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大腸カメラに鎮静剤は必要?メリットとデメリット

[2024.01.21]

大腸カメラはなぜ辛いの?~大腸カメラのイメージ~

大腸カメラのイメージは、

  • 下剤の内服が辛い
  • 痛い
  • 苦しい
  • 恥ずかしい
  • 時間がかかる

など多くのマイナスイメージがあるかもしれません。

しかし、実際の検査は本当にそのようなものなのでしょうか?

イメージ➀ 大腸カメラ前 下剤の内服が辛そう

大腸カメラの前処置として、腸管をきれいにするために下剤(腸管洗浄剤)の内服が必要です。確かに、美味しくない検査前食と、2-3Lもの下剤を飲むのは大変かもしれませんが、これは検査の正確性と安全性を確保するために行われています。

腸管洗浄剤にも種類があり、それぞれに合った下剤を選ぶ事で、負担は改善される可能性があります。

詳しくは  をご覧ください。

イメージ➁ 痛そう

大腸の形は個人差があり、千差万別です。容易に大腸の盲端(盲腸)に到達できる人もいれば、複雑な大腸の形で盲腸に到達するまで時間がかかったり、痛みを伴うこともあります。しかし、医師の技術と適切な鎮静剤の使用により、痛みは最小限に抑えられます。

イメージ③ 大腸カメラ検査は恥ずかしい

特に女性にとっては、医師とはいえ他人にお尻を見られるのは恥ずかしいと感じることがあります。当院では女性看護師が検査の案内を行い、お尻をしっかり隠すための穴あきパンツ(検査着)をご用意しているので、ご安心下さい。

イメージ④ 大腸カメラ検査で時間が一日かかるのが辛い

大腸カメラ検査では、下剤の内服に3-4時間を要し、そして午後に検査が行われます。確かに、ほぼ1日が検査に費やされますが、これにより正確な診断が可能となります。

大腸カメラのイメージ 本当にこれで合っているの?

これらのイメージが患者様にあり、大腸カメラ検査が遠ざけられてしまいがちです。しかし、実際の検査は上述した通りイメージと必ずしも一致しないことが多いです。例えば、下剤の種類を複数用意し、自分に合った下剤を選択できるようになっています。また、患者様の要望に応じて、午前や土曜日の大腸カメラ検査も行われています。

さらに、痛みや恥ずかしさについては、鎮静剤を使用することで大幅に軽減できますが、副作用などのデメリットもあります。この後は、大腸カメラにおける鎮静剤のメリットやデメリット、種類ややり方について詳しく説明していきます。

大腸カメラ検査ににおける鎮静剤のメリット・デメリット

鎮静剤は大腸カメラ検査で多くのメリットを提供しますが、一方でデメリットも存在します。意識が無くなるという怖いイメージをお持ちの方に対して、この項目ではそれぞれのメリットとデメリットを掘り下げていきます。

鎮静剤のメリット➀ 痛みの軽減

大腸カメラ検査のイメージで一番多いのは「痛そう」であり、鎮静剤の使用が一番のメリットと考えられています。痛みの軽減は鎮静剤の効果で可能になります。また、鎮静剤には抗不安作用があり、検査前の不安感も軽減されます。

鎮静剤のメリット➁ 恥ずかしさの軽減

特に女性にとって、大腸カメラ検査は恥ずかしいイメージがあります。当院では穴あき検査パンツを使用しており、そもそも思ったほど恥ずかしくありません。更に鎮静剤を使用することで、うとうとしている間に不安感が減り、恥ずかしさをさほど感じなくなります。

鎮静剤のメリット③ 観察の精度が上昇

大腸カメラで大腸内を観察する際、大腸の中に空気を入れて大腸の壁を膨らませ、襞と襞の間にある病変を探していきます。空気を入れることでお腹が張り苦しくなったり、そもそも疼痛の訴えがある状態でそれ以上空気を入れることがはばかられる事があります。鎮静剤を使用することで患者様はうとうとしていますので、空気をしっかりと入れ、見逃しの少ない検査を実施することができます。また医師も、患者様が辛さを感じないことでストレスなく検査に臨むことができ、より精度の高い検査に繋がります。

