズムやリスク要因、定期的な内視鏡検査の重要性、具体的な治療法や予防策までを詳しく解説します。ご自身の健康を守るため、ぜひ最後までお読みください。

目次

潰瘍性大腸炎が大腸がんに進行する3つのリスクとメカニズム

潰瘍性大腸炎と診断された患者さんや、そのご家族の皆様にとって、将来的な大腸がんへの進行は大きな不安の一つでしょう。実際に、潰瘍性大腸炎を患う方の中には、そうしたリスクを心配されている方も少なくありません。しかし、そのリスクを正しく理解し、適切な対策を講じることで、大腸がんの早期発見や予防へと繋げることが可能です。私たち医師も、そのために皆さんと一緒に病気と向き合っていきたいと考えています。

世界的に見ても、大腸がんは悪性腫瘍の中で3番目に多い疾患です。特に、潰瘍性大腸炎をお持ちの患者さんの場合、「潰瘍性大腸炎関連大腸がん(CAC)」と呼ばれる特殊なタイプの大腸がんが発生しやすいことが知られています。この病気とどのように向き合っていくべきかを知るために、どのようなメカニズムでがんが発生するのか、また、どのような要因がリスクを高めるのかを一緒に確認していきましょう。

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潰瘍性大腸炎と大腸がんの基本的な症状の違い

潰瘍性大腸炎と大腸がんは、どちらも大腸に発生する病気です。そのため、症状の中には共通するものもありますが、それぞれに特徴的な症状の違いがあります。ご自身の判断だけで病気を特定しようとするのは非常に危険です。特に、潰瘍性大腸炎の患者さんが、「いつもの症状とは違う」「これまでになかった変化」を感じた場合は、すぐに主治医に相談することが大切です。

症状項目 潰瘍性大腸炎(活動期) 大腸がん(進行期) 共通する症状
便の異常 ・下痢
・粘液と血液が混じった便(粘血便)
・鮮血の血便
・便通異常(便秘と下痢の繰り返し)
・便に血が混じる(鮮血〜暗赤色)
・便が細くなる
・血便
・便通異常(便秘、下痢)
腹部の症状 ・下腹部の痛み
・排便後も便が残っている感じ(しぶり腹)
・お腹の張り(腹部膨満感)
・進行した場合は痛み
・腹痛
全身症状 ・発熱
・体重減少
・貧血
・倦怠感
・体重減少
・貧血
・倦怠感
・体重減少
・貧血
・倦怠感

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性の炎症が起こる病気です。症状が活発になる「活動期」には、激しい下痢や粘血便、強い腹痛などが特徴として現れます。一方、大腸がんは初期の段階では自覚症状がほとんどないことが多く、病気が進行するにつれて、便に血液が混じる、便が以前より細くなる、便秘と下痢を繰り返すなどの便通の変化が現れます。また、お腹の不快感やしこり、原因不明の体重減少などが現れることもあります。

どちらの病気も、貧血や全身の倦怠感を伴うことがあるため、これらの症状だけでご自身がどちらの病気なのかを判断するのは困難です。特に潰瘍性大腸炎をお持ちの方で、今までとは違う症状、例えば「いつもより便が細い気がする」「お腹の張りが続く」といった変化を感じたら、放置せずに専門医へ相談し、正確な診断を受けることが不可欠です。

慢性的な腸の炎症が引き起こす細胞変異のメカニズム

潰瘍性大腸炎が、なぜ大腸がんのリスクを高めるのか。その主要なメカニズムは、「慢性的な腸の炎症」が深く関わっています。大腸の粘膜で炎症が長期間続くと、細胞が繰り返しダメージを受け、そのダメージを修復しようとする過程で細胞に異常が生じやすくなるのです。

このがんに至るプロセスは、段階的に進行すると考えられています。

細胞の損傷と再生の繰り返し

  • 潰瘍性大腸炎では、腸の粘膜が炎症によって常に傷つけられています。
  • 私たちの身体は、この傷を治そうと新しい細胞を作り出して(再生)修復を試みます。

遺伝子変異の蓄積

  • 細胞が何度も分裂や再生を繰り返す中で、細胞の設計図である遺伝子にエラー(変異)が生じやすくなります。
  • 通常であれば、これらのエラーは速やかに修復されますが、慢性的な炎症が続く環境下では、エラーが修復されずに蓄積されやすくなります。
  • 実際に、慢性的な腸の炎症は、大腸がんの重要なリスク因子であることが研究で明らかになっており、潰瘍性大腸炎関連大腸がん(CAC)の発生率は増加傾向にあると指摘されています。

異形成(いけいせい)の発生

  • 遺伝子変異が蓄積されると、正常な細胞とは異なる形や性質を持つ「異形成細胞」が発生することがあります。
  • 異形成は、がんになる前段階の異常な細胞の集まりと考えられており、この段階で発見し治療できれば、がんへの進行を食い止めることが可能です。

がん細胞への進行

  • 異形成細胞がさらに遺伝子変異を重ねると、最終的に制御不能ながん細胞へと変化し、増殖を始めます。
  • このように発生する大腸がんを、特に「潰瘍性大腸炎関連大腸がん(CAC)」と呼びます。

