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胆石が出来る原因とは?なぜ胆嚢に石が出来るのかを医師が詳しく解説します

[2025.04.01]

はじめに:胆石はなぜできる?多くの人が気づかずに抱える消化器の落とし穴

健康診断や腹部エコーで「胆石がありますね」と言われて驚いたことのある方は多いかもしれません。胆石とは、肝臓から分泌される胆汁の成分が固まって「石」のようになったものです。
一見無害に思える胆石ですが、実際には激しい腹痛や胆嚢炎、胆管炎、さらには膵炎などの重篤な病気の原因にもなり得ます。

特に女性、高齢者、肥満傾向のある人に多く見られますが、最近では食生活や生活習慣の変化により、若い世代でも発見されるケースが増えています。この記事では、胆石ができるメカニズムから、リスク因子、症状、予防法に至るまで、医学的な視点からわかりやすく解説します。

 

胆石とは何か?胆嚢のしくみと胆汁の役割

胆石ができるのは、主に「胆嚢(たんのう)」と呼ばれる臓器の中です。胆嚢は、肝臓の下にある小さな袋状の器官で、肝臓で作られた胆汁を一時的にため、必要に応じて小腸に分泌する働きをしています。

胆汁は脂肪の消化を助ける重要な消化液ですが、その成分にはコレステロール、胆汁酸、ビリルビンなどが含まれています。これらの成分のバランスが崩れると、胆汁が結晶化し、徐々に固まり胆石となるのです。

胆石は、以下の3つのタイプに分けられます。

  1. コレステロール胆石(最も多い)

  2. 色素胆石(ビリルビンが主体)

  3. 混合型胆石

このうち、食生活や肥満と大きく関係しているのが「コレステロール胆石」です。

 

胆石の原因:なぜ胆汁の成分が固まるのか?

胆石ができる主な原因は、胆汁の「成分バランスの乱れ」と「胆嚢の働きの低下」にあります。特に以下のような要因が複数重なると、胆汁が濃縮され、石ができやすくなると考えられています。

 

コレステロール値の異常と胆石の関係

もっとも一般的な胆石は「コレステロール胆石」であり、血中や胆汁中のコレステロールが過剰になることが原因のひとつです。高脂肪食を好む傾向のある方や、肥満体型の方では、胆汁に溶けきれなかったコレステロールが結晶化しやすくなります。

また、最近では糖質の過剰摂取や食事内容の欧米化によって、若年層にもこのタイプの胆石が増加しています。

 

胆嚢の運動低下も原因に

胆嚢は、食事を摂ることで収縮し、胆汁を小腸に送り出します。この収縮運動が低下すると、胆嚢内に胆汁が長く滞留し、胆汁成分が沈殿しやすくなります。特に、朝食を抜く・不規則な食事習慣がある・絶食期間が長いなどのライフスタイルは、胆嚢の運動低下を招く一因です。

 

女性に多い理由:ホルモンの影響も見逃せない

女性は男性に比べて胆石ができやすい傾向があります。これは、女性ホルモンであるエストロゲンが胆汁中のコレステロール濃度を高める作用を持つためです。さらに、妊娠中はホルモンの変化により胆嚢の運動が低下しやすく、胆石ができやすくなります。

また、経口避妊薬(ピル)の使用も胆石リスクに関与すると報告されており、女性特有の体の変化が大きく影響しています。

 

急激な体重減少も胆石を引き起こす

意外かもしれませんが、短期間での急激なダイエットや断食も胆石のリスクを高めます。体が脂肪を急速に代謝しようとすると、胆汁中のコレステロール濃度が高まり、結晶ができやすくなるのです。

特に、手術前後の絶食、極端な糖質制限ダイエットを行っている人では、症状が出る前に胆石が形成されている可能性もあります。

 

胆石の症状とは?沈黙する“石”が突然痛みを引き起こすことも

胆石は、存在していても無症状のまま経過することが多く、検診の腹部超音波検査で偶然見つかることも少なくありません。この状態は「無症候性胆石」と呼ばれ、すぐに治療を必要としないこともあります。

しかし、石が胆嚢の出口や胆管に詰まると、**右上腹部からみぞおちにかけての強い痛み(胆石発作)**を引き起こします。痛みは背中や右肩に放散することもあり、吐き気や発熱を伴うこともあります。

 

胆石が引き起こす合併症とそのリスク

胆石が原因で発症する合併症には、以下のようなものがあります。

  • 急性胆嚢炎:胆嚢に炎症が起こる

  • 総胆管結石:胆管に石が移動し、胆汁の流れを遮断する

  • 胆管炎・黄疸:細菌感染や胆汁うっ滞が原因

  • 胆石性膵炎:膵臓に炎症が波及する

これらはいずれも命に関わる可能性があり、発熱・黄疸・激しい腹痛があれば緊急性の高い症状と判断されます。

 

胆石の診断と治療:見つかったらどうすればいい?

診断には腹部超音波検査が最も多く使われます。その他にも、CTやMRI、内視鏡的胆道造影(ERCP)などが症状に応じて行われます。

無症状の胆石であれば、経過観察で済むことが多いですが、症状が出た場合や合併症のリスクが高い場合には胆嚢摘出術(腹腔鏡手術)が検討されます。胆嚢がなくても生活には支障はなく、多くの方が手術後すぐに日常生活に復帰できます。

 

胆石を予防するための生活習慣とは?

胆石の予防には、以下のような生活習慣の見直しが効果的です。

  • 1日3食、規則正しく食事を摂る

  • 動物性脂肪の摂取を控え、食物繊維を意識的に取り入れる

  • 極端なダイエットを避け、無理のない減量を心がける

  • 適度な運動で胆嚢の機能を活発に保つ

  • 女性の場合、ホルモンバランスの変化に注意しながら体調を管理する

これらを習慣化することで、胆汁の流れがスムーズになり、石の形成を防ぎやすくなります。

 

まとめ:胆石は“できやすい人”に共通する原因がある

胆石は、誰にでも起こりうる身近な病気ですが、特に食生活・ホルモン・肥満・ストレスなどが原因として複雑に関与しています。無症状のまま放置してもよい場合もありますが、一度症状が出ると、強い痛みや命にかかわる合併症に発展することもあるため、正しい知識と予防がとても重要です。

健康診断で「胆石がある」と言われた方、あるいは右上腹部に違和感を感じたことがある方は、これを機に食生活や生活習慣を見直してみてください。小さな石でも、大きな健康の転機になるかもしれません。

 

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