鎮静剤のデメリット➀ 時間がかかる

鎮静剤を使用した場合、検査後に15~30分程度の休憩が必要になります。これにより検査のトータル時間が長くなります。また、鎮静剤の使用量が増えるほど帰宅時間が長くなるため、適切な鎮静剤の使用が医師に求められます。

鎮静剤のデメリット➁ 副作用のリスクを伴う

鎮静剤は、大腸カメラ検査において痛みを軽減するのに非常に有効ですが、一方で副作用のリスクも十分に注意する必要があります。その副作用の一つに、過鎮静(深く眠りすぎてしまう)が挙げられます。過鎮静になると、舌根が沈下して呼吸ができなくなることがあり、血圧が低下して命に関わることもあります。このため、十分な知識を持った医師が、患者様一人一人の状態に合わせて、適切な種類の鎮静剤を適切な量で使用することが必要です。

鎮静剤のデメリット③ 帰宅後も鎮静剤の影響が残る

鎮静剤の使用後、30分ほどでだんだんと意識が戻りますが、帰宅後も鎮静剤の効果が残存することがあります。このため、帰宅後の自転車や車の運転は危険ですし、重要な仕事など、集中力をかける可能性があることはお勧めしていません。

鎮静剤の種類と特徴

内視鏡検査で使用される鎮静剤には、催眠鎮静薬のミダゾラム、静脈麻酔薬のプロポフォール、鎮痛薬のオピオイド性鎮痛薬(医療用麻薬)ペチジン塩酸塩などがあります。それぞれの鎮静剤には特徴と副作用がありますので、注意が必要です。

そもそも鎮静剤とは?全身麻酔との違い

全身麻酔は、患者さんの意識が完全に無くなり、呼びかけても起きない状態です。また、呼吸も止まってしまうため、人工呼吸器が必要となります。一方、胃カメラや大腸カメラの際に行う意識下鎮静法は、ウトウトと眠ったような状態になりますが、呼びかけには何となく応じられ、自力で呼吸できる程度の鎮静状態を指します。

麻酔薬の前提 ~理想の麻酔薬は?~

前提として、どのような麻酔薬を皆さんは望まれますか?

  • しっかりと眠れる薬
  • 検査が終わった後すぐに起きやすい薬
  • 副作用が少ない薬

基本的にはこの3つを高いレベルで達成できる薬がいい薬という事になると思います。

これらを完璧に備える薬は残念ながらありません。薬の種類によりメリットとデメリットがあります。(全てを満たす薬があるのであれば、他の薬は使用する訳もなく当然と言えば当然ですが……)

またどの薬剤を使用しても、深く眠れるよう薬剤の投与量を増やせば、深くは眠れるものの、検査後の覚醒が悪くなり、副作用の危険も上昇します。薬剤料を減らせば、検査後の覚醒は良くなり副作用のリスクは減るものの、肝心の麻酔効果が低下します。

なので、患者様一人一人の状態に併せて、適切な薬剤を適切な量使用する事が重要であり、ここも医師の腕の見せ所なのです。

ここからは、具体的な薬剤名を出し、特徴をご紹介させていただきます。

ミダゾラム

ミダゾラムは内視鏡検査の際に最もよく使われる鎮静剤であり、抗不安・鎮静・睡眠作用を併せ持っています。これにより検査中の不安やストレスを軽減する効果があり、患者様の快適な検査を可能にします。

ミダゾラムの作用機序

ミダゾラムは脳内のベンゾジアゼピン受容体に作用し、神経細胞の興奮を抑える働きがあります。鎮静作用だけでなく、不安を軽減する作用も併せ持つため、内視鏡麻酔以外にも、全身麻酔(手術室で行う麻酔)の導入および維持、集中治療における人工呼吸中の鎮静、歯科・口腔外科領域における手術および処置時の鎮静にも用いられる幅広い用途を持っています。

