ふと思い出して
先日、医師会の先生方との懇親会があり参加しました。
仕事の話からプライベートの話まで様々お話させて頂きましたが、
その中で、いつもお世話になっている先生から患者様の心温まる話を聞いて、自分も思い出した事を書きます。
自分が大学で消化器内科医として働きだした頃、若くしてがん末期を患った患者様を担当しました。
お若い方でBaseはお元気な方でしたが、経過と共に症状が増悪し、痛みや腹部膨満で辛い入院生活が続きました。
私は毎日患者様のところに顔を出し、症状を聞いては痛み止めの調整をしたり、
時にはご家族の話を聞いたりしていました。
しかし徐々に体力は奪われ、命の終わりが近づいていました。
主治医の先生、そして私は、患者様が少しでも苦しくないよう、ぼーっとする薬を使いながら
その時が来るのを覚悟して待っていました。
まだコロナウイルス感染もありませんでしたから、ご家族もずっとご本人様に寄り添っていました。
そしていよいよ、血圧が下がり、ご本人様も最期を悟り最後の言葉をご家族に残している中、
私の名前を呼び
『先生、ありがとう。これからも頑張って立派な先生になってくださいね』
と言ってくれました。医師になって涙を流した数少ない出来事の一つでした。
それから数分後にお亡くなりになりました。
ふと今になって思い出し、今の自分が立派な先生であろうか?と問いました。
少なくとも、地道に一歩ずつ真面目に歩んできた と自負はしています。
それでも立派な先生になるために、まだまだ歩みを止めてはいけないと、改めて考えました。
昔の記憶ですが、日々生きていく中で忘れそうになっていく、でも忘れてはいけない
自分の消化器内科医としての原点のような事を、今後の決意表明も兼ねてブログにしました。
長々と記載しました。
最期まで読んでいただいた方、ありがとうございました。
かわぐち内科・内視鏡クリニック
川口 佑輔