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長引く下痢…潰瘍性大腸炎かも?見逃したくない6つのサインと正しい受診のタイミング

[2025.06.06]

はじめに:その「長引く下痢」、見過ごしていませんか?

「お腹を壊したかな」「冷たいものを飲みすぎたかも」
そんな軽い気持ちで見過ごしがちな長引く下痢。
しかし、2週間以上続くようなら要注意。潰瘍性大腸炎という病気が隠れている可能性があります。

潰瘍性大腸炎は、慢性的に大腸に炎症が起こる難病で、放っておくと症状が悪化したり、日常生活に支障をきたすことも。この記事では、以下のような疑問に答えていきます。

  • ただの下痢と潰瘍性大腸炎の違いは?

  • 潰瘍性大腸炎の症状・検査・治療は?

  • 受診の目安はどこ?

 

潰瘍性大腸炎とは?若い世代にも増えている「炎症性腸疾患」

潰瘍性大腸炎はどんな病気?

潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis)は、大腸の粘膜に慢性的な炎症や潰瘍ができる病気です。原因ははっきりとは分かっていませんが、免疫異常、遺伝、環境因子などが関係しているとされています。

日本では20〜40代の発症が多く、厚生労働省の調査によると2020年時点で22万人以上の患者がいます(※1)。

潰瘍性大腸炎について詳しくは こちら をご覧ください。

潰瘍性大腸炎の主な症状

潰瘍性大腸炎の代表的な症状としては以下のものがあります。

  • 下痢(とくに粘液や血が混ざる)

  • 血便(鮮やかな赤い血が混じることが多い)

  • 腹痛(左下腹部が中心)

  • 発熱体重減少

  • 残便感排便回数の増加

潰瘍性大腸炎とクローン病の違い

潰瘍性大腸炎と似たような病気としてクローン病があります。

症状は似ている事も多いですが、内視鏡所見には明確な違いがあり、内視鏡検査にてある程度鑑別は可能です。

病名 主に炎症が起きる場所 代表的な症状 発症年齢
潰瘍性大腸炎 大腸の粘膜(主に直腸から) 血便・下痢・腹痛 20〜40代が中心
クローン病 口から肛門まで(小腸多い) 下痢・発熱・体重減少 10代〜30代

※いずれも「炎症性腸疾患(IBD)」に分類されます。

 

潰瘍性大腸炎の原因と悪化要因とは?

原因は「免疫異常」+「体質」+「環境因子」

潰瘍性大腸炎は、自己免疫疾患の一種と考えられています。
本来、体を守るはずの免疫が誤って腸を攻撃してしまうことで、炎症や潰瘍が起こります。

主な要因は以下の通りです:

  • 遺伝的素因(家族に患者がいる人は発症リスクが高まる)

  • 腸内細菌のバランスの乱れ(ディスバイオーシス)

  • 食生活の欧米化(高脂肪・高タンパク)

  • ストレスや喫煙・禁煙

  • 感染や腸内の過敏反応

潰瘍性大腸炎はストレスや食生活で悪化する?

直接の原因ではないにせよ、ストレスや暴飲暴食が再燃(ぶり返し)の引き金になることがあります。特に、

  • 香辛料やアルコールの摂取

  • 睡眠不足

  • 精神的な緊張

などが症状を悪化させるケースもあるため、生活習慣の見直しも重要です。

 

下痢=潰瘍性大腸炎?一般的な下痢との見分け方と受診の目安

一般的な下痢との違いは?【比較表】

急性下痢(2週間未満の下痢)の多くは感染性胃腸炎が原因です。

一方慢性下痢(2週間以上持続する下痢)は潰瘍性大腸炎やクローン病、過敏性腸症候群などが隠れている可能性があります。

一般的な下痢と潰瘍性大腸炎による下痢の違いを表にまとめますので御覧ください。

項目 一般的な下痢(例:ウイルス性) 潰瘍性大腸炎による下痢
持続期間 数日〜1週間程度で改善 2週間以上続く
血便の有無 なしが一般的 鮮やかな赤い血が混じる
症状の時間帯 日中のみが多い 夜間にもトイレに行くことがある
発熱・体重減少 まれ 見られることがある
残便感・排便回数 一時的 頻繁に排便・残便感あり

