大腸がんは初期症状がない?気づくきっかけや検査・治療法について
日本では大腸がんと診断される人が増加傾向にあります。
年齢別に見ると罹患者数は30代から徐々に増えはじめ、50代で急増する傾向があります。初期症状がほとんどないことから発見が遅れやすいと言われていますが、早期に発見できれば高い確率で完治を目指すことが可能です。
「お腹の調子が悪い」「大腸がんが心配…」という方のため、本記事では大腸がんで多く見られる症状をまとめました。
大腸がん発見のきっかけや治療法も解説するので、お腹の不調が気になる方はぜひ最後までお読みください。
【監修者】
かわぐち内科・内視鏡クリニック
川口 佑輔
- 2010年北里大学医学部卒業
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- 日本肝臓病学会専門医
目次
- 初期の大腸がんは自覚症状がほとんどない
- 大腸がん発見のきっかけは「便潜血検査」と「大腸カメラ」
- 大腸がんが進行した時に見られる症状
- おならが臭いのは大腸がんのサイン?
- 大腸がんの原因
- 大腸がんの検査方法
- 大腸がんの治療
- 大腸がんかも?と思ったら医療機関へ相談を
初期の大腸がんは自覚症状がほとんどない
大腸がんは初期症状がほとんどありません。
症状を自覚する頃にはがんがある程度進行しているケースが多く、中には重症化するまで症状がなかったという方もいます。
早期治療で完治を目指せる病気ではあるものの、症状に気づきにくく発見が遅れやすい点が大腸がんの大きな特徴の一つです。
大腸がん発見のきっかけは「便潜血検査」と「大腸カメラ」
大腸がんの患者様が病気に気づくきっかけで多いのが、便潜血検査と大腸カメラです。
便潜血検査とは、便の中に血液が混じっているかどうかを調べるための検査です。「検便」と呼ばれることもあり、健康診断で経験したことがある方は多いかもしれません。
便潜血検査は肉眼で観察ができない微量の消化管出血をスクリーニングでき、主に大腸がんの簡易検査として用いられています。
便潜血検査の結果だけで大腸がんと診断することはできないため、陽性判定が出た場合は医療機関での精密検査(大腸カメラ)が必要です。
大腸カメラは肛門から内視鏡を挿入し、大腸の中を直接観察する検査方法です。大腸がん以外にも大腸ポリープや炎症性腸疾患、大腸憩室症などの病気を発見するのに役立ちます。
大腸がんの大半は大腸ポリープから移行したものであるため、大腸カメラでポリープを発見できれば大腸がんの予防にもつながります。
大腸がんが進行した時に見られる症状
大腸がんがある程度進行すると、以下の症状が見られることがあります。
- 便秘・下痢
- 便が細くなる
- 腹痛
- お腹の張り
- 血便
- 貧血
- 体重減少
それぞれの症状を詳しく解説します。
1.便秘・下痢
便秘や下痢などの便通異常は、大腸がんに多く見られる症状の一つです。
便通異常が生じるのはがんの進行によって腸管の内腔が狭くなり、便の通過を妨げてしまうためです。
便秘や下痢は下行結腸やS状結腸(結腸の左半分)にがんがある場合に見られることが多い傾向にあります。
以下は便の状態を表す「ブリストルスケール」と呼ばれる指標です。便の状態をチェックする際の参考にしてください。
理想的な便は4に該当し、3〜5も正常の範囲と判断します。1と2に近い状態であれば便秘、6と7に近ければ下痢と判断できます。
2.便が細くなる
便が細くなるのは大腸がんの代表的な症状の一つです。(便柱狭小化)
健康な成人の便は直径3〜4cmほどの太さがありますが、がんが大きくなり直腸の内腔が狭くなると直径1cmほどの細い便が出ることがあります。
食べたものや腸管の動きによって一時的に便が細くなることはあるものの、細い便が持続する場合は注意が必要です。
3.腹痛
下行結腸やS状結腸、直腸のがんは腹痛を伴うことがあります。
大腸がんにおける腹痛は大腸がんそのものが痛むわけではなく、大きくなった腫瘍が腸管の通りを妨げることで生じる痛みです。
腸管の動きによって痛みが出たり治ったりを繰り返し、痛みが持続することはほとんどありません。
4.お腹の張り
大腸がんが進行すると便やガス(おなら)が溜まり、お腹の張りを感じやすくなります。
