内視鏡検査前に調整が必要な薬剤(内服薬)について
内視鏡検査の前には一時休薬が必要な薬剤などがあります。
この項目では、内視鏡検査前に注意が必要な薬剤についてまとめさせていただきます。
【監修者】
かわぐち内科・内視鏡クリニック
川口 佑輔
- 2010年北里大学医学部卒業
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- 日本肝臓病学会専門医
目次
抗凝固薬(血をサラサラにする薬)
内視鏡検査と抗凝固薬内服には非常に深い関係があります。
抗凝固薬(血をさらさらにする薬)を飲む意味とやめるリスク、内視鏡の観点から抗血栓薬を中止したい理由、実際の対処方法などについてまとめます。
抗凝固薬(血をさらさらにする薬)を飲む意味とリスク
血液をさらさらにする薬は様々な場面で使われています。
例えば心筋梗塞を起こしてしまった方は、バイアスピリンやプラビックスという薬を内服する事が多いです。
心房細動という不整脈がある方は、血液がうっ滞して固まり血栓を作る事があるため、DOAC(エリキュースやリクシアナなど)という薬を内服します。
他にも様々な病態で使用される血をさらさらにする薬ですが、内視鏡を行う立場からすれば当然やっかいな薬です。
内視鏡検査では、必要に応じて組織をつまんだり(生検)ポリープを切除したりしますが、そのような処置を行うと出血のリスクがあります。
血液をサラサラにする薬を飲んでいる方では、この出血のリスクが上がってしまうのです。
内視鏡検査前に抗凝固薬をやめるか否かは、患者様の病態により異なります。
抗凝固薬を一時的に休薬する事で、内視鏡時の出血のリスクを減らすことができますが、その間に心筋梗塞を発症してしまったらその方が命に関わります。
ですので、抗凝固薬を休薬しても心筋梗塞や脳梗塞などを発症するリスクが低いと、考えられる場合に、抗凝固薬を休薬する事が可能なのです。
内視鏡処置の出血リスク
内視鏡処置の中でも、出血リスクのほとんどないものから、出血リスクの高い処置まであります。
内視鏡検査自体
一般的に内視鏡検査を行うのみでは、出血のリスクはほとんどないと言われています。そのため、抗凝固薬を飲んでいても内視鏡検査自体は可能です。
生検検査
『生検』とは、内視鏡検査でがんを疑う所見などが見つかった際に、その一部を鉗子というカップでつまみ組織を提出する処置の事を指します。つまんだ組織は病理の先生に提出し、顕微鏡観察で診断を付けて頂きます。
この生検という検査は、『低出血危険度処置』にあたります。
その名の通り、出血のリスクはあるものの、出血のリスクは低いと判断される処置です。
内視鏡的大腸ポリープ切除術
大腸ポリープを切除する処置(以後ポリペクトミーと呼ぶ)は、その切除方法にもよりますが、基本的には『高出血危険度処置』にあたります。
抗凝固薬内服中患者様の実際の対応方法
血をサラサラにする薬を飲んでいる理由により、一時的に休薬が可能な場合とそうでない場合があります。
大抵の場合は一時的な休薬であれば可能ですが、それでも塞栓症のリスクが増える事は事実であるため、その点は患者様にご説明させて頂きリスクについて同意を頂いた上で休薬をお願いしています。
また、内視鏡処置が低出血危険度処置までか、高出血危険度処置まで行う可能性があるかでも、血をサラサラにする薬を休薬するかどうかが変わってきます。
胃カメラ検査でポリープ切除を行う事はないため胃カメラ検査は低出血危険度処置までを想定しており、大腸カメラ検査ではポリープ切除の可能性があるため高出血危険度処置までを想定することが多いです。
※大腸カメラで抗血栓薬を飲んでいる状態ですとポリープ切除ができません。この場合、必要に応じて再度大腸カメラが必要になるため、お勧めはしません。
ガイドラインにて各薬剤と内視鏡処置別の休薬推奨期間が記されておりますので、載せておきます。
糖尿病の薬
糖尿病の薬を内服・注射している方もたくさんいらっしゃいます。
糖尿病の薬は血糖を下げるための薬ですので、食事を食べない場合には休薬しないと血糖が下がりすぎてしまう恐れがあります。
(血糖は一時的に高値であってもあまり問題になりませんが、血糖値が下がりすぎると意識障害を起こす可能性があるためです)
基本的に糖尿病の薬の場合、抗凝固薬ほど複雑ではなく、普段食べた時に使用する薬剤は休薬するという事になります。
胃カメラの場合朝食が禁食となりますので朝食分の薬を、大腸カメラの場合施行時間にもよりますが朝昼食が禁食になりますので朝昼分の薬を中止する事になります。
※1型糖尿病の方
1型糖尿病では、持効型インスリン(1日効いている作用時間の長いタイプのインスリン)を中止すると異常な高血糖を来し、ケトアシドーシスと呼ばれる命に関わる病態を引き起こす恐れがあります。
かならず医師に1型糖尿病である旨はお伝えください。
その他の薬剤
高血圧や高脂血症の薬など様々な薬剤を内服している方がいらっしゃいます。
基本的に内視鏡検査前にそれらの薬を休薬する必要はありません。
高血圧の薬などは、朝飲まない事で血圧が上昇し、内視鏡中に出血のリスクが上がる事もありますので、通常通りの内服をお願いしています。
市販の薬剤で気を付ける必要があるもの
『アスピリン』という薬をご存じでしょうか?
『アスピリン』は解熱鎮痛作用を有する薬であり、市販の風邪薬・解熱鎮痛薬の一部として含まれています。
この『アスピリン』ですが、実はもう一つ抗血小板作用(血をサラサラにする作用)があります。
つまり市販の解熱鎮痛薬を高頻度で使用している場合には、一時的にその薬を止めて頂く必要があるのです。
検査前の外来受診時には、市販の薬も含めて普段飲んでいるお薬を伺いますので、必ず薬の内容が分かるよう準備をお願い致します。
内視鏡検査前の薬剤調整で良くあるご質問
最後に、内視鏡検査前の薬剤調整について患者様から多く寄せられる質問にお答えします。
Q.便秘の薬を飲んでいます。調整が必要ですか?
大腸カメラ検査の場合、便秘の方は腸管洗浄剤の内服に苦労する可能性があります。
ですから普段便秘の薬を飲んでいる方は、普段通り継続して薬剤を内服して頂く様お願い致します。
また便秘のコントロールが悪い場合には、事前に外来にて内服の調整をすることもありますので、お気軽にご相談下さい。
Q.血液をサラサラにする薬を誤って飲んでしまいました。どうすれば良いですか?
血液をサラサラにする薬剤の種類と、その日に行う検査の種類により対応は異なりますが、基本的に内視鏡検査自体を行う事は可能です。
大腸カメラの場合ではポリープを切除できなくなる可能性もありますが、せっかく準備を進めてもらったのであれば、大腸カメラだけでも予定通り行ってみましょう。
Q.休薬していた薬はいつから再開すれば良いですか?
抗凝固薬であれば、基本的には翌日より薬剤を再開して頂いております。
糖尿病の薬であれば、当日食事再開に合わせて薬剤を再開して頂きます。
当院では、麻酔薬を使った苦痛の少ない内視鏡検査を行っています。内視鏡専門医である院長が責任を持って担当し、大腸ポリープがあれば当日切除も可能です。
検査の説明を聞いてから大腸カメラを受けたい方は【外来Web予約】へお進みください。
先に検査日を決めたい方は【大腸カメラWeb予約】へお進みください。
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