潰瘍性大腸炎が疑われるチェックリスト

以下の項目に2つ以上当てはまる方は、消化器内科の受診を検討しましょう。

  • □ 下痢が2週間以上続いている

  • □ 血便が出る

  • □ 夜中にもトイレに行く

  • □ 排便後もスッキリしない(残便感)

  • □ 発熱や体重減少がある

  • □ お腹の痛みが頻繁にある

 

潰瘍性大腸炎の診断と治療法|日常生活で気をつけたいこと

潰瘍性大腸炎の診断方法

医療機関では以下の検査が行われます。

検査項目 内容
問診・診察 症状、期間、血便の有無、家族歴を確認
血液検査 炎症の有無(CRP)や貧血の有無をチェック
便検査 細菌・ウイルス感染との鑑別
大腸カメラ 大腸カメラで腸内を観察し、組織を採取して確定診断
 
 
当院では苦痛の少ない大腸カメラ検査を行っておりますので、自分に大腸カメラが必要かどうかの相談も含め、是非2週間以上下痢が続く患者様は当院外来へお越しください。
 
 

治療法の選択肢とその内容

潰瘍性大腸炎と診断された場合、まず最初に使うのが5-ASA製剤と呼ばれる薬です。

70~80%程度の患者様はこの薬で症状が改善します。

5-ASAにて症状の改善がみられない場合には、ステロイドや免疫調整剤の投与が検討されますが、合併症のリスクや高頻度の通院がネックになります。

治療法の種類 内容
5-ASA製剤 軽〜中等症に使われる抗炎症薬(第一選択
ステロイド 炎症が強いときに短期使用(長期は副作用注意)
免疫調整薬/生物学的製剤 重症例・再発例で使われる先進治療
外科手術(大腸全摘) 難治例やがんリスクがある場合に選択される

潰瘍性大腸炎と共に生活するために大切なこと

  • バランスの良い食事(脂っこい物・香辛料・アルコールは控えめに)

  • ストレス管理(再燃を防ぐ)

  • 服薬の継続と定期通院(自己判断で中止しない)

  • 排便日誌の活用(体調変化に早く気づける)

 

まとめ:2週間以上の下痢や血便は、早めに消化器内科へ

「そのうち治るだろう」と思っていた下痢が長引くとき、体からの重要なサインかもしれません。潰瘍性大腸炎は早期発見・早期治療で症状の進行を防ぎ、QOL(生活の質)を保てる病気です。

🔍 まとめのポイント
・下痢が2週間以上続く場合は「慢性下痢」の可能性
・血便・腹痛・体重減少があるときは潰瘍性大腸炎を疑う
・早期の診断と継続的な治療で、日常生活の維持が可能

気になる症状があれば、まずは消化器内科を受診してみましょう。市販薬では対応できない疾患が、あなたの腸の中に潜んでいるかもしれません。

参考文献

  1. 日本消化器病学会. (2020). 潰瘍性大腸炎診療ガイドライン(改訂版). Retrieved from https://www.jsge.or.jp/guideline/ibd.html

  2. 藤原道隆, 他. (2014). 慢性下痢症の診療指針. 日本消化器病学会誌, 111(3), 487-495. Retrieved from https://www.jsge.or.jp/guideline/dysentery.html

  3. Ng, S. C., Shi, H. Y., et al. (2021). Global burden of inflammatory bowel disease in 2020 and projections to 2030. The Lancet Gastroenterology & Hepatology, 6(1), 27–38. https://doi.org/10.1016/S2468-1253(20)30291-9

  4. Danese, S., & Fiocchi, C. (2011). Ulcerative colitis in adults: A review. JAMA, 306(17), 2036–2043. https://doi.org/10.1001/jama.2011.1647

  5. 佐野俊二, 他. (2017). 炎症性腸疾患における腸管悪性腫瘍のリスク. 日本大腸肛門病学会誌, 70(4).

 

当院では、麻酔薬を使った苦痛の少ない内視鏡検査を行っています内視鏡専門医である院長が責任を持って担当し、大腸ポリープがあれば当日切除も可能です。

検査の説明を聞いてから大腸カメラを受けたい方は【外来Web予約】へお進みください。

先に検査日を決めたい方は【大腸カメラWeb予約】へお進みください。

 

【監修者】

かわぐち内科・内視鏡クリニック

川口 佑輔

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