【内視鏡でわかる】お腹が張る原因とは?病院に行くべきタイミングと検査内容を徹底解説
はじめに:お腹の張り、「放っておいていい症状」ではありません
「最近お腹がずっと張っている…」「ガスっぽいけど原因がわからない」
そんな腹部膨満感に悩む人は少なくありません。
一過性の不調で済むこともありますが、消化管の病気が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。
特に、1週間以上続く・市販薬でも改善しない・体重減少や血便を伴うといった場合は、内視鏡検査を検討すべきです。
本記事では、腹部の張りの原因と、内視鏡でわかること、病院を受診すべきサインまで、わかりやすく表や比較を交えて解説します。
お腹が張るのはなぜ?原因と病気の可能性をチェック
一時的な原因と慢性的な張りを分けて考える
お腹が張る原因は、大きく2つに分けられます。
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一時的な要因:食べすぎ、早食い、ガスのたまり、ストレス、月経前症候群(PMS)
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慢性的な要因:腸の運動異常、消化不良、便秘、機能性ディスペプシア、大腸がん、炎症性腸疾患など
代表的な原因を表で整理
お腹が張る代表的な原因を表にまとめました。
『お腹が張る』という現象は様々な原因で起こりますが、胃腸疾患、特に胃がんや大腸がんなど命に関わる疾患でない事を証明する事は非常に重要な事です。
原因カテゴリ | 主な原因 | 特徴 |
---|---|---|
食事関連 | 食べすぎ、炭酸飲料、脂質の多い食事 | 一時的、数時間〜1日で改善 |
腸内環境 | 便秘、過敏性腸症候群 | 便秘・下痢を伴うことも |
胃腸疾患 | 機能性ディスペプシア、胃がん、大腸がん | 長引く、症状が増えることも |
ホルモン | 月経前症候群(PMS)、妊娠初期 | 女性に多い周期性の症状 |
「張り」だけじゃない危険サインとは?
以下の症状がある場合は、消化器疾患のサインかもしれません。
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張り+便秘 or 下痢の繰り返し
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食後の不快感・胃もたれ
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血便、黒色便、急激な体重減少
特に中高年の場合、こうした症状は消化管のがんや炎症の初期症状であることがあります。
内視鏡検査がすすめられる3つのケース
ケース① 長引く腹部膨満感(1週間以上)
一過性の張りなら1~2日で改善しますが、以下のような状態が1週間以上続く場合は注意が必要です。
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食後に毎回お腹が苦しくなる
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ガスや便が出ても楽にならない
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日常生活に支障をきたすほどの膨満感
このようなときは、内視鏡で器質的疾患(特に胃がんや大腸がんなど)を除外することが重要です。
ケース② 他の症状を伴う
『お腹が張る』という症状以外に表のような症状を伴う場合、早めの受診が必要です。
特に血便や黒色便を伴う場合はすぐに医療機関を受診して下さい。
追加症状 | 疑われる疾患 | 必要な検査 |
---|---|---|
持続する腹痛 | 胃潰瘍、腸炎、腫瘍 | 胃・大腸内視鏡 |
血便・黒色便 | 大腸がん、胃がん | 大腸・胃内視鏡 |
急な体重減少 | がん、吸収不良症候群 | 内視鏡+血液検査 |
このような症状は「危険信号」です。内視鏡による早期発見がカギとなります。
当院では苦痛の少ない内視鏡検査を行っております。
詳しくは 『苦痛の少ない胃カメラ検査』『苦痛の少ない大腸カメラ検査』をご覧ください。
ケース③ 年齢や家族歴によるリスク
以下の条件に当てはまる方は、たとえ軽度の症状でも早めの検査が推奨されます。
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40歳以上(特に50歳以上)
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家族に胃がん・大腸がんの既往がある
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過去にポリープ・潰瘍を指摘されたことがある
内視鏡でわかる主な病気とは?【表で解説】
腹部の張りと関連する病気一覧
腹部膨満を来す疾患の代表例を以下に記載します。
疾患名 | 主な症状 | 内視鏡所見 | 検査方法 |
---|---|---|---|
機能性ディスペプシア | 胃もたれ、張り | 器質的異常なし | 胃カメラで除外診断 |
胃がん | 体重減少、食欲不振 | 潰瘍・隆起・びらん | 胃カメラ+生検 |
大腸がん | 下腹部の張り、血便 | ポリープ、潰瘍性病変 | 大腸内視鏡+生検 |
潰瘍性大腸炎 | 粘血便、下痢 | 粘膜びらん・潰瘍 | 大腸カメラ |
大腸ポリープ | 無症状〜張り | 有茎または無茎病変 | 大腸カメラで切除可 |
「異常なし」でも症状がある方へ
内視鏡で異常が見つからないけれど、お腹の張りが持続する方は、機能性疾患(過敏性腸症候群や機能性ディスペプシア)の可能性があります。
当院では、内視鏡検査で症状が見つからない方の症状に対する治療も積極的に行っています。
「見た目に異常がない=問題なし」ではなく、「症状があるなら治療が必要」と考えましょう。
内視鏡検査ってどんな検査?痛みや費用は?【表で比較】
H3:胃カメラと大腸カメラの比較
項目 | 胃カメラ | 大腸カメラ |
---|---|---|
検査部位 | 食道・胃・十二指腸 | 大腸全体 |
時間 | 約5〜10分 | 約20〜30分 |
準備 | 前夜から絶食 | 下剤での腸洗浄 |
痛み | 鎮静剤で軽減可 | 鎮静剤が主流 |
費用(保険適用時) | 約5,000〜12,000円 | 約6,000〜29,000円 |
※保険適用(3割負担)の例
鎮静剤の使用で「眠ったまま終わる」ことも
不安が強い方は鎮静剤を使うことで、「眠っている間に検査が終わる」感覚に。
医師に希望を伝えれば柔軟に対応してもらえるため、怖がらずに相談しましょう。
気になるお腹の張り…病院に行くべきタイミングは?
「1週間以上続く」なら迷わず受診を
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一時的な張りは1〜2日で回復
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長引く張りは機能性疾患やがんのサインかも
症状が改善しないなら、早期に診察を受けることが推奨されます。
受診すべきか迷ったら
これらの項目に当てはまる方は、是非一度医療機関をご受診下さい。
チェックリスト | 該当すれば医師に相談を |
---|---|
1週間以上症状がある | ✔️ |
市販薬でも改善しない | ✔️ |
体重減少や血便がある | ✔️ |
家族に消化器がんの人がいる | ✔️ |
お腹の張りは「見える化」で安心を
腹部膨満感の原因は多岐にわたり、自己判断では限界があります。
しかし、内視鏡検査を受ければ「目で見て確認」でき、病気の有無や種類が明確になります。
検査技術の進歩により、痛みや負担も大きく軽減されており、早期発見・早期治療のためにも、気になる症状がある場合は早めに専門医に相談しましょう。
参考文献・ガイドライン
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日本消化器病学会 編「消化器症状の診療ガイドライン 2021年版」
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Muto M et al. “Early detection of colorectal neoplasms by colonoscopy.” Gastroenterology 2019;156(2):315-329.
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日本胃癌学会編「胃癌取扱い規約 第15版」2021年
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日本消化管学会「機能性ディスペプシア診療ガイドライン」2014年改訂版
【監修者】
かわぐち内科・内視鏡クリニック
川口 佑輔
- 2010年北里大学医学部卒業
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- 日本肝臓病学会専門医