ミダゾラムの特徴

ミダゾラムの特徴は、早く効き、もし効きすぎた場合でもフルマゼニルという拮抗薬があり、その安全性が高い点です。そのため、内視鏡の鎮静剤として最も多く使用されています。また、健忘効果があり、胃カメラや大腸カメラの検査中に苦痛を感じたとしても、検査後には記憶がなくなることがあります。これにより、患者様の不安が軽減されるとともに、検査をスムーズに行うことができます。

一方で、フルマゼニルは値段の高い薬剤であり、鎮静剤の効果がよほど残存したり深く眠りすぎてしまったりした場合以外には、全例で使用する事はできません。またフルマゼニルを使用したとしても、フルマゼニルの効果は一時的であり、また徐々に鎮静効果が出てしまう恐れがあります。後述するプロポフォールに比べると、この点が懸念項目ではります。

ミダゾラムの副作用

ミダゾラムの主な副作用としては、しゃっくり、咳、不整脈、血圧低下、血圧上昇、頻脈、悪夢、めまい、頭痛、吐き気、嘔吐、体動、発汗などが報告されています。しかし、副作用の発生率は低く、適切な使用により安全に利用できます。

ミダゾラムの注意事項・禁忌

ミダゾラムは急性閉塞隅角緑内障の患者様には禁忌とされています。ただし、通常の緑内障ではほとんど支障ありません。また、飲酒量が多い方やアルコールに対して強い方は、ミダゾラムの効きにくいことがあります。

プロポフォール

プロポフォールは、本来内視鏡検査での麻酔には使用されていませんでしたが、最近ではその安全性や作用時間が短いことから、検査後に比較的速やかに帰宅できる薬剤として注目を集めています。

プロポフォールの作用機序

プロポフォールは広く中枢神経に抑制的に働くことで、GABAA受容体を賦活化(活性化)します。これにより、催眠、鎮静、抗不安(不安をやわらげる)効果が発揮されます。プロポフォールは安全かつ効果的な鎮静薬として知られており、多くの治療や診療に使用されています。

プロポフォールの特徴

プロポフォールには催眠作用、鎮静作用、抗不安作用がありますが、鎮痛効果はありません。覚醒の質が良く、吐き気や嘔吐の副作用が少ないため、患者様にとって快適な治療が可能です。プロポフォールは比較的速やかに薬効が切れるため、帰宅時間の軽減に繋がります。しかし、拮抗薬(鎮静を覚ます薬)が無いことから、副作用を生じた際のリスクが高く、使用には経験豊富な医師による全身のコントロールが必要とされています。

プロポフォールの副作用

プロポフォールの使用には副作用が伴うことがあります。血圧低下、舌根沈下による無呼吸、徐脈、気管支痙攣、横紋筋融解症などが挙げられます。これらの重篤な副作用が報告されているため、使用時には適切な対処と体制を整える必要があります。

プロポフォールの注意事項・禁忌

プロポフォールには卵に含まれるレシチンと呼ばれる油成分やダイズ油が使われています。そのため、「本薬または本薬の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」には禁忌と記載があり、つまり卵や大豆にアレルギーのある方には使用ができません。

しかし、実は卵や大豆アレルギーがあってもほとんどの場合副作用は出ないのですが……

ペチジンという薬について ~鎮静剤と共に使う麻薬系鎮痛薬~

ペチジンはオピオイド系鎮痛薬であり、医療用麻薬です。鎮静剤と併用することで、不安を和らげる鎮静作用と鎮痛作用が発揮され、より苦痛の少ない内視鏡検査が可能になります。過量投与には注意が必要で、呼吸抑制や意識障害、痙攣、血圧低下、重篤な眩暈、心拍数減少、神経過敏などの副作用が発生する可能性がありますが、実際の発生頻度は少なく、安全に使用できます。