慢性的な炎症は、細胞の「分子(ぶんし)」や「シグナル伝達経路(しぐなるでんたつけいろ)」にも影響を及ぼします。これは、細胞内での情報伝達の仕組みが乱れることを意味します。例えるなら、細胞同士の連絡網にノイズが入り、間違った指令が送られてしまうような状態です。この乱れが、がん細胞の発生や増殖を促す要因となることが分かっています。このメカニズムを理解することが、適切な検査や治療に繋がる第一歩となります。

大腸がんへの進行リスクを高める要因

潰瘍性大腸炎の患者さんが大腸がんへ進行するリスクは、全員が同じではありません。いくつかの要因によって、そのリスクは高まると考えられています。これらの要因をご自身の状態と照らし合わせ、把握することで、より計画的な検査や治療の計画を主治医と一緒に立てることに役立てることができます。

主なリスクを高める要因は次の通りです。

罹病期間(りびょうきかん)の長さ

  • 潰瘍性大腸炎と診断されてからの期間が長いほど、大腸がんのリスクは高まることが知られています。
  • 特に、発病から8〜10年以上が経過すると、リスクが上昇し始めるとされています。
  • これは、炎症が長期間続くことで、前述したような細胞変異がより多く蓄積されやすくなるためと考えられます。
潰瘍性大腸炎の発症からの期間 大腸がんの合併率
10年後 約1.6%
20年後 約8.3%
30年後 約18.4%

炎症の範囲と重症度

  • 大腸全体に炎症が及ぶ「全大腸炎型(ぜんだいちょうえんがた)」の患者さんは、大腸の一部に炎症がある患者さんに比べて、大腸がんのリスクが高い傾向にあります。
  • 全大腸炎型とは、大腸の入り口から出口まで広範囲に炎症が見られる状態を指します。
  • また、炎症の重症度が高い状態が長く続くことも、リスク上昇に繋がる重要な要因です。

若年での発症

  • 比較的若い年齢、例えば20代や30代で潰瘍性大腸炎を発症した患者さんは、結果的に罹病期間が長くなる傾向があるため、その分、大腸がんを発症するリスクが高まる傾向にあります。
  • これは、がんに至るまでの慢性的な炎症期間が長くなるためと考えられます。

その他の要因

大腸がんの家族歴
  • ご家族に大腸がんを患った方がいる場合、リスクがやや高まる可能性があります。
原発性硬化性胆管炎(げんぱつせいこうかせいたんかんえん)の合併
  • 肝臓の病気である原発性硬化性胆管炎を合併している場合も、大腸がんのリスクが高まることが知られています。

これらの要因は、患者さん一人ひとりのリスク評価において非常に重要です。ご自身の状態とこれらのリスク要因を照らし合わせ、主治医とよく相談し、定期的な検査計画を立てることが重要です。

定期的な内視鏡検査が重要な理由

潰瘍性大腸炎の患者さんにとって、定期的な大腸内視鏡検査は、大腸がんを早期に発見し、適切な治療へと繋げる上で極めて重要な役割を果たします。なぜなら、潰瘍性大腸炎関連大腸がんは、一般的な大腸がんとは異なり、初期段階で自覚症状が出にくい、あるいは潰瘍性大腸炎の通常の症状と区別がつきにくいという特徴があるからです。

内視鏡検査が重要な理由は以下の通りです。

異形成や早期がんの発見

  • 大腸内視鏡検査では、医師が直接、大腸の粘膜の状態を目で確認することができます。
  • これにより、がんになる前の異常な細胞変化である「異形成」や、ごく早期のがんを発見することが可能になります。
  • 異形成の段階で発見し切除できれば、がんへの進行を食い止めることができます。

症状に頼らない発見

  • 潰瘍性大腸炎の患者さんが大腸がんを発症した場合でも、下痢や血便といった症状は、潰瘍性大腸炎の活動期と似ていることが多く、がんが進行していてもご自身で気づきにくいことがあります。
  • 定期的な検査は、症状の有無にかかわらず、がんを早期に発見するための唯一の確実な方法です。

がんの広がりや深さの評価

  • 異形成やがんが発見された場合、内視鏡で病変の正確な位置、広がり、深さなどを詳細に評価することができます。
  • この情報は、その後の治療方針、例えば内視鏡での切除が可能か、外科手術が必要かなどを決定する上で極めて重要です。

適切な検査頻度

  • 一般的には、潰瘍性大腸炎と診断されてから8~10年が経過した時点から、1~2年に1回の頻度で「サーベイランス内視鏡検査」と呼ばれる定期的な大腸内視鏡検査が推奨されています。
  • しかし、炎症の範囲や重症度、ご家族に大腸がんの罹患歴があるかなど、個別のリスク因子によって、検査の間隔は調整されることがあります。
  • 主治医とよく相談し、ご自身の状態に合わせた最適な検査計画を立てることが大切です。

大腸内視鏡検査は、前処置や検査自体に不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現在では鎮静剤(眠くなるお薬)を使用することで、苦痛を少なく受けられる医療機関が増えています。検査に対するご自身の不安を主治医に伝え、安心して検査を受けられる方法を相談することが大切です。早期発見は、より良い治療結果に繋がりますので、定期的な検査を忘れずに受けるようにしましょう。