お腹の張りはがんそのものが原因となっている場合もありますし、腸閉塞や腹水が原因である場合もあります。
5.血便
大腸がんの症状のうち、患者様自身で自覚しやすい症状が血便です。
便に血が混じっていたり、トイレットペーパーに血がついているのを見たりすると痔核を疑いますが、検査の結果大腸がんだったというケースは少なくありません。
大腸がんで血便が出るのは、がんの表面に便がこすれて出血してしまうのが原因です。
結腸がんの場合は便に血が混じりやすく、便の色が赤黒っぽいのが特徴です。肛門に近い部分で生じる直腸がんは高頻度で血便が見られます。
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6.貧血
大腸がんが進行すると、がんの表面の粘膜から出血が起こりやすくなります。
出血が続くと貧血が起こり、動悸や息切れ、立ちくらみなどの症状が現れることがあります。
健康診断で貧血を指摘され、検査を受けた結果大腸がんが発覚したというケースもあるほどです。
7.体重減少
大腸がんになると、普段と変わらない生活をしているのに体重が減ってしまうことがあります。
これはがん細胞がたんぱく質や脂肪を分解し、健康維持に必要な栄養を奪ってしまうのが主な原因です。
しっかり食事を摂っているにも関わらず大幅な体重減少が見られる場合は、一度医療機関に相談することをおすすめします。
おならが臭いのは大腸がんのサイン?
大腸がんになると、腸管の内腔が狭くなりお腹に便やガスが溜まりやすくなります。
便やガスが滞ると腸内細菌のバランスが乱れ、結果としておならが臭くなることがあります。
おならのニオイが必ずしも大腸がんと関係あるとは言えません。しかし、何らかの理由で腸内環境のバランスが乱れていることは事実なので、便の状態や腹痛、体重の変化など他に気になる症状がないか注意深く観察することが大切です。
なお、おならのニオイを左右するもっとも大きな要因は食習慣です。肉や魚などの動物性タンパク質や、ニンニクやネギなどの硫黄化合物を多く含む食品を摂取するとおならが臭くなる傾向にあります。
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大腸がんの原因
大腸がんの原因として考えられるものは次の通りです。
- 食生活
- 生活習慣
- 遺伝
- 高齢化など
大腸がんの罹患数が増加傾向にある理由の一つとして、食生活の欧米化が指摘されています。加工肉や赤肉、高脂肪・低繊維な食事の過剰摂取が大腸がんのリスクを増加させると言われています。
食生活以外では、喫煙や過度な飲酒、肥満などの生活習慣もリスク要因の一つです。また、家族の病歴と関わりがあることも明らかにされています。
大腸がんは日本でもっとも罹患率の高いがんです。年齢別に見ると50代で急増し、2022年には38,000人以上の方が大腸がんで命を落としています。
部位別に見ても死亡数の高い病気ではありますが、早期発見によって生存率が高まることも大腸がんの大きな特徴です。
本記事でご紹介した大腸がんの症状に心当たりがある方は、できるだけ早く医療機関にかかることをおすすめします。
大腸がんのリスク因子と予防法
当院では、麻酔薬を使った苦痛の少ない内視鏡検査を行っています。内視鏡専門医である院長が責任を持って担当し、大腸ポリープがあれば当日切除も可能です。
大腸がんの検査方法
大腸がんの検査では次の方法が行われます。
- 便潜血検査
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
- その他検査
それぞれの方法を詳しく解説します。
1.便潜血検査
便潜血検査は、便に血が混ざっているかどうかを調べるための検査です。
専用の検査キットを使い、1日もしくは2日分の便を採取して検査機関へ提出します。2日法の方が大腸がんの発見率が高いことから、2日法で検査するのが一般的です。
簡易的な検査であるため、陽性判定が出た場合は精密検査を受ける必要があります。40歳以上の方は年に1回の便潜血検査が推奨されています。
便潜血検査
2.大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
