【医師監修】SIBOって何?症状チェックリストと検査・治療法を徹底解説
近年、慢性的な下痢や腹部の張り、消化不良といった症状の背後に「SIBO(小腸内細菌増殖症)」が潜んでいることがわかってきました。SIBOは、適切に診断・治療すれば改善が期待できる一方、見逃されると長期的な体調不良や栄養不足につながることもあります。
この記事では、SIBOの定義からセルフチェック、検査・治療方法までをわかりやすく解説します。腸の不調でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
そもそもSIBO(小腸内細菌増殖症)とは?
SIBOとは?腸内フローラとの関係性
SIBOとは、**Small Intestinal Bacterial Overgrowth(小腸内細菌増殖症)**の略称で、小腸に通常よりも多くの腸内細菌が異常に増えてしまう状態です。
通常、腸内細菌は大腸に多く存在し、小腸には比較的少数しかいません。小腸は主に栄養の消化吸収を担っており、細菌の増殖が起こりにくいよう構造的・機能的に守られています。
しかし、何らかの原因で小腸内に細菌が増殖してしまうと、
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食後の腹部膨満感
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ガスやおならの増加
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慢性的な下痢や便秘
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栄養素の吸収不良(鉄・ビタミンB12など)
といった症状が引き起こされるようになります。
SIBOの主な原因
以下は、SIBOの発症に関与する主な原因をまとめたものです。
原因 | 説明 |
---|---|
小腸の蠕動運動の低下 | 内容物が停滞しやすくなり、細菌の異常増殖を招く |
胃酸や胆汁の分泌低下 | 本来の殺菌作用が低下し、細菌が生き残りやすくなる |
消化管手術の既往 | 胃切除やバイパス手術後などに細菌が逆流・停滞しやすくなる |
憩室の存在 | 小腸に細菌がたまりやすい構造的要因 |
慢性疾患 | 糖尿病、IBS、全身性強皮症などによる腸機能低下 |
特に、過敏性腸症候群(IBS)とSIBOは深い関連があるとされており、
IBS患者の最大78%がSIBOを合併していたという研究報告もあります(Pimentelら, 2003)。
「もしかしてSIBO?」と思ったら見るべき3つのサイン
代表的な症状とは?
SIBOでは、次のような消化器症状がよくみられます。
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食後すぐに腹部が張る(腹部膨満感)
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ガスがたまりやすく、臭いが強くなる
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長引く下痢、または便秘
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下痢と便秘を交互に繰り返す
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体重減少、鉄・ビタミンB12不足
これらは一般的な消化不良やIBSと似ているため、SIBOと気づかれずに長期間放置されることがある点が問題です。
他の病気との見分けが難しい
SIBOは以下の病気と混同されることがあります。
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IBS(過敏性腸症候群)
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潰瘍性大腸炎
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クローン病
これらと症状が重なることから、単なるストレスや食生活の問題と自己判断してしまう人が少なくありません。
SIBOを疑うべき体調の変化(一覧)
状況 | SIBOの可能性 |
---|---|
食後すぐにお腹が張る | 高い |
下痢や便秘が長期間続いている | 高い |
抗菌薬で一時的に改善するが、再発する | 中程度 |
炭水化物や乳製品で悪化する | 中程度〜高い |
鉄欠乏性貧血や栄養失調がある | 高い |
上記のうち複数の症状が当てはまる場合は、SIBOの可能性が高まります。
自宅でできる!SIBOセルフチェックリスト
簡易チェックでリスクを把握
以下のリストは、SIBOを疑う際に参考になるチェックリストです。3つ以上該当する場合は注意が必要です。
チェック項目 | 該当 |
---|---|
食後にすぐお腹が張る | □ |
ガスが多く、においが気になる | □ |
長引く下痢または便秘がある | □ |
抗菌薬やサプリで一時的に改善する | □ |
IBSや消化器疾患の既往がある | □ |
ビタミンB12・鉄の不足を指摘されたことがある | □ |
炭水化物・乳製品を摂ると悪化する | □ |
プロバイオティクスが効かない、悪化する | □ |