潰瘍性大腸炎と大腸がんの治療法と5つの予防策

潰瘍性大腸炎と診断された方、あるいは大腸がんへの進行リスクに不安を感じている方は、たくさんいらっしゃるかと思います。適切な治療を受けること、そして日々の生活の中で予防策を講じることは、病気と向き合い、充実した日々を送る上でとても大切です。私たち医師も、そのために皆さんと一緒に病気と向き合っていきたいと考えています。

ここでは、それぞれの病気の治療法と、皆さんが実践できる予防策について、分かりやすくご説明いたします。ご自身の病状を理解し、日々の生活でできることを知り、ぜひ前向きに治療に取り組んでいきましょう。

潰瘍性大腸炎の主な薬物療法と生物学的製剤の種類

潰瘍性大腸炎の治療は、大腸の炎症を抑え、患者さんの日常生活の質(QOL)を保ち、長期的な寛解(症状が落ち着いた状態)を維持することが主な目的です。炎症をコントロールすることは、大腸がんのリスクを低減するためにも非常に重要です。

症状の程度や病気の広がり方、患者さんの体質に合わせて、さまざまな種類の薬が使い分けられます。

基本の薬物療法

薬の種類 特徴 主な使用例
5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤 炎症を抑える作用があります。大腸の炎症部位に直接届くよう、工夫された形で作られています。 軽症から中等症の方の活動期や、炎症を抑え続けるための寛解維持期に広く使われます。
ステロイド製剤 非常に強力な抗炎症作用を持つ薬です。速やかに炎症を抑え、症状を改善したい場合に用いられます。 中等症から重症の方の活動期に、短期的に集中的に使用することが多いです。
免疫調節薬(免疫抑制剤) 体の過剰な免疫反応を抑えることで、炎症を沈めます。ステロイドの効果が不十分な場合や、ステロイドを減らす目的で使われることがあります。 ステロイドへの反応が悪い方、ステロイドに頼りたくない方の寛解維持に用いられます。

これらの薬は、飲み薬(錠剤)、坐薬(直腸に挿入する薬)、注腸薬(肛門から注入する薬)など、炎症のある部位や症状の重さに応じて適切に選択されます。どの薬がご自身に最適か、主治医とよく相談することが大切です。

生物学的製剤とJAK阻害剤(分子標的薬)→当院では行う事が出来ない治療です

従来の薬で効果が十分に得られない方や、重症の潰瘍性大腸炎の方には、より進んだ治療薬が選択肢となります。これらは、炎症を引き起こす体の特定の物質(分子)の働きをピンポイントで抑えることで効果を発揮します。

治療薬の主な種類 作用のメカニズム 投与方法
抗TNF-α抗体 炎症を引き起こす中心的な物質の一つである「TNF-α(ティーエヌエフアルファ)」というタンパク質の働きを阻害し、炎症反応を抑えます。 点滴や自己注射
抗IL-12/23抗体 炎症に関わる「IL-12(アイエルじゅうに)」や「IL-23(アイエルにじゅうさん)」といったサイトカイン(細胞間の情報伝達に関わるタンパク質)の働きを抑え、炎症を沈めます。 点滴や自己注射
インテグリン阻害剤 炎症を引き起こす免疫細胞が大腸の粘膜に集まるのを防ぐことで、炎症反応を抑えます。 点滴や自己注射
JAK阻害剤 細胞の中での情報伝達の仕組み(「JAK-STAT経路」などと呼ばれます)を阻害し、炎症反応を抑える飲み薬です。 飲み薬

これらの治療薬は、炎症や炎症に関わる分子(細胞内の特定のタンパク質など)やシグナル伝達経路(細胞内外の情報伝達の仕組み)を標的とするため、潰瘍性大腸炎関連大腸がん(CAC)の予防や治療にも有効である可能性があります。抗炎症作用を持つ薬剤は、腫瘍発生に関与する複数の分子やシグナル伝達経路を通じて、CACの予防または治療効果を示すことが研究で示唆されています。

新規抗炎症薬の開発も進められており、潰瘍性大腸炎の治療、ひいては大腸がん対策の新たな分野として注目されています。治療法の選択は、副作用のリスクと期待される効果を総合的に考慮し、主治医と十分に話し合って決めることが非常に大切です。

大腸がんの進行度別治療選択肢と最新治療

大腸がんの治療は、がんがどの程度進行しているか(ステージ)や、患者さんの全身状態、がんの性質によって大きく異なります。早期に発見できれば、体に負担の少ない治療で治癒を目指せる可能性が高まります。

進行度(ステージ)別の治療選択肢

がんの進行度は、がんが大腸の壁にどのくらい深く広がっているか、リンパ節への転移があるか、他の臓器への転移があるか、という要素から0期からIV期に分類されます。

がんの進行度(ステージ) 主な治療法と特徴
0期(ごく早期) がんが大腸の粘膜内にとどまっている最も早期の段階です。多くの場合、大腸内視鏡を用いた切除(内視鏡的切除)で治療が完結します。お腹を切る手術は不要で、体への負担が非常に少ない治療法です。
I期(早期) がんが粘膜下層(ねんまくかそう)まで進んでいますが、まだリンパ節への転移がない状態です。内視鏡で取りきれることもありますが、通常は外科手術(開腹手術や腹腔鏡手術)でがんを含んだ腸管を切除することが一般的です。
II期(進行がん) がんが大腸の壁を深く進んでいますが、リンパ節転移がない段階です。外科手術でがんを含んだ腸管を切除することが治療の中心です。再発のリスクを下げるため、手術後に抗がん剤治療(術後補助化学療法)が検討されることもあります。
III期(進行がん) がんがリンパ節に転移している段階です。外科手術でがんを含んだ腸管と転移したリンパ節を切除します。術後に再発を防ぐための抗がん剤治療(術後補助化学療法)は、ほぼ必須とされています。
IV期(遠隔転移がん) がんが肝臓や肺など、大腸から離れた他の臓器に転移している段階です。この場合は、全身に効果が及ぶ抗がん剤治療(化学療法)が主な治療の中心となります。転移した部位やがんの状況によっては、手術や放射線治療を組み合わせて行うこともあります。

最新の治療法

近年、大腸がんの治療は飛躍的に進歩しており、患者さん一人ひとりの状態や、がん細胞の遺伝子特性に合わせた「個別化医療」が進んでいます。

分子標的治療薬
  • がん細胞の増殖や生存に関わる特定の分子(標的)の働きをピンポイントで阻害する薬です。
  • 正常な細胞への影響が比較的少なく、副作用を抑えつつ高い効果が期待できる場合があります。
免疫チェックポイント阻害薬
  • 私たちの体が持つ免疫細胞には、がん細胞を攻撃する能力があります。
  • しかし、がん細胞は免疫細胞に「攻撃停止」の信号を送ることで、その攻撃から逃れようとします。
  • 免疫チェックポイント阻害薬は、この攻撃停止の「ブレーキ」を解除し、患者さん自身の免疫細胞が再びがん細胞を攻撃できるようにする薬です。

これらの最新治療は、特に進行がんや再発がんの患者さんにおいて、生存期間の延長や生活の質の改善に大きく貢献しています。どの治療法が最も効果的かは、専門医が患者さんの状態を総合的に評価して判断します。

炎症を抑える食事と生活習慣の注意点

潰瘍性大腸炎の治療において、薬物療法と並んで非常に大切なのが、日々の食事と生活習慣の見直しです。大腸の炎症を抑え、寛解状態を維持することは、症状の改善だけでなく、大腸がんのリスクを低減するためにも重要です。

腸に負担をかけすぎない食事と、心身の健康を保つ生活習慣を意識しましょう。

食事の注意点

潰瘍性大腸炎では、病気の活動期(症状が出ている時)と寛解期(症状が落ち着いている時)で、食事のポイントが異なります。

状態 食事のポイントと具体例
活動期(炎症時) 腸への刺激を最小限に抑え、消化の良い食事を心がけることが最も大切です。脂肪分が少なく、便として残るカスが少ない「低脂肪・低残渣(ていざんさ)」の食事が基本となります。
具体的な食品例として、白米、おかゆ、うどん、豆腐、鶏のささみ、白身魚、柔らかく煮た野菜などが挙げられます。果物も皮をむいて、少量であれば良いでしょう。
避けるべきもの:脂肪分の多い揚げ物やバター、食物繊維の多い生野菜やきのこ類、海藻類、香辛料、アルコール、カフェイン、冷たい飲み物などです。これらは腸を刺激し、炎症を悪化させる可能性があります。
寛解期(安定期) 炎症が落ち着いている寛解期では、基本的には刺激の少ないバランスの取れた食事であれば、比較的自由に食べることができます。しかし、個人差が大きいため、ご自身の体調に合わせて調整することが重要です。再燃(さいねん:症状がぶり返すこと)を防ぐためにも、腸に負担をかけすぎないよう意識しましょう。
例えば、和食中心のバランスの取れた食生活はおすすめです。脂肪分や刺激物の摂りすぎには引き続き注意し、適度な食物繊維を摂るようにしましょう。体調が悪くなったら、活動期の食事に戻すなど、柔軟に対応することが大切です。

生活習慣の注意点

潰瘍性大腸炎の患者さんが、病気の症状を落ち着かせ、大腸がんのリスクを減らすためには、日々の生活習慣の見直しも非常に重要です。

十分な休養と睡眠の確保
  • ストレスや疲労は、潰瘍性大腸炎の炎症を悪化させる大きな要因となります。
  • 無理はせず、体を休ませる時間を意識的に作り、質の良い睡眠を十分にとるように心がけましょう。
  • 毎日同じ時間に寝起きするなど、規則正しい生活も大切です。
ストレスの軽減
  • ストレスは腸の症状に大きく影響することが知られています。
  • リラックスできる時間を持つ、趣味に没頭する、軽い運動をするなど、ご自身なりのストレス解消法を見つけることが大切です。
  • 必要であれば、専門家へ相談することも有効な手段です。
禁煙・節酒
  • 喫煙は、潰瘍性大腸炎の悪化や再燃リスクを高めることが多くの研究で指摘されています。
  • アルコールも腸に刺激を与えるため、控えめにすることが望ましいです。
  • 禁煙や節酒は、症状のコントロールだけでなく、大腸がんを含む様々な病気の予防にも繋がります。