大腸内視鏡検査(通称「大腸カメラ」)は、内視鏡と呼ばれる細長い管状のカメラを肛門から挿入し、大腸全体を詳細に調べる検査です。
大腸カメラを行うには、まず腸管洗浄液という薬を飲んで腸の中をきれいにする必要があります。検査前日の夕食と当日の朝食を控える必要があり、検査中に気分が悪くなる人がいることから、大腸カメラはつらいものといったイメージを持つ方もいるかもしれません。
当院の大腸カメラは鎮静剤を使用して行うので、患者様の苦痛を大幅に軽減することが可能です。内視鏡専門医である院長が責任を持って担当し、大腸ポリープがあれば当日切除も可能です。
3.その他検査
大腸がんの検査ではCT検査やMRI検査、超音場(エコー)検査なども行われます。
CT検査とMRI検査はがんの進行状態を確認したり、他の部位に転移がないかを調べるのに適した検査です。検査の正確性を高めるため、造影剤を使用することがあります。
がんが進行した状態では、超音波検査でも大腸がんを指摘できる場合もあります。また、経過観察や治療効果を確認するには腫瘍マーカーも有効です。
CT検査やMRI検査、超音波検査などの画像検査の場合、がんやポリープがあることは分かっても組織を取ったりポリープを切除したりすることはできません。
そのため、画像診断でがんやポリープが疑われても最終的には大腸カメラで診断を行うことになります。
大腸がんの治療
大腸がんと診断された場合、進行度に応じた治療を行います。
早期がんの場合
治療法 | 特徴 |
---|---|
内視鏡的粘膜切除術 (EMR) |
がんの下に局注液を注入し、浮き上がった部分にスネアという輪状のワイヤーを引っかけて焼き切る方法。 |
内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD) |
がんの下に生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウムを注入し、浮き上がった部分を電気メスで剥がし取る方法。 |
外科的切除術 | がんやがん周辺のリンパ節を切除する方法。内視鏡での切除が難しい場合に行う。 |
進行がんの場合
治療法 | 特徴 |
---|---|
外科的切除術 | がんやがん周辺のリンパ節を切除する方法。化学療法を組み合わせることで予後が延長することが証明されている。 |
化学療法 (抗がん剤治療) |
手術が困難な場合に行う。腸閉塞が生じた場合は手術も検討する必要がある。 |
大腸がんの治療はステージに基づいて決定します。また、再発予防のために薬物療法や放射線治療が行われることもあります。
大腸がんかも?と思ったら医療機関へ相談を
大腸がんは目立った初期症状がなく、がんがある程度進行しなければ症状が現れないケースがほとんどです。
早期治療で完治が望めるものの、自覚症状がほとんどないことから発見が遅れやすい傾向にあります。年齢とともに罹患率が高くなるため、40歳以上の方は定期検査が推奨されています。
「お腹の不調が続いている」「大腸がんの症状に心当たりがある」という方は、早めに医療機関を受診しましょう。
当院では麻酔薬を使用した内視鏡検査を行っており、苦痛の少ない検査が可能です。検査を受けるべきか迷っている方は当院までお気軽にご相談ください。
【参考元】
- 日本消化器内視鏡学会「大腸にポリープがあると言われました。取らなくてもいいのでしょうか?」
- おなかの健康ドットコム「大腸ポリープ」
- がん情報サービス「便秘 もっと詳しく」
- 国立がん研究センター中央病院「大腸がんの症状について」
- オノオンコロジー「腹部膨満ふくぶぼうまん(感)への対策」l
- がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 予防・検診」
- がん情報サービス「がん種別統計情報 大腸」
- 日本医師会「大腸がんの原因」
- 日本消化器内視鏡学会「大腸内視鏡検査ってどんな検査ですか?」
- がん情報サービス「大腸がん検診について」
- がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 検査」
- がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療」