該当数が多いほど、医師による専門的な診断が推奨されます。
自己判断ではなく医療機関へ
SIBOは適切な診断と個別の治療方針が必要です。誤ったサプリメント使用や極端な食事制限は症状を悪化させる可能性もあります。
SIBOの検査方法とその流れを解説
● 呼気テスト(ブレステスト)が主流
現在、最も多く行われているのは水素・メタン呼気テストです。小腸で異常に増えた細菌が、糖を発酵させて出すガスを呼気から検出します。
検査法 | 概要 | 対象菌 | 使用糖 |
---|---|---|---|
ブドウ糖呼気テスト | 小腸上部でのSIBO検出に優れる | 水素産生菌 | ブドウ糖 |
ラクツロース呼気テスト | 小腸全体の評価が可能 | 水素・メタン産生菌 | ラクツロース |
検査時間は約2〜3時間。一定間隔で息を吹きかけるだけの非侵襲的な検査です。
※当院では施行できません。
● 検査前の注意点と費用
準備内容 | 詳細 |
---|---|
前日の食事制限 | 発酵性食品・炭水化物を避けた食事 |
当日は絶食(水のみOK) | 正確なデータ取得のため |
抗菌薬・整腸剤の中止 | 7日前から |
運動や喫煙の制限 | 当日は控える |
費用は自由診療で8,000〜15,000円程度が目安です。
どう治す?SIBOの基本的な治療法と予防法
抗菌薬と食事管理が中心
SIBOの基本的な治療は、異常に増殖した細菌を除菌すること。第一選択は、**腸内にのみ作用する抗菌薬「リファキシミン」**です。
ただし、これらの薬剤は保険適応がなく、処方できるところが限られるのが現状です。
薬剤 | 特徴 |
---|---|
リファキシミン | 吸収されずに腸内にとどまる。副作用が少ない |
メトロニダゾールなど | メタン産生菌にも効果。副作用の注意が必要 |
同時に、低FODMAP食や腸内環境を整える食事療法も併用されます。
再発しないために生活改善が重要
SIBOは再発率が高く、1年以内に最大44%が再発するとの報告もあります(Lauritanoら, 2008)。
再発予防のポイント |
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食事管理(FODMAP制限) |
適度な運動とストレス管理 |
プロバイオティクス・プレバイオティクスの適切な使用 |
定期的なフォローアップ検査 |
SIBOは「一度治せば終わり」ではなく、再発管理が鍵となる慢性疾患です。腸の状態を丁寧にモニタリングしながら、長期的な健康を目指しましょう。
まとめ:慢性的な腸の不調、その原因はSIBOかもしれません
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SIBOは小腸内で腸内細菌が異常増殖する疾患で、IBSに似た症状を引き起こします。
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食後の膨満感、ガス、慢性下痢などが続く場合は要注意。
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呼気テストによる診断が可能で、抗菌薬+食事療法で改善が期待できます。
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再発防止のためには、生活習慣や腸内環境の見直しが必要です。
気になる症状がある方は、自己判断せず、早めに専門医の受診をおすすめします。
参考文献
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Pimentel M, Chow EJ, Lin HC. "Eradication of small intestinal bacterial overgrowth reduces symptoms of irritable bowel syndrome." Am J Gastroenterol. 2003;98(5):1021-1029.
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Lauritano EC, Gabrielli M, Scarpellini E, et al. "Small intestinal bacterial overgrowth recurrence after antibiotic therapy." Am J Gastroenterol. 2008;103(8):2031-2035.
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Ghoshal UC, Ghoshal U. "Small intestinal bacterial overgrowth and other intestinal disorders." Indian J Gastroenterol. 2020;39(1):3-18.
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日本消化器病学会ガイドライン:「消化器感染症診療ガイドライン(小腸・大腸編)2020年版」
【監修者】
かわぐち内科・内視鏡クリニック
川口 佑輔
- 2010年北里大学医学部卒業
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- 日本肝臓病学会専門医