これらの食事と生活習慣の注意点を守ることで、潰瘍性大腸炎の寛解状態を維持しやすくなり、結果として大腸がんへの進行リスクを低減することにも繋がります。ご自身の体調と相談しながら、できることから少しずつ取り入れていきましょう。

大腸内視鏡検査による早期発見とポリープ切除

大腸内視鏡検査は、潰瘍性大腸炎の病状を管理する上で不可欠なだけでなく、大腸がんの予防と早期発見において極めて重要な役割を果たします。特に潰瘍性大腸炎をお持ちの患者さんは、一般の方に比べて大腸がんになるリスクがやや高いため、定期的な検査が欠かせません。

潰瘍性大腸炎患者さんにとっての内視鏡検査の重要性

病状の正確な評価
  • 内視鏡で直接大腸の粘膜を観察し、炎症の程度や範囲、潰瘍の状態などを確認できます。
  • これにより、治療の効果を客観的に評価し、今後の治療方針を決定する上で重要な情報が得られます。
大腸がんの超早期発見
  • 潰瘍性大腸炎による慢性的な炎症は、大腸の粘膜細胞に異常な変化を起こし、最終的にがんへと進行する可能性があります。
  • 大腸内視鏡検査は、このような変化(「異形成(いけいせい)」と呼ばれるがんになる前段階の細胞変化や、ごく早期のがん)を見つけ出す上で最も有効な方法です。
  • 症状が出る前に異常を発見し、適切な処置を行うことで、がんへの進行を未然に防ぐ、あるいは早期に治療を始めることが可能になります。

検査頻度とポリープ切除の意義

潰瘍性大腸炎の患者さんが大腸内視鏡検査を受ける頻度は、病気の発症からの期間、炎症の範囲や重症度、ご家族に大腸がんの罹患歴があるかなどによって異なります。

大腸内視鏡検査の役割 ポイントと詳細な説明
定期的なサーベイランス検査 一般的には、潰瘍性大腸炎と診断されてから8年から10年が経過した時点から、1年から2年に1回程度の「サーベイランス内視鏡検査」と呼ばれる定期的な大腸内視鏡検査が推奨されています。
これは、特に症状がなくても、がんやその前段階の病変を見逃さないための計画的な検査です。個々のリスク因子に応じて、検査間隔は主治医と相談して決定します。
ポリープの発見と切除による予防 ほとんどの大腸がんは、良性の「腺腫(せんしゅ)」というポリープから発生すると言われています。内視鏡検査中にこのようなポリープや異形成が見つかった場合、その場で切除することで、将来のがん化を未然に防ぐことができます。
異形成は、炎症が長期間続いた粘膜に起こりやすい細胞の変化です。内視鏡で異形成が見つかった場合も、その範囲や程度によっては切除することで、がんへの進行を防ぐことが可能です。
苦痛の少ない検査への配慮 大腸内視鏡検査は、「つらい」「痛い」といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現在の医療技術は大きく進歩しており、苦痛を軽減するためのさまざまな工夫がされています。
例えば、鎮静剤(眠くなるお薬)を使用して、患者さんが楽な状態で検査を受けられるようにしたり、細くて柔軟な内視鏡を使用したりすることで、検査の負担を大幅に減らすことができます。
台東区でも、こうした苦痛の少ない検査を提供している医療機関が多くありますので、検査に対するご自身の不安を主治医に伝え、安心して検査を受けられる方法を相談することが大切です。

定期的に検査を受け、異常があった場合に早期に対応することは、大腸がんの予防と早期治療に直結します。

潰瘍性大腸炎の寛解維持が大腸がん予防に繋がる理由

潰瘍性大腸炎の治療目標は、単に症状を抑えることだけではありません。長期にわたって炎症のない「寛解」の状態を維持することが、大腸がん、特に「潰瘍性大腸炎関連大腸がん(CAC)」と呼ばれる特殊ながんの予防に直結する、非常に重要な要素となります。

私たち医師が、潰瘍性大腸炎の寛解維持にこだわるのは、以下のようなメカニズムがあるからです。

慢性的な炎症が大腸がんリスクを高めるメカニズム

潰瘍性大腸炎では、大腸の粘膜に慢性的な炎症が繰り返し起こります。この慢性の炎症が、大腸の細胞に継続的なダメージを与え、細胞の設計図である遺伝子(DNA)に異常を引き起こすリスクを高めます。

細胞の損傷と修復の繰り返し
  • 炎症によって傷ついた細胞は、自己修復しようと活発に新しい細胞を作り出します。
  • この細胞の分裂・再生が繰り返される中で、遺伝子にエラー(変異)が生じやすくなります。
遺伝子の変化(変異の蓄積)
  • 通常であればエラーは修復されますが、慢性的な炎症が続く環境下では、エラーが修復されずに蓄積されやすくなります。
  • この遺伝子変異が蓄積されると、細胞の増殖を制御する仕組みに異常が生じ、がん細胞へと変わっていくリスクが高まるのです。
  • 実際に、慢性的な腸の炎症は、大腸がんの重要なリスク因子であり、潰瘍性大腸炎関連大腸がん(CAC)の発生率は増加傾向にあることが指摘されています。

寛解維持が大腸がん予防に重要な理由

炎症が起きている期間が長ければ長いほど、また炎症の程度が強ければ強いほど、大腸がんのリスクは高まることが研究で明らかになっています。そのため、薬物療法や食事・生活習慣の改善によって、炎症をしっかりとコントロールし、寛解状態を維持することが、大腸がん予防の鍵となります。

寛解維持のメリット 具体的な効果
細胞へのダメージ軽減 炎症が治まっている期間が長ければ、大腸の粘膜細胞がダメージを受ける頻度が減ります。これにより、遺伝子異常が起こるリスクを抑えられ、がん化への道を断つことに繋がります。
がん化プロセスの抑制 炎症や炎症に関わる分子・シグナル伝達経路を標的とする治療薬は、CACの予防と治療に有効である可能性が示されています。また、抗炎症作用を持つ薬剤は、腫瘍発生に関与する複数の分子やシグナル伝達経路を通じて、CACの予防または治療効果を示すことが分かっています。
適切な治療で炎症を抑え続けることは、がん化に至るプロセス自体を抑制する効果が期待できるのです。
定期的な観察の継続 寛解期であっても、定期的な大腸内視鏡検査を継続することは非常に重要です。もし万が一、細胞にがん化の兆候(異形成など)が見られた場合でも、早期に発見し、速やかに対処することが可能になります。
これにより、がんが進行する前に治療を開始でき、予後を大きく改善することができます。
生活の質の向上 症状が落ち着いていることで、日常生活をより快適に送ることができます。これは精神的な負担を軽減し、病気と長く付き合っていく上で非常に重要です。
心身ともに安定した状態を保つことは、治療の継続にも繋がり、結果として長期的な寛解維持、ひいては大腸がん予防にも貢献します。

このように、潰瘍性大腸炎の寛解を維持することは、単に症状がないという状態を保つだけでなく、大腸がんという重篤な合併症を防ぐ上で極めて重要な意味を持つのです。私たち医師と連携し、根気強く治療に取り組んでいきましょう。

台東区で潰瘍性大腸炎と大腸がんを診療できる医療機関と2つの支援制度

台東区にお住まいの方で、潰瘍性大腸炎や大腸がんという病気と向き合っていらっしゃる皆様へ。日々の生活の中で、病気への不安や心配を抱えることは少なくないでしょう。病気と上手に付き合い、安心して生活を送るためには、信頼できる医療機関で適切な診療を受け、利用できる支援制度をしっかりと知ることが非常に大切です。

私たち医師も、皆様が安心して治療に専念できるよう、サポートしたいと強く願っています。この章では、台東区内で適切な医療を受けられる場所や、治療にかかる経済的な負担を軽減するための制度について、具体的な情報をご紹介いたします。

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潰瘍性大腸炎・大腸がんの専門医がいる医療機関の探し方

潰瘍性大腸炎と大腸がんは、専門的な知識と豊富な経験を必要とする疾患です。特に潰瘍性大腸炎は、慢性的な大腸の炎症が長期間続くことで、大腸がん、特に「潰瘍性大腸炎関連大腸がん(CAC)」と呼ばれる特殊ながんのリスクを高めることが知られています。そのため、適切な診断と効果的な治療を受けるには、専門の医師を見つけることが非常に重要です。

専門医を探す際には、以下のポイントを参考にしてください。

専門医資格の確認

  • 消化器内視鏡専門医の資格を持つ医師がいますか。
  • これらの資格は、消化器疾患や内視鏡検査に関する高度な知識と技術を持つことを示しています。

専門医の検索方法

  • 日本消化器内視鏡学会のウェブサイトで、専門医のリストが公開されています。
  • 台東区内で専門医を検索してみるのも良い方法です。
  • かかりつけの医師に相談し、専門の医療機関を紹介してもらうことも有効です。
  • 医療機関のウェブサイトで、潰瘍性大腸炎や大腸がんの診療実績、専門外来の有無、導入されている医療機器などを確認しましょう。

セカンドオピニオンの活用

  • 主治医以外の医師に意見を聞く「セカンドオピニオン」の制度を活用してください。
  • 複数の専門医の意見を聞くことで、納得のいく治療方針を選ぶことができます。

苦痛の少ない大腸内視鏡検査を提供する医療機関

大腸内視鏡検査は、潰瘍性大腸炎の病状を診断し、評価する上で不可欠な検査です。さらに、大腸がん、特に潰瘍性大腸炎関連大腸がんの早期発見においても極めて重要な役割を果たします。しかし、「検査が怖い」「痛そう」「前処置が大変そう」といった不安から、検査をためらってしまう方も少なくありません。

台東区には、患者さんの負担をできるだけ軽減するための工夫をしている医療機関が多くあります。ご自身の不安を軽減し、安心して検査を受けていただくために、以下の点を確認してみましょう。

鎮静剤の使用

  • 検査中に眠くなるお薬を使うことで、痛みや不快感をほとんど感じずに検査を受けられます。
  • うとうとしている間に検査が終わるため、心身の負担が軽減されます。

経験豊富な医師による挿入技術

  • 内視鏡の挿入には、高度な技術と熟練した経験が必要です。
  • 経験豊かな専門医が、患者さんの体の構造に合わせて慎重に操作することで、スムーズで苦痛の少ない検査が可能になります。