当院での使用方法

当院では、院長が多くの内視鏡検査や内視鏡治療に携わってきました。特にESD(内視鏡でがんを切除する治療)やERCP(胆管・膵管の治療や胆管結石の除去を行う治療)では、検査時間が長くかかるため(長いと2時間程度)、鎮静剤の使用に精通する必要がありました。その経験から、ミダゾラム、プロポフォール、ペチジン塩酸塩の全ての薬剤の使用経験が豊富で、患者様それぞれの状態に応じて薬剤を使い分けています。

鎮静剤を使用する場合の手順

 

1
検査当日、検査前に腕に点滴の針を入れ、点滴を繋ぎます。この点滴のルートを使用して、鎮静剤を投与します。

 

2
ベッドで検査体制になりましたら、鎮静剤の投与を開始します。鎮静剤は年齢、性別、体重などを鑑みて、院長が使用薬剤、薬剤の投与量を決定します。

 

3
うとうとした状態で検査を終え、その後15-30分ほどの休憩時間を設けます。リカバリールーム(休憩室)へは看護師の介助のもとベッドのまま移動するので、転倒の心配はありません。

 

4
休憩時間が終わりましたら、看護師が患者様の状態を確認し、帰宅可能と判断されましたら点滴の針を抜き、お着換えをして頂きます。

 

5
検査後の説明は、お薬の影響であまり覚えていない方もいらっしゃいますので、説明は要点をしぼって間欠に行いし、ご帰宅を頂いております。

 

6
帰宅後も鎮静剤の影響が残りますので、車や自転車の運転は控えて頂きます。またお仕事が不能な訳ではありませんが、仕事で集中力を欠きミスのリスクが上がる事は十分にご承知おき下さい。

 

当院で使用している鎮静剤

当院では、ミダゾラムとペチジン塩酸塩を基本とし、効き方に応じてプロポフォールの併用を行っています。各患者さんに適切な投与量を決定するため、性別、年齢、体格、アルコール摂取量等を考慮します。鎮静剤の使用経験や副作用に関する情報は、適切な投与量を決定する際に参考になるため、お気軽に院長にお話しください。

当院で鎮静剤を使用した場合の検査後の注意事項

当院で鎮静剤を使用した場合の注意事項として、検査後に車や自転車の運転は控えるようにしてください。また、仕事に戻ることは問題ありませんが、重要な会議や集中力を要するタスクにはリスクが伴うことがあります。

結局のところ大腸カメラ検査で鎮静剤は必要なの? 院長の考え

鎮静剤の使用メリットとしては、検査中の眠りや不安の軽減、恥ずかしさの緩和が挙げられます。デメリットは副作用のリスクや検査後の待機時間が必要であること、帰宅後に車や自転車の運転ができないことです。内視鏡検査はそう頻繁に行われるものではありませんので、検査時間が多少延びたり、公共交通機関で帰宅することが重大な問題ではないと考えられます。副作用のリスクが最大の懸念事項ですが、例えば40歳から60歳までの健康な方においては、命に関わるような事態はほとんど起こりません。そのため、院長としては、自分が内視鏡検査を受けるのであれば鎮静剤を使用したいと考えます。

まとめ

鎮静剤の使用は患者さんの状況やニーズに合わせて選択されます。当院では、ミダゾラム、プロポフォール、ペチジン塩酸塩を使用し、各患者さんに合った麻酔管理を行っています。鎮静剤使用時は、血圧や酸素飽和度を定期的に測定し、安全に検査を進めます。院長の意見としては、大腸カメラ検査で鎮静剤の使用を推奨するという結論になります。最後に、検査のご予約やご相談はお気軽にお電話ください。

 

かわぐち内科・内視鏡クリニック

川口 佑輔

2010年北里大学医学部卒業

日本内科学会認定医 日本内科学会 (naika.or.jp)

日本消化器内視鏡学会専門医 日本消化器内視鏡学会 (jges.net)

日本肝臓病学会専門医 一般社団法人 日本肝臓学会 (jsh.or.jp)

医学博士 Failure Factors to Reach the Blind End Using a Short-Type Single Balloon Enteroscope for ERCP with Roux-en-Y Reconstruction: A Multicenter Retrospective Study

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