炭酸ガス送気の使用

  • 検査時に一般的な空気の代わりに、吸収されやすい炭酸ガスを大腸に送る医療機関もあります。
  • 検査後のお腹の張りや不快感を軽減する効果が期待できます。

最新の内視鏡機器

  • より細く、柔軟な内視鏡スコープや、高画質な画像診断が可能な機器を導入している医療機関もあります。
  • これらの機器は、検査の精度向上と患者さんの負担軽減に貢献します。

苦痛の少ない検査を提供している医療機関を探すには、クリニックのウェブサイトを確認したり、直接問い合わせてみたりすると良いでしょう。検査前の説明もしっかりと行い、患者さんの不安を解消してくれる医療機関を選ぶことが大切です。

特定医療費(指定難病)助成制度の概要と申請手続き

潰瘍性大腸炎は、厚生労働省が定める「指定難病」の一つです。この病気の治療は長期にわたることが多く、医療費が高額になるケースも少なくありません。そのため、患者さんの経済的な負担を軽減し、継続して適切な治療を受けられるようにするための大切な制度が、「特定医療費(指定難病)助成制度」です。

この制度は、治療を中断することなく、病気と向き合っていくために非常に重要な支援策です。 ただし、区や市町村によりハードルが異なり、軽症の潰瘍性大腸炎では申請が通らない事も多いためご注意下さい。

制度の概要

  • この制度では、都道府県が認定した指定医療機関での治療にかかる医療費のうち、自己負担額の一部を助成します。
  • 患者さんの所得に応じた自己負担上限額が設けられており、月ごとの医療費が上限額を超えた場合は、超過分が助成されます。
  • これにより、高額な治療費の心配を軽減し、特に、炎症や炎症に関わる「分子(ぶんし)」や「シグナル伝達経路(しぐなるでんたつけいろ)」を標的とする比較的高価な治療薬(生物学的製剤やJAK阻害剤など)も安心して継続していただくことが可能になります。

潰瘍性大腸炎と大腸がんQ&A

潰瘍性大腸炎と診断された患者さんや、大腸がんのリスクについて不安を感じていらっしゃる方から、多くのご質問が寄せられます。病気と前向きに向き合い、適切な対策を講じるためには、疑問を解消することがとても重要です。私たち医師も、皆様の不安を軽減し、最適な治療を提供できるよう、いつも寄り添いたいと考えています。

ここでは、皆様からよくいただく質問に対し、内科専門医の視点から分かりやすくお答えいたします。

質問 回答
Q1: 潰瘍性大腸炎だと必ず大腸がんになりますか?

A1: いいえ、必ずがんになるわけではありませんが、リスクは高まります。
潰瘍性大腸炎を患っているからといって、すべての方が大腸がんになるわけではありません。しかし、世界的に見て大腸がんの発生率は増加傾向にあり、潰瘍性大腸炎の患者さんでは、一般の方に比べて大腸がんのリスクがやや高まることが知られています。特に、「潰瘍性大腸炎関連大腸がん(CAC)」と呼ばれる特殊なタイプの大腸がんが発生しやすい傾向があります。

慢性的な腸の炎症は、大腸がんの重要なリスク因子です。潰瘍性大腸炎では、大腸の粘膜が長期間にわたって炎症を繰り返すため、細胞が繰り返し傷つき、その修復過程で遺伝子にエラー(変異)が生じやすくなります。このエラーが蓄積されることで、がん化のリスクが高まるのです。CACの発生率は増加傾向にあるため、このリスクを正しく理解し、定期的な検査と適切な治療で、がんの早期発見や予防に繋げることが非常に大切です。

Q2: 潰瘍性大腸炎の治療薬は大腸がん予防にもなりますか?

A2: はい、一部の治療薬には大腸がんの予防効果も期待できる場合があります。
潰瘍性大腸炎の治療に使われる抗炎症薬は、単に炎症を抑えるだけでなく、大腸がんの発生や進行を抑える効果も期待されています。

炎症が長期間続くと、大腸の細胞内で「分子」や「シグナル伝達経路」と呼ばれる、細胞間の情報伝達の仕組みに異常が生じやすくなります。この異常が、がん細胞の発生や増殖を促す要因となることが分かっています。
潰瘍性大腸炎の治療薬、特に炎症や、その情報伝達の仕組みを標的とする薬剤は、これらの異常な分子の働きを抑え、がん化へのプロセスを阻害する可能性があります。研究では、抗炎症作用を持つ薬剤が、腫瘍発生に関わる複数の情報伝達経路を通じて、潰瘍性大腸炎関連大腸がん(CAC)の予防や治療効果を示すことが示唆されています。炎症をしっかりコントロールし、寛解状態を維持することが、結果的に大腸がんのリスク低減に繋がると考えられます。また、潰瘍性大腸炎関連大腸がん(CAC)の予防や進行遅延のための新規抗炎症薬の開発も進められており、今後の治療に期待が持たれています。

Q3: 大腸内視鏡検査はどのくらいの頻度で受けるべきですか?

A3: 患者さんの状態によって異なりますが、一般的には1~2年に1回程度が推奨されます。
潰瘍性大腸炎の患者さんにとって、定期的な大腸内視鏡検査は非常に重要です。たとえ症状が落ち着いている「寛解期(かんかいき)」であっても、病気の範囲や罹病期間(診断されてからの期間)、ご家族に大腸がんの罹患歴があるかなど、個別のリスク因子によって推奨される検査頻度は異なります。

一般的には、潰瘍性大腸炎と診断されてから8~10年が経過した時点から、1~2年に1回程度の「サーベイランス内視鏡検査」と呼ばれる定期的な検査が推奨されることが多いです。この検査の目的は、症状がないうちに「異形成(いけいせい)」と呼ばれるがんになる前段階の細胞変化や、ごく早期のがんを発見することです。早期に異常を見つけ、適切な処置を行うことで、大腸がんへの進行リスクを大きく下げることが可能になります。
検査に対する不安がある場合は、鎮静剤(眠くなるお薬)の使用や炭酸ガス送気など、苦痛を軽減するための方法について、主治医とよく相談し、ご自身の状況に合わせた最適な検査計画を立てましょう。

Q4: 潰瘍性大腸炎と診断されたら、医療費の助成はありますか?

A4: はい、一定の条件を満たせば「特定医療費(指定難病)助成制度」の対象となります。
潰瘍性大腸炎は、厚生労働省が定める「指定難病」の一つです。そのため、病気の重症度などの一定の基準を満たした場合、「特定医療費(指定難病)助成制度」の対象となり、医療費の自己負担額が軽減されます。

この制度を利用すると、治療にかかる医療費のうち、自己負担額が患者さんの所得に応じた上限額に設定されます。特に、炎症や、その情報伝達の仕組みを標的とする比較的高価な治療薬(生物学的製剤やJAK阻害剤など)も、この制度によって経済的な負担を軽減し、安心して継続していただくことが可能です。治療を中断することなく、病気と向き合っていくために非常に重要な支援策と言えます。
申請手続きには、いくつかの書類が必要になりますので、お住まいの地域の保健所や役所の窓口、またはかかりつけの医療機関にご相談ください。

Q5: 食事や生活習慣で気を付けることはありますか?

A5: はい、食事と生活習慣の見直しは、治療において非常に大切な要素です。
潰瘍性大腸炎の症状を安定させ、大腸がんのリスクを低減するためには、日々の食事と生活習慣を意識的に見直すことが不可欠です。腸への負担を最小限に抑え、心身の健康を保つことが、寛解維持(症状が落ち着いた状態を保つこと)に繋がります。

潰瘍性大腸炎では、病気の「活動期(症状が出ている時)」と「寛解期(症状が落ち着いている時)」で食事のポイントが異なります。
– **活動期には、**腸への刺激を最小限に抑え、消化の良い「低脂肪・低残渣(ていざんさ)」の食事を心がけることが大切です。脂肪分の多いもの、食物繊維の多い生野菜やきのこ類、香辛料、アルコールなどは控えましょう。
– **寛解期には、**基本的に刺激の少ないバランスの取れた食事ができますが、個人差があるためご自身の体調に合わせて調整が必要です。和食中心の食生活はおすすめです。

生活習慣では、ストレスや疲労は炎症を悪化させる要因となるため、十分な休養と睡眠を確保し、ご自身なりのストレス解消法を見つけることが大切です。また、喫煙は症状の悪化や再燃リスクを高めるため、禁煙・節酒を強くおすすめします。
具体的な食事内容や生活指導については、主治医や管理栄養士にご相談ください。

まとめ

今回は、潰瘍性大腸炎が大腸がんへ進行するリスクや、その予防・治療法について詳しく見てきました。潰瘍性大腸炎の患者さんは、慢性的な炎症が続くことで、大腸がんのリスクが高まることが知られています。しかし、このリスクを正しく理解し、適切な対策を講じれば、早期発見や予防へと繋げることが可能です。治療薬で炎症をコントロールし、寛解状態を維持すること、そして何よりも定期的な大腸内視鏡検査を受けることが大切です。もし、ご自身の体調に異変を感じたり、検査に不安を感じたりした場合は、一人で抱え込まず、信頼できる専門医に相談しましょう。日々の食事や生活習慣にも気を配りながら、病気と上手に付き合い、安心して豊かな毎日を送っていただけるよう、私たちもサポートしていきます。

参考文献

  • 大腸癌に関する研究
  • 潰瘍性大腸炎関連大腸癌(CAC)のリスクに関する研究
  • 抗炎症薬の大腸癌予防に関する研究

追加情報

大腸癌は世界で3番目に多い悪性腫瘍であり、潰瘍性大腸炎(UC)などの炎症性腸疾患(IBD)は、大腸癌、特に潰瘍性大腸炎関連大腸癌(CAC)のリスクを高める。 – 慢性的な腸の炎症は、大腸癌の重要なリスク因子であり、CACの発生率は増加傾向にある。 – 炎症や炎症に関わる分子・シグナル伝達経路を標的とする治療薬は、CACの予防と治療に有効である可能性がある。 – 抗炎症作用を持つ薬剤は、腫瘍発生に関与する複数の分子やシグナル伝達経路を通じて、CACの予防または治療効果を示す。 – CACの予防または進行遅延のための新規抗炎症薬の開発は、大腸癌対策における新たな分野